(1)世界的原油価格の高騰を受けて4月にかけて一斉の物価値上げが続きインフレ懸念の中で、「よい値上げ」と「わるい値上げ」の論調が目につく。業績好調による経済成長での物価高が企業利益を後押ししてさらに賃上げ、経済成長に結びつく「よい値上げ」と原材料高騰による物価高が経済成長が見込めない中で企業利益を圧迫する「わるい値上げ」だ。
(2)日本はIMFの経済成長見通しで22年3.3%(世界全体4.4%)、23年1.8%(同3.8%)で経済成長の先行き見通しが暗い中での物価値上げは「わるい値上げ」といえる。日銀は直近の金融政策決定会合で4月に向けての値上げラッシュで「瞬間風速的に2%に近い水準まで上昇する可能性がある」(報道)と指摘する声があったといわれる。
(3)黒田日銀総裁が就任時から10年近くデフレ脱却のための物価上昇2%達成目標を掲げてきたが実現にほど遠く、今回委員から「瞬間風速的」に物価上昇2%達成が可能との意見があった。しかしこれでは黒田総裁が掲げる物価上昇2%目標達成にはあたらない。
黒田総裁が目標を掲げたのは安倍元首相の大企業、富裕層優遇の賃上げ景気拡大のアベノミクス時代であり、今は新しい資本主義、成長と分配の好循環を目指す岸田首相時代であり分厚い中間層を型づくる賃上げ分配を目指しており、物価上昇は目標ではない。
(4)岸田首相はガソリン高騰でも政府が異例の市場介入で元売りに補助金を出して価格安定に取り組んでいる。岸田首相が求める賃上げ3%もコロナ社会での企業間の業績格差がありどこまで浸透していくのか不透明要素で、コロナ社会での4月に向けての値上げラッシュでの「瞬間風速的に2%物価上昇」は国民生活を圧迫して政府と日銀の思惑は一致しない。
(5)政府の賃上げ3%要請も対応企業には法人税減税で支援するということになれば、ガソリン価格の補助金対策同様に国民投資(税負担)にとって分配利益効果があるといえるものではなく、政府の結果主義だけをみていては本質を見誤る。
物価値上げ、企業業績向上、経済成長、賃上げというサイクル図式になれば「よい値上げ」で言うことないが、オミクロン株第6波の爆発的感染拡大で緊急事態宣言も現実のものとなり経済社会活動に大きな足かせとなり、政府も日銀も手詰まり感だ。