(1)米大統領選も決まりの11月第1週での投票直前となり、トランプ候補はインタビューで中国が台湾を封鎖(中国が台湾を囲む形で軍事演習)した場合には、中国製品にかける「関税を150~200%に引き上げる」(報道)と述べて、けん制した。
トランプ流の非現実的なシュールな脅しの話でトランプ前政権時代の米中経済貿易戦争をみれば、トランプ政権復活ということになれば中国に対し何をするかわからない一定の脅威になることは考えられる。
(2)バイデン政権よりは中国に対しては一定の抑止力はあると考えられる。しかし米国の抑止力が働くことはこれに黙っていない中国の対抗力で経済、貿易、台湾海峡の米中対立の緊張が高まることにもなり、日本にとっては安全保障上、否応なしに巻き込まれる危険性は大きい。そういう東アジア情勢を迎えるのか、米大統領選の決着はすぐそこだ。
(3)共和党トランプ候補が勝つにしろ、民主党ハリス候補が勝つにしろ問題はある。ハリス候補は最近のインタビューで副大統領として担当して成果をあげていない移民政策への質問で、「正面から答えずにちぐはぐな問答の印象」(報道)が指摘されている。
現在の大統領選は老令が指摘されたバイデン大統領に代わって急きょ候補となり、民主党の支持を結集して世論調査ではトランプ候補をわずかながら上回っているともいわれて接戦が続いている。
(4)バイデン大統領の辞退で選挙戦途中からの立候補で政策、理念で打ち出すものが伝わってこずにトランプ候補の個性ある主張にそつなく対応しているという安全運転の印象が強い分、自らの強い主張は伝わってはこない。
女性として米国大統領に就任するということになれば、米国史上初めてのことであり期待はあるのだろうが、トランプ候補が8年前に大統領選を戦ったヒラリー・クリントン(国務長官経験)候補のような実績、経験は感じられない。
(5)8年前の大統領選ではメディアは揃って政治経験、実績のあるヒラリー・クリントン候補優勢を報道しながら当時政治経験のないトランプ候補が勝利したのは、トランプ候補の既成政治批判集中を支持する経済恩恵を受けないマイノリティ層の固い岩盤支持があったこととはいえ、最後になって有権者の米国女性大統領誕生への社会アレルギー(social allergy)が作用したのではないかと考えている。
(6)米国社会は建国以来の人種(黒人)差別、銃社会の社会思想が根強く残り、影響力を示し続けており、女性が大統領になること(ガラスの天井問題)にも国民、社会に伝統的なアレルギーがあるといわれている。
米国女性初のハリス大統領誕生に対しても現在わずかながらでも優位に選挙戦を戦っていても、最後の最後になって米国のアレルギー、判断が働く可能性はあるとの懸念は考えられる。