ヌマンタの書斎

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確定申告雑感

2009-03-26 12:23:00 | 経済・金融・税制
私がこの業界に入り、確定申告の仕事をするようになって15年ほどたつ。

今回の申告ほど不動産売買の申告が少なかった年も珍しい。例年だと二桁の申告があるのだが、今年は一桁台に留まった。やはり昨年はまちがいなく不動産不況の年だったようだ。

もっとも株の売買による申告は、昨年以上に増えている。これは株の売却損が3年繰り越せる制度の適用を受けるためで、売却損益自体は赤字が多かった。とりわけ信用取引と、投信売買による損失が目立った。

しかし、今回の確定申告で私も含め事務所のスタッフ全員の実感は、なによりも医療費の多さだった。申告を依頼してくる顧客の大半が、大量の医療費の領収証を持ち込んできた。ようするに医療費控除の申告なのだが、その領収証の多さに閉口せざる得なかった。

実は医療費控除の対象となる医療費は、生計を一にする親族ならば誰でも可能だ。つまり一番所得の多い家族(税負担が一番大きい)に医療費控除の申告を集中することが一番節税につながる。

それゆえに家族全員の医療費領収証が集められ、こちらに送ってくる。丁寧に集計して送ってくる方もいれば、お菓子箱にどっちゃりほうりこんで送ってくる方もいる。

いずれにせよ、こちらで精査してから申告することになる。別に難しい仕事ではないが、その量の多さにめげた。かなりの時間を取られるのだが、そのわりに節税効果は薄い。ある意味、やりがいがない仕事だ。

それでも、少しでも節税に務めるのが仕事だ。所得税の節税効果は薄いが、後から賦課される住民税と合わせれば、やはりそれなりの節税効果は見込める。節税は小さなことからコツコツとが基本なのは、今も昔も変らない。

率直に言って、医療費控除は10万円(ただし所得の5%が10万以下なら、所得の5%)で足切りされるため、入院や歯の治療がないと、なかなか10万の大台は超えない。この10万が適切かどうか、本来もっと考証があってしかるべきだが、何故かあまり話題にならない。

ちなみに以前は5万円だったから、ある意味庶民狙いの増税策でもある。改正(改悪だと思うが)当時、2倍にすることはないだろうと憤慨した覚えがあるが、新聞やTVは呆れるほど素直にこの増税策を受け入れた。まったくもって、マスコミ様は、情報の横流しが仕事なようだ。もちろん、世論もほとんど反応しなかったと記憶している。

このあたりが、日本における納税者意識の低さの顕れだと思う。医療費控除の申告をする方は多いと思うが、その控除の中味を考えている余裕はないようだ。忙しい最中での、集計と不慣れな申告書記入に追われるが故だと思うが、還付された税金の数字を見ながら、改めて税法の非情さに思いを馳せて欲しいと思う。

医療費は国民が健やかに生きていくための必要経費なのだ。それが安易に10万円以下は打ち切りとされることに疑問を抱かないのは、私としては違和感を禁じ得ない。

年内には衆議院選挙があるはずなので、この医療費と税金の問題は是非とも意識して欲しいと思う。断言しますが、黙っていたら、税金はむしられる一方ですぜ。
コメント (1)
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