(1)日銀審議委員が講演で2%物価安定目標達成に「『芽』がようやく見えてきた」(報道)と述べて大規模金融緩和策を粘り強く続ける必要性を強調した。黒田前日銀総裁が10年間一貫して2%物価上昇目標達成を掲げて一度も実現することができずに(どころか、その芽もなく)、退任間際になって世界的な石油価格の高騰に円安で軒並み物価高騰を招いて、今春の3%賃上げも3~4%の物価上昇の前に実質マイナス成長となって皮肉な結果を招いた。
(2)そういう状況の中で日銀審議委員の2%物価目標達成の「芽」が見えた発言は、何か古い時代の遺産を見る思いで聞いている。日銀の大規模金融緩和策は欧米との金利格差を生んで円安による物価高騰現象を生んで国民生活への影響も大きく、2%物価目標達成の芽が見えた発言は今さらまだ日銀は何を言っているのかの錯誤感、思いは強く、岸田政権も補助金、助成金、補正予算で物価抑制、安定を強いられており、日銀の大規模金融緩和策の見直し、出口論が課題となっている。
(3)日銀植田総裁は市場の反発を警戒して大規模金融緩和策を当面継続する方針を示しているが、円安による株高効果に影響が出て経済、市場が反発して一気に景気後退に陥ることを警戒しての大規模金融緩和策のハシゴ(出口論)を下せない事情もある。
(4)IMFの分析では世界経済で「完全に回復したのは主要国では米国だけだ」(報道)として世界の生産活動はコロナ前に比べ数兆ドル(数百兆円)減った状態が続いているとの認識を示した。
中国はデフレが進行して景気が後退しており、米国もIMFは回復と分析しているが高いインフレ解消は途上中とみるべきだ。こうした世界経済の中で日本が、日銀が大規模金融緩和策を見直すということになれば日本経済、景気に及ぼす影響は大きく、一方で大規模金融緩和策による欧米との金利格差による円安の物価高騰は持続されて副作用、後遺症は大きい。
(5)日本経済は株高効果の恩恵の大企業、富裕層、好調な主力の自動車輸出産業に海外からの大量訪日客効果に頼らざるを得ない状況だ。古い時代の遺産のようなものにいつまでもこだわる日銀の2%物価目標達成の話など、大規模物価高騰の前では場違いの違和感の思いが強い。