プロレスの面白さの一つに、必殺技の存在がある。これが楽しい。
馬場の十六文キックや、デストロイヤーの四の字固め、猪木の卍固め、ハンセンのウェスタン・ラリアットなどを、見よう見まねで真似して、よくプロレスごっこで遊んだものだ。
ただ、真似しようと思っても真似出来ない、唯一無二の必殺技もあった。その代表がアイアン・クロー(鉄の爪)だった。使い手は、フリッツ・フォン・エリック。60年代から70年代にかけて活躍したドイツ系アメリカ人だ。
ただ掴むだけ。巨大な手で掴むだけ。それだけで必殺技だった。掴むのは頭部か胃袋のあたり。それだけで、大柄なプロレスラーたちがのた打ち回り、ギブアップを叫んだ。真似する輩もいたが、迫力が全然違う。エリックのアイアン・クローは、握力だけで体重100キロを超す大男たちを、引き摺り倒し、苦悶させて、動きを止めてしまう威力があった。握力計では計測できなかった、その握力は推定130キロと言われた。後年体重160キロのブッチャーを、握力だけで引き摺っていた場面を見たことがあるが、桁外れの握力であったことは間違いない。
エリックというプロレスラーは、実に絵になる人だった。よくプロレスラーは、入場時に派手なガウンを着ていることが多い。しかし、エリックは黒いTシャツを着ているだけで、それを脱ぐと頑丈そうな身体が迫力満点だった。ボディビルなどで鍛えた体ではなく、鉱山などの肉体労働で鍛え上げた体だったと思う。また、その表情が怖かった。まるで恐竜、人間ジェラシック・パークですな。
実はエリックは、下手な反則などとは無縁のレスラーだったが、その浮「風貌と、鉄の爪という残虐なイメージの必殺技のせいで、悪役レスラーの扱いを受けていた。実際、レスリングやボクシングといった格闘技とは、あまり縁のない正統派とはいえない戦いぶりだった。しかし、強かった。全盛期の鉄人ルー・テーズさえ、エリックとは引分けが精一杯だった。
エリックが試合中、その巨大な手を相手に向けるだけで会場が沸いた。恐竜のような風貌で、じわじわと手をかざして相手を追い詰め、凶悪なまでの握力で相手の胃袋を掴み、ねじりあげギブアップを奪う戦いぶりは、迫力満点で、見ているだけで胃が痛くなるような気がしたものだった。
最近のプロレスは、飛んだり跳ねたりと、派手な戦いぶりが目立つ。多彩な技とスピーディーな試合展開も面白いが、やはり印象が軽い。フリッツ・フォン・エリックは、技も鉄の爪と蹴っぽるだけ。動きは重厚で、スピーディとは言いかねたが、それでも記憶に残るのはエリックの重々しさでした。
昔のほうが良かったとは言わないが、今のプロレスはあまりにスポーツライクな気がする。怪獣が暴れるような迫力があったエリックのプロレスが、妙に懐かしい。人気低落のプロレスだが、もう一度原点に帰って欲しい気がします。
馬場の十六文キックや、デストロイヤーの四の字固め、猪木の卍固め、ハンセンのウェスタン・ラリアットなどを、見よう見まねで真似して、よくプロレスごっこで遊んだものだ。
ただ、真似しようと思っても真似出来ない、唯一無二の必殺技もあった。その代表がアイアン・クロー(鉄の爪)だった。使い手は、フリッツ・フォン・エリック。60年代から70年代にかけて活躍したドイツ系アメリカ人だ。
ただ掴むだけ。巨大な手で掴むだけ。それだけで必殺技だった。掴むのは頭部か胃袋のあたり。それだけで、大柄なプロレスラーたちがのた打ち回り、ギブアップを叫んだ。真似する輩もいたが、迫力が全然違う。エリックのアイアン・クローは、握力だけで体重100キロを超す大男たちを、引き摺り倒し、苦悶させて、動きを止めてしまう威力があった。握力計では計測できなかった、その握力は推定130キロと言われた。後年体重160キロのブッチャーを、握力だけで引き摺っていた場面を見たことがあるが、桁外れの握力であったことは間違いない。
エリックというプロレスラーは、実に絵になる人だった。よくプロレスラーは、入場時に派手なガウンを着ていることが多い。しかし、エリックは黒いTシャツを着ているだけで、それを脱ぐと頑丈そうな身体が迫力満点だった。ボディビルなどで鍛えた体ではなく、鉱山などの肉体労働で鍛え上げた体だったと思う。また、その表情が怖かった。まるで恐竜、人間ジェラシック・パークですな。
実はエリックは、下手な反則などとは無縁のレスラーだったが、その浮「風貌と、鉄の爪という残虐なイメージの必殺技のせいで、悪役レスラーの扱いを受けていた。実際、レスリングやボクシングといった格闘技とは、あまり縁のない正統派とはいえない戦いぶりだった。しかし、強かった。全盛期の鉄人ルー・テーズさえ、エリックとは引分けが精一杯だった。
エリックが試合中、その巨大な手を相手に向けるだけで会場が沸いた。恐竜のような風貌で、じわじわと手をかざして相手を追い詰め、凶悪なまでの握力で相手の胃袋を掴み、ねじりあげギブアップを奪う戦いぶりは、迫力満点で、見ているだけで胃が痛くなるような気がしたものだった。
最近のプロレスは、飛んだり跳ねたりと、派手な戦いぶりが目立つ。多彩な技とスピーディーな試合展開も面白いが、やはり印象が軽い。フリッツ・フォン・エリックは、技も鉄の爪と蹴っぽるだけ。動きは重厚で、スピーディとは言いかねたが、それでも記憶に残るのはエリックの重々しさでした。
昔のほうが良かったとは言わないが、今のプロレスはあまりにスポーツライクな気がする。怪獣が暴れるような迫力があったエリックのプロレスが、妙に懐かしい。人気低落のプロレスだが、もう一度原点に帰って欲しい気がします。