ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

起業バカ 渡辺仁

2009-03-05 12:26:27 | 
カサンドラの王女は辛い。

トロイ戦争の敗北を予言したカサンドラの王女は、戦の前に不吉なことを言ったと父である王の激怒を買い、牢獄に押し込められた。

結果的に予言は正しかったが、正しいからと名誉が回復された訳ではなかった。正しいことを伝えるのは、時として不興を買う事が多いのは確かだと思う。

私の場合だと、起業の夢に燃える人の話を聞いている時にこそ、カサンドラの王女の悲哀が思い起こされてならない。仕事柄、起業を志す方の相談を受けることは珍しくない。しかし、内容を聞くと首を傾げることも少なくない。

物事には勢いが大切な場合も少なくないので、その勢いを削ぐようなことはしたくない。さりとて、最初から失敗が見て取れるような起業の夢追人を黙って見過ごすのも、倫理的に気がとがめる。

私とて神ではないので、成功の是非を予言できるわけでもない。その業界に疎い私が、適切な判断が出来ないことだってあるのだから、私の心配は無駄に終わることだってある。

それでも、話を聞くだけで、この人大丈夫か?と危ぶむことは珍しくない。よほど親しい間柄なら断固止めるが、そうでないなら黙って聞くだけに留めている。カサンドラの王女を気取るのは止めることにしている。

私だって、起業の夢を見ている人を応援したい気持ちはある。はなっから駄目だと断じるようなことはしたくない。私の心配を余所に、見事成功することを願う気持ちに偽りは無い。

それでも後ろめたい気持ちがないわけでもない。困ったことに、私の心配が当たるケースのほうが、実際には多いのだ。

さりとて、事前に絶対失敗するとの確信があったわけでもない。だから黙って見過ごしている。我が器量の及ぶところでないと思い、黙っているが、やはり忸怩たる気持ちは拭えない。

人は失敗することで、学べることがあるのは本当だと思う。失敗しなければ、痛い目に遇わなければ分らないことがあるのも確かだと思う。それでも、失敗せずに済むなら、それに越したことはない。

何人もの失敗者をみてきたが、多分これからも見なければならないのだとも覚悟している。

これから起業を志す方に一言、他人の失敗から学んで欲しい。そのためには表題の本を一読するのは良いと思う。

私の経験からして、起業が出来るのは十人に一人程度だと思う。死屍累々の起業の世界を生き抜くのは至難の業だと言わざる得ない。きつい言い方だが、今の仕事で成功していない人が、新しい仕事で成功することは、まずないと思う。
コメント (9)
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