ヌマンタの書斎

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戦後 歴史の真実 前野徹

2009-10-15 12:14:00 | 
失敗をしでかしたのなら、真摯に反省をするのが当然だと思う。

まず、なにが起きたのかの事実認識を明確にして、その失敗が起きた前後の事情を把握する。その上で、何故そのような事態に陥ったのかを考察して、今後そのような失敗を繰り返さないよう教訓を得る。これが反省だと私は考える。

ところが「悪いことでした、スイマセン」と謝ることが反省だとして済ませる怠惰が横行している。私からすると、これは反省ではなく、誤魔化しに過ぎない。

更に言うなら、戦争は犯罪ではない。戦争をすることは政治的手段の一つであって、外交交渉や謀略の果ての実力行使が戦争であるに過ぎない。正しい戦争とは、政治目的を達成した場合の戦争であり、間違った戦争とは、その政治目的の達成に失敗した場合を指すに過ぎない。

正義の戦争とか、悪の戦争なんて定義は言葉遊びだ。戦争とは自らが正しいと思うもの同志の争いであり、どちらにも譲れぬ正義があるだけだ。

勝ったからこそ正しいのであって、正しいから勝つ訳ではない。むしろ後ろめたい側が、勝ったことにかこつけて、自らの外見を正義で化粧して誤魔化したいときにこそ、正義の冠は必要となる。

では、負けた側にとって戦争は悪を証明することになるのか。負けるような戦争をしたこと自体、愚かな失敗であり、結果的に間違っていたことを証明しているのは確かだと思う。しかし、負けた戦争をしたことが悪だと断じる必要はない。

もちろん、戦争という特殊な状況を利用して私利私欲を図るような行為は、戦争犯罪だと思う。しかし、負けたからといって戦争そのものを悪だと規定することは間違いだ。

むしろ必要なのは、何故負けるような戦争をしてしまったのか。戦争以外に方策はなかったのか。負けるにしても、上手な負け方はなかったのか。考えるべきことは数多ある。

その労苦を避けて、謝罪すれば反省だなどと誤魔化す姿勢こそ悪そのものだ。しっかり反省せねば、また同じ過ちを繰り返すことになる。

日本が朝鮮半島を侵略したのは、対ロシアのための防衛策であるし、満州へ侵略したのは国内の大不況からの脱出策であったはずだ。対ロシア防衛自体は、後にGHQの最高責任者であるマッカッサー将軍自体が、その必要を痛感して朝鮮戦争に参戦したことからも正しい政策だったと言える。

しかし、アメリカが市場参入を目指していたシナ大陸を、日本が独占としようと目論んだ大陸政策は、明らかに失敗だったと思う。いや、それ以前に国内の独占資本による寡占が閉塞感を産み、不況を長期化させていた弊害こそ改善すべきだった。少なくとも同時期、アメリカでは独占資本対策を実施していた。それを見習うことは出来たはずだ。

しかし当時の日本政府はやらなかった。政府を牛耳る薩長派閥と天皇華族制度が、独占資本の利権を手放すことを拒否した。それゆえ、シナ大陸への侵略により国内の不安をそらすことに活路を見出した。ここにこそ太平洋戦争の根幹がある。

つまるところ、憲法9条も謝罪も戦争の反省とはならない。

憲法9条や東京裁判は、日本という強敵に難儀したアメリカが、日本を骨抜きにして弱体化を図る方策に過ぎない。戦争の反省とは、程遠いものであることは明白だと思う。

ところが現実の日本は、憲法9条を崇め奉り、自らを卑下して謝罪することが平和への道であると誤魔化した。現実離れした戦争放棄と、被虐趣味としか思えない自虐的歴史観に染まった。

私の知る限り、マゾヒズム(被虐嗜好)はサディズム(加虐嗜好)とは表裏一体だ。サディストは簡単にマゾヒストに転換する。その逆も然り。自虐史観は戦争への反省とならず、むしろ戦争賛美への転向の土壌となりうる。

信じられないなら、終戦直後の日本国民の変心を思い出してみることだ。熱烈な天皇万歳は、いとも容易に民主主義万歳に転換した。それを奨めたアメリカが呆れるほどの変心だった。

表題の作品は、戦後の自虐的歴史観への反発から書かれたものだ。それだけに、私としては首肯できぬ部分も多く含まれる。

とりわけ、アメリカの軍事的保護下で戦争の腐肉を食い漁って栄養を蓄えて、その後の高度成長の肥やしにした事実を無視して、アメリカの占領政策(憲法や東京裁判史観)を否定するのは如何なものかと思う。

4割がたは否定したいが、6割は肯定してもいい。その程度の内容だが、吉田内閣とその後の吉田学校出身者たちを堂々批判している部分は読む価値があると思う。

極端(自虐平和)を否定すると、極端(日本賛美)に振れてしまうという一つの典型例だと私は感じました。日本人の美徳であった中庸という言葉を思い出して欲しいものです。
コメント (2)
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