(1)経済同友会代表幹事でもある新浪剛史氏が日本の低い最低賃金を時給1500円に引き上げる政府政策について、「払えない企業は駄目だ。払わない経営者は失格だ」(報道)と持論を述べた。
今春闘でも賃上げを要請した当時の岸田首相に応えて、賃上げをしない企業には人材は集まらないと主張し大企業中心に5%超のこれまでにない大幅賃上げに向かい、中小企業、パートも後に続いて賃上げ効果を生んで、日銀も物価高と賃上げの好循環が続いているとして10年続く大規模金融緩和から利上げに踏み切る出口論に着手した。
(2)新浪発言が大幅賃上げをリードしたかどうかはわからないが、円安で企業の内部留保が6~7百兆円に増え続けて、企業経営者としても賃上げによる分配の自覚があっての賃上げをしない企業には人材は集まらない発言となったのではないのか。政府の意向を受けての大幅賃上げの道筋はつけた発言効果だった。
(3)そして今度は時給1500円を払えない企業は駄目で、経営者は失格発言だ。賃上げ再来を狙っての最低賃金の1500円引き上げ論でまさに政府のスポークスマン的経済学(economics like spokesman of the government)の役割、働きといえる。
新浪さんはかって経済セミナーで45才定年制を述べるなど日本の社会雇用制度を無視した発言で物議を醸(かも)し大胆な発想発言で知られる企業人で、同友会代表幹事となってさらに経済界をリードしようという発言が目につく。
(4)石破首相も多分企業の増え続ける内部留保をみての企業の増税引き上げ(法人税)の余地論を述べていたが、これに市場が敏感に反応して株価9千円急落を受けて慎重な姿勢に向かい石破カラーが見えないとの批判につながった。
企業経済では新浪さんの発言の方が市場に対して説得力があるといえるが、どっちみち政府の方針を進め、支えるもので、持ちつ持たれつの関係が見え隠れして必要なだけなのだろう。
(5)企業の利益は国民消費と投資であり、SBの孫正義会長は海外企業投資、買収で大損しては自らの自己資金(ポケットマネー)で補てんするという自己顕示、独断経営で浮き沈みが激しいが、今年のノーベル経済学賞は社会制度が国家の繁栄に影響するという実証理論であり、専制独裁国家中国の持続的成長には厳しい見方をしている。