(1)またもや「自衛権」(the right of self-defense)が問題になっている。イスラエルは昨年突然ハマスの領域を超える越境攻撃を受け多数の犠牲者、人質を取られた。これに対してイスラエルは報復、人質奪還を目指してガザ地区に地上侵攻して、ハマス本部があるとして病院地下壕などを攻撃して各所にハマス幹部が潜んでいるとして病院、学校など社会インフラを無差別攻撃して、避難民、一般市民が巻き添えになりその後イスラエル軍はガザ地区北部から南部にまで全域に戦線を拡大して多数の犠牲者を出している。
(2)イスラエルがハマス本部があるとして攻撃した病院地下壕からは多数の武器がみつかったとするが、いまだにハマス本部を発見したとの情報はない。米国バイデン大統領はイスラエルの「自衛権」を容認して、イスラエルの反攻を支持しながら一般市民の犠牲者が増えると非人道的攻撃の自制を求め、反対を表明している。
(3)イスラエルのネタニヤフ首相は「ハマスを破壊するまで戦う」(報道)として「私たちの自衛の戦いを妨げることはない」と主張している。しかし「ハマス全面破壊」と「自衛の戦い」が両立するのか、ガザ地区全域まで地上侵攻して避難民、一般市民、子どもまで多数の犠牲者を出すことがイスラエルの「自衛権」なのかは重大な問題、危惧がある。
(4)冒頭、「またもや」と書いたが、日本でも安倍元首相は独自の憲法解釈として集団的自衛権の行使容認に踏み切り、米国など同盟国とともに自衛隊を海外紛争地域周辺に派遣する決定をしており、多くの憲法学者の違憲判断、国民の不安、反対を受けた。
日本国憲法第9条は戦力不保持、交戦権を有しないと規定しており、今では国連、国際法も「個別的自衛権」を容認していることから第9条も日本の個別的自衛権(他国から攻撃された時には反撃能力はある)の範囲内との解釈は広く国民の間でも理解、共有されている。
(5)しかし、他国から攻撃されることもない状況で同盟国と紛争地域に自衛隊を派遣する集団的自衛権の行使容認はあきらかな憲法解釈の逸脱であり、安倍元首相の「独自の憲法解釈」の論理に行き過ぎの違憲の問題はある。
(6)ただ今回のようにハマスの越境攻撃を受けて多数の犠牲者、人質を取られた中で、イスラエルの「自衛権」は存在する政治状況にあり、「どこまで」なら容認されるのか、「どこから」が行き過ぎなのかは国際的「基準」はなく、イスラエルのガザ地区地上侵攻は1年が経過して全域に及び、「自衛権」のもとに戦線はレバノン・ヒズボラ、イランに拡大している。