欲望のためなら、愛も命の尊さも踏みにじれる。
富豪の娘であり世間知らずのお嬢様をたぶらかしたまではいいが、まさかに妊娠に動揺して、自らの未来を測りにかけて葬った。その際に、自殺にみせかけた手紙を書かせるテクニックには脱帽する。これって真似できるかも。
だが、その手紙を受け取った姉が、自殺に疑問を抱いた。策を練り、意気揚々と探偵の真似事をする姉が、男の足元に迫ってくる。はたして男追い詰めて、妹の仇を討つことは出来るのか。読者ならば、そう期待せずにはいられない。
そんな期待を裏切る見事などんでん返しと、更に続く悪魔の所業。だが天網恢恢疎にして漏らさず。
完璧に思えた策も、ほんの小さな穴から決壊する。
映画化もされたし、かつてはミステリーのベストテンをやれば、必ず上位にランクされた傑作。だが、近年忘れ去られた感があり、少し残念に思うと同時に、時代に合わなくなっていたのかと疑問にも思っていた。
だから、再読してみたのだが、やっぱりこれは傑作だ。時代は変われど名作として十分な価値があると断言できる。もし、未読の方がいらしたら一度は手にしてほしいです。映画は原作を大きく端折っているので、映画だけの方は小説も読んで欲しい。
ちなみに映画がなぜ原作を大きく端折ったのか、それは読んでみれば分かります。これは映像化不可能。シナリオを大きく変えざるを得なかったのでしょう。この謎を知るだけでも、読む価値あると思いますよ。