ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「全てがFになる」 森 博嗣

2007-01-26 17:13:26 | 
頭がイイって、どんなものだろう?

私はそれほど頭がイイわけではない。そりゃ、比較的難しいといわれる税理士試験に合格しているのだから、まったく馬鹿ではなかろう。でも、あれは暗記力と反復練習に耐えうることが出来れば、わりと合格しやすい試験だ。頭がイイこととは、少し違うと思う。

博識も少し違うと思う。もちろん体系的に知識の理論付けが出来ていなければ、博識は成立しないが、それだけでは物足りないと思う。

私の考える頭の良さとは、智恵のあることだ。理解力の高さでもある。状況認識力であり、未知の状況への対応能力でもある。洞察力あるいは、推察力といってもいい。これが難しい。この面に関しては、私はすこぶる頭が悪い。

だからこそ、推理小説いわゆるミステリーに憧れるのだろうと思う。古くはホームズ、ブラウン神父、ポアロと様々な探偵の名推理による事件解決は、いつだって私をワクワクさせてくれた。

IT時代ならではの密室殺人事件を鮮やかに展開したのが、表題の森博嗣だと思う。これには参った。ネタばれになるので詳しくは書かないが、納得の密室殺人だった。作者は某大学の研究室の人間らしいが、理系の人独特の頭の良さを感じて、とても気持ちが良かった。

同時に頭の良い人間にしばしば見られる特異性も感じられ、そこに妙に共感している自分が嫌。作者は、おそらくは常識的な人だろうと思うが、多分心の底では、常識的な自分を演じていることに違和感を感じているのではないか。そんな憶測が容易に出来てしまう。

ところで、何で自分が嫌だと書いたかというと、他者の感情に対する鈍感さ、自身に対する頑迷さを、頭の良さを理由にしようとしている自分が嫌。本当は気が付いているのだが、それを認めるのが嫌なんだな、私は。嗚呼、自己嫌悪。本当に頭が良かったら、こんな愚かな悩みは抱えないだろうと思う。だからこそ、本当の頭の良さに憧れるのだろう。

まあ、実際は頭の良い人だって、それなりの悩みを抱えているのでしょうがね。

コメント (2)
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