ヌマンタの書斎

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平成25年度税制改正による増減収見込みに思うこと

2013-04-12 12:01:00 | 経済・金融・税制

ちょっと面倒臭さいが、3月に財務省が発表した平成25年度の税制改正の際の資料の一つが以下の表である。流し読み程度に、眺めて欲しい。あるいは太字の部分だけでも結構です。

平成25年度税制改正の大綱(5/5)
(参考1)平成25年度の税制改正(内国税関係)による増減収見込額(単位:億円)
1.個人所得課税
(1) 所得税の最高税率の見直し                     590 

(2) 少額上場株式等に係る配当所得等の非課税措置の拡充※        ▲ 60

(3) 住宅税制
 住宅ローン減税の拡充                        ▲ 570
 認定長期優良住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除の拡充    ▲ 150
                                       小計 ▲ 720

(4) 社会保険診療報酬の所得計算の特例の見直し              10

      個人所得課税計  ▲ 180

2.資産課税
 (1) 相続税・贈与税
    相続税の基礎控除の見直し                  2,570

    相続税の税率構造の見直し                   210

    小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し▲ 130

    未成年者控除及び障害者控除の引上げ             ▲ 30

    贈与税の税率構造の緩和                   ▲ 10

    相続時精算課税制度の適用要件の見直し            ▲ 110

    事業承継税制の見直し                    ▲ 80

                                      小計 2,420

 (2) その他
    不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例の拡充 ▲ 200

    金銭又は有価証券の受取書に係る印紙税の免税点引上げ     ▲ 160

    電子申請による登記に係る登録免許税の特例の見直し       40

                                      小計 ▲ 320
      資産課税計 2,100

3.法人課税
 (1) 国内設備投資を促進するための税制措置の創設※         ▲ 1,050

(2) 企業による雇用・労働分配(給与等支給)を拡大するための税制措置の創設※
▲ 1,050
(3) 商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業等の支援税制の創設※
▲ 190
(4) 研究開発税制の拡充※ ▲ 580

(5) 環境関連投資促進税制の拡充※ ▲ 20

(6) 雇用促進税制の拡充※ ▲ 30

 (7)交際費等の損金不算入制度の見直し※              ▲ 350

(8) 保険会社等の異常危険準備金制度の特例積立率の見直し ▲ 20

(9) トン数標準税制の拡充 ▲ 30

   法人課税計 ▲ 3,320

4.納税環境整備
延滞税等の見直し ▲ 120

合計 ▲ 1,520

(備考)1.上場株式等に係る配当等の7%軽減税率の適用期限(平成25年12月31日)が到来した後の本則税率(15%)適用に伴う増収見込額(平年度)は1,710億円である。

2.住宅ローン減税の拡充による平年度減収見込額は、平成26年から平成29年までの居住分について改正後の制度を適用した場合の減収見込額の平均と、改正前の制度(平成25年中に居住の用に供する場合に適用される制度)を適用した場合の減収見込額との差額を計上している。

3.※は「日本経済再生に向けた緊急経済対策」に係る項目であり、減収見込額は、平年度▲3,330億円、初年度▲2,370億円である。


多少、端折ってはいるが、これが財務省が考える平成25年度の改正による税収見通しだそうだ。この表によると最終的には日本政府は 1520億円の減収となる。すなわち減税であるそうだ。

 嘘を書いている訳ではないけど、この見通しを真に受けてはいけません。まず、個人の税金すなわち所得税については、最高税率が上がる増税以外は概ね減税である。これはその通りだと思う。

また、2の資産税(相続税、贈与税)については、減税措置は盛り込んであるものの、むしろ増税である。これもその通りだと思う。

問題は、3の法人税なのだ。財務省の見通しだと 3320億円の減収すなわち減税だという。ここに問題がある。実は法人税の減税措置は、企業が設備投資や雇用拡大、研究開発の拡充などをした場合に適用されるもの。すなわち企業が設備投資を控え、雇用は現状維持、研究開発も現状維持ならば当然減税はなく、従前の税収が確保される。

一方、1の所得税の減税と、2の資産税の増税は強制適用。つまり、仮に企業がなにもしないと、2240億円の増収すなわち増税となる。これが平成25年税制改正の正体なのだ。

なお、財務省の作った表には記載されていないが、国民年金などの社会保険は当然、毎年増える一方なので、全体としてみれば今年も増税は続く。しかも円安による輸入価格の上昇による値上げは必然。

つまるところ、景気が良くなり企業が積極的に設備投資をし、雇用を拡大しないと国民生活は逼迫するばかり。これが財務省が打ち出した財政政策である。私にはこれが景気拡大のための改正とは思えない。

もちろん部分的には景気対策的な改正もある。あるけど、全体を俯瞰すれば、やはり景気対策ではなく国家歳入確保が第一の改正だと思いますね。まァ、財務省の仕事はまず第一に国家歳入の確保なんでしょうけどね。それだけに、如何に財務省主導の税制改正であったから良く分かる。アベノミックスなんて、小っちゃく言い訳みたいにあるだけです。。

余談ですが、新聞やTVはこのことを適切に報道しているのでしょうかね。どうも枝葉末節的な報道に終始している感が堪えませんが。要するに木を見て森を見ず、ですね。

それはさておき、かねてより懸念していた相続税の大衆課税が大きく推進したことは特記すべきでしょう。つまりこれまで相続は心配しても、相続税の納付を心配することはなかった人たちへの課税拡大です。

ただし、今回の相続税増税には飴と鞭の両方がある。これについては、又日を改めて書き記したいと思います。

コメント
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