得票分析 議員ら連動し大差
A 事実上の与野党一騎打ちとなった2016、19年の過去2回と構図が変わり、票の行方が読みにくい戦いとなった。
B ふたを開けてみれば、39万票余りを獲得した小野田氏の圧勝だった。
初当選した16年の改選時、次点との得票差は10万票余りだったが、今回は2番目の黒田氏との差は18万票を超えた。
D 強固な党組織が小野田氏勝利の最大の原動力となったことは間違いないだろう。
笠岡、井原、総社市といった衆院岡山5区の市町は特に得票率が高かった。
5区は選挙区内の県議会議席を自民が独占する。国会議員と県議が効果的に連動したのだろう。
A 黒田氏は市長を4期16年務めた玉野市では小野田氏をしのいだ一方、
県北部などは差が大きく、知名度不足は否めなかった。
C 小野田氏の得票も43万票を超えた16年よりは4万票以上少なく、目標の40万票に届かなかった。
得票率(54・7%)もわずかながら前回(55・6%)を下回った。
E 必ずしも大勝とはいえない側面は確かにある。投票率は47・23%と過去2番目に低かった。
有権者の関心を引き寄せられなかった責任は各候補にあるだろう。
支持動向 公明の対応割れる
A 国政で自民と連立を組む公明党が自主投票とした一方、立民、国民は黒田氏を推薦し、共産は住寄氏を擁立する枠組みとなった。
各党支持層の動向はどうだったか。
D とりわけ特徴的だったのは公明支持層の動向だ。
出口調査によると、小野田氏は自民支持層の8割以上を固めた半面、公明支持層は約3割で、約6割は黒田氏に流れた。
公明の支持母体である創価学会が黒田氏の支援に回ったことが影響したのだろう。
B 小野田氏は選挙後の取材に、16年より得票数が減少した理由に公明支持層の目減りを挙げた。
一方で「政党は自分の足で立つことが何より重要」と、今後も公明と距離を置く考えを示唆した。
選挙中、今回のケースが尾を引かぬよう公明との関係維持に腐心する自民国会議員や県議の姿も目立った。
A 黒田氏は立民、国民の推薦を受けながら、立民支持層からの支持は7割弱にとどまり、
国民に至っては約4割と小野田氏も下回っていた。
C 保革双方からの支持を求め、軸足をはっきりさせない戦い方が有権者に中途半端と映ったのではないか。
支持層が複雑に入り組んだ戦いは、どちらの候補にもプラスとマイナスの影響がうかがえた。
政策論争 テーマかみ合わず
A 岸田文雄政権への評価が問われる選挙だった。
暮らしを直撃する物価高騰をはじめ争点は多岐にわたったが、各陣営の政策論争はどうだったか。
B 小野田氏は防災対策や地方創生といった関心度の高い施策を網羅しつつ、
賛否の分かれる憲法改正などを前面に出すことはなかった印象だ。
D 住寄氏は物価高騰対策の消費税減税と改憲反対に訴えを集中していた。
比例得票の上積みに向けて党公約の浸透を図る狙いだったのだろう。
C 市長経験のある黒田氏は公共交通の維持を軸にした地方目線の政策が目立った。
逆に国政課題に触れることは少なく、立民と国民の推薦を受け、両党で見解が異なるテーマは避けたのだろう。
A いずれにしても各候補が主張するテーマがかみ合わなかった感は否めず、具体策や財源も示されなかった。
議席を得た小野田氏には地元活動を通じて丁寧な説明を求めたい。