いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

推論と信条の公平公正論。 impartiality of reasoning and belief

2023-09-22 20:29:24 | 日記
 (1)もうかなり前になるが(記憶では新しい範囲内)、証拠に乏しい事件で裁判官が推論(reasoning)に推論を重ねて立証し有罪に導いた判決があった。それまでは疑わしきは無罪が法理念だったので、裁判も変わったという驚きの印象があった。
 容疑者の人権、不作為を擁護するために三審制(地裁、高裁、最高裁判断)があるので、証拠に乏しい推論に推論を重ねた判決にも控訴すれば見直しの機会は保障されている。

 (2)こちらはどうか。洋上風力汚職で逮捕された衆院議員が日本風力開発社長の意向を受けた国会質問をくり返して便宜をはかったとして、社長側から6100万円の賄賂を受け取ったとされる贈収賄事件で、同議員は「国会質問の内容は自分で考え、自身の政治的信条に基づいて質問した」(報道)として、これに社長側は賄賂を認めているが同議員は6100万円は社長との馬主関係に関わるカネの授受だったと洋上風力発電とは関わらないものだと主張している。

 (3)報道によると特捜部の捜査では社長側と議員はメールで連絡を取り合って、国会質問内容を確認し合っていた疑いがあり特捜部はメールの記録を入手して議員を追及(報道)している。
 こちらの方は社長側が賄賂を認め、国会質問内容のやり取りのメール記録もあり、議員には極めて不利な状況にあるが、「質問の内容は自分で考え、自身の政治的信条に基づいた」ものと言われればメールのやり取りと実際の国会質問との因果関係、どう結びついているのか、実際にそのとおりに実施されたのかなど立証されなければならない。

 (4)社長側が贈賄を認め、国会質問に関わるメールのやり取りがあったとしても、これだけで決定的な贈収賄の証拠ということにはならない。そもそも6100万円の金額の授受は認めていて、議員はそれは別の二人の間での要件(馬主関係)のものと主張しているので、6100万円の内容について相場、市場価格などを含めて金額の「適正化」について立証する必要がある。

 (5)こちらも推論に推論を重ねれば限りなく社長側の依頼を受けて議員が国会で有利な質問をくり返した見返りとして金額を授受したと判断できるが、議員の国会質問が「自分の考えで、自身の政治的信条」に基づいたものだという主張を議員のこれまでの関係発言内容から覆す必要もある。

 (6)やはり裁判は証拠主義で、推論の積み重ねという裁判官の「考え、信条」は排除することが「信条」だろう。

 

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