親しき者への愛情は、いとも容易に憎悪へと変りうる。
哀しいことに、深き愛情ほど根深き憎悪へと変貌しうる。
私がそのことを実感したのは、20代も半ばを過ぎてからであった。自分でも戸惑うほどの憎悪に心をかき乱された。誰よりも優しくしたい、大事にしたいと思っていた相手に、よもやこのような強烈な憎悪を抱くとは思いもしなかった。
幸いにして、互いに距離を取り、時間を隔てることで醜い争いを回避できた。互いに傷つけあうのを意識的に避けたからだと思うが、私自身は自らの変貌に驚き呆れたのが実感だった。
短気な私はわりと感情的になりやすいが、心の片隅で醒めているもう一人の自分が居るため、自らの激高ぶりに驚き、戸惑い、嫌悪すら感じた。
人の心は単純ではなく、割り切れるものでもない。科学が進んだ今日でさえ心の問題は、いまだ深き闇の底にある。薬剤や電気装置を用いての洗脳技術もあるが、それでも心を制することは出来ていない。
心が風邪を引いたと言われる鬱病でさえ、医学は対処療法で対応せざるえない。ましてや人格の深刻な分裂症状ともなれば、未だ解決の目途さえたってはいない。
近代科学以前の人類は、その心の病を物の怪や妖怪、霊のせいにして対応してきた。そうそうバカにしたものではない。ある意味、副作用の強い薬物を用いる現代の医療よりも優れた対処法かもしれない。
誰だってふとした瞬間に魔が差すこともあるし、穏やかな笑顔の向うに鬼のお面を隠していることだってあるのだろう。全てを理解するなんて、現世人類には出来やしない。出来ないこと、分らないことがあるからこそ、進歩にありがたみがある。
分らないこと、できない事に対応するには、お化けも妖怪も結構有効なのかもしれない。
表題の作は、昭和初期の光と闇が錯綜する都会の片隅で起きた失踪事件に挑む、盲目の探偵・朱雀シリーズの第一作だ。京極夏彦の香が漂うが、京極堂ほどくどくなく、読みやすいのが善し。ロジックにはいささか無理を感じるが、戦前の吉原の怪しい雰囲気が出ていて好印象。
和風のサイコ的ミステリーを気軽に楽しみたいのなら、京極堂よりはとっつきやすいと思います。機会がありましたらどうぞ。
哀しいことに、深き愛情ほど根深き憎悪へと変貌しうる。
私がそのことを実感したのは、20代も半ばを過ぎてからであった。自分でも戸惑うほどの憎悪に心をかき乱された。誰よりも優しくしたい、大事にしたいと思っていた相手に、よもやこのような強烈な憎悪を抱くとは思いもしなかった。
幸いにして、互いに距離を取り、時間を隔てることで醜い争いを回避できた。互いに傷つけあうのを意識的に避けたからだと思うが、私自身は自らの変貌に驚き呆れたのが実感だった。
短気な私はわりと感情的になりやすいが、心の片隅で醒めているもう一人の自分が居るため、自らの激高ぶりに驚き、戸惑い、嫌悪すら感じた。
人の心は単純ではなく、割り切れるものでもない。科学が進んだ今日でさえ心の問題は、いまだ深き闇の底にある。薬剤や電気装置を用いての洗脳技術もあるが、それでも心を制することは出来ていない。
心が風邪を引いたと言われる鬱病でさえ、医学は対処療法で対応せざるえない。ましてや人格の深刻な分裂症状ともなれば、未だ解決の目途さえたってはいない。
近代科学以前の人類は、その心の病を物の怪や妖怪、霊のせいにして対応してきた。そうそうバカにしたものではない。ある意味、副作用の強い薬物を用いる現代の医療よりも優れた対処法かもしれない。
誰だってふとした瞬間に魔が差すこともあるし、穏やかな笑顔の向うに鬼のお面を隠していることだってあるのだろう。全てを理解するなんて、現世人類には出来やしない。出来ないこと、分らないことがあるからこそ、進歩にありがたみがある。
分らないこと、できない事に対応するには、お化けも妖怪も結構有効なのかもしれない。
表題の作は、昭和初期の光と闇が錯綜する都会の片隅で起きた失踪事件に挑む、盲目の探偵・朱雀シリーズの第一作だ。京極夏彦の香が漂うが、京極堂ほどくどくなく、読みやすいのが善し。ロジックにはいささか無理を感じるが、戦前の吉原の怪しい雰囲気が出ていて好印象。
和風のサイコ的ミステリーを気軽に楽しみたいのなら、京極堂よりはとっつきやすいと思います。機会がありましたらどうぞ。