(1)パレスチナのシンクタンクがヨルダン川西岸(パレスチナ自治政府)とガザ地区(ハマス)で9月に実施した世論調査で昨年10月のハマスによるイスラエル越境攻撃に対して、ガザ地区市民の57%が「間違っていた」と回答(報道)した。
6月の同調査では同じ57%が「正しかった」(同)と答えていたが、9月には初めて「間違っていた」が半数を超えた。
(2)事件当初はメディアもイスラエルに追い詰められたハマスの反抗の背景、正当性を理解する論調も見受けられたが、イスラエルのガザ地区地上侵攻、攻撃が1年を経過して全域に及びガザ地区市民にも変化がみられる。
イスラエルのネタニヤフ首相は国民の侵攻よりは人質解放を優先する意向、支持を無視して、ガザ地区地上侵攻を執拗に全域に拡大、継続してさらに隣国レバノンの対立するヒズボラ攻撃、そのヒズボラを支援するイランと戦闘を中東に拡大しているが、当初のハマスの越境攻撃に対してイスラエルの情報収集能力、ハマスへの反撃体制、領土、国民保全に問題があったとの指摘もあり、ネタニヤフ首相がこれらの失敗、批判の目をそらすためにハマス壊滅作戦としてガザ地区全域に地上侵攻を継続して、中東に戦線を拡大しているのではないかとも考えられる。
(3)それだから、米国もイスラエルの自衛権を容認して積極的にはイスラエルの中東戦線拡大に対しても直接的な関与をせずに言葉でイスラエルに自制、批判を強めているだけだと理解する。
中東から影響力を薄めている米国ではあるが、それだから中東に戦線が拡大することは避けたいはずで本気で米国がイスラエルに自制を求めればできないはずはなく、しかしネタニヤフ首相の「失敗」を隠したい、取り戻したい意向、意思を理解しての見て、見ぬふりの言葉だけの口先介入とみる。
(4)そこに来ての冒頭のようなガザ地区市民の57%がハマスの越境攻撃は「間違っていた」と回答して、イスラエルのハマス最高指導者の殺害攻撃を受けて米国ブリンケン国務長官が中東関係国を訪れて停戦に向けた協議をしているといわれる。
ガザ地区市民のハマス越境攻撃「間違い」反応、イスラエルのハマス最高指導者殺害と双方の一定の「成果」による停戦条件がそろっての米国の「本気」の停戦の機運、機会でもあり、米国大統領選投票にも影響を及ぼしそうな米国の「本気度」が試されている。