(1)日本の「最低賃金」は世界的にはかなり低く、また都道府県別にそれぞれに異なるのは外国のエコノミストからは不思議に思われて国として同一にすべきだとの指摘もある。政府は岸田首相当時は30年半ばまでに最賃1500円達成を目標にしていたが、石破首相は前倒しで20年代での達成を表明している。
(2)経済同友会の新浪剛史代表幹事は「(最賃1500円を)払わない経営者は失格だ」として実現を求めた。新浪代表幹事は今春闘でも賃上げをしない企業には人は集まらない発言をして議論をリードしたかどうかはわからないが、大企業中心に5%超の高い賃上げが実現し、中小企業、パートにも賃上げ効果が波及した。
(3)新浪発言は企業人、経済人としての数字を重んじる根拠、データにもとづくという経済理論というより情緒的、観念的に経済社会の背景、ムードをつくりあげる趣旨のもので、政府のスポークスマン的経済学と書いた。
新浪氏の「払わない経営者は資格」発言に対して、早速経団連の十倉雅和会長が中小企業への影響を考えて「最低賃金は法律で守らなければ罰則がある。到底不可能だと混乱を招くだけだ」(報道)として「あまり乱暴な議論はすべきではない」と懸念を示した。
(4)改革とはできるからやるものではなく、できないことをやるのが改革、革命だ。日本経済は中小企業が90%以上を占めて中小企業が機能しなければ経済成長は困難で、大企業経営者組織の経団連十倉会長としても大企業の価格転嫁負担増につながる最賃1500円引き上げには慎重な姿勢をみせたものだ。
(5)中小企業の多い日本商工会議所小林健会頭は、急激に最賃が上がると廃業せざるを得ない中小企業が増えると予測する。賃上げ、最賃引き上げは必要で大事だが、日本の経済構造、産業構造、市場経済構造を比較検証しての国、社会で議論して考える必要がある。
(6)日本経済は都市と地方、地域ごとに経済構造、産業構造、市場経済構造に本質的な違いがあり、最賃一律引き上げもいいが経済基盤の整備も必要だ。