ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

噛むんじゃねえよ

2013-04-26 12:41:00 | 日記
過ぎたるは及ばざるがごとし。

お肉が好きだ。もちろん魚だって好きだし、野菜も好き。でも、肉を噛みしめる時に口の中ではじける肉汁の美味さは格別だと思っている。これは他の食材では得られぬ快感だと思う。

日本人はとかく柔らかい肉を上質だと思い込んでいるようだが、私はそうは思わない。そりゃ、松阪牛に代表される霜降り肉の柔らかさを否定する気はない。あの口の中でとろけるような肉質は、日本独特の牛肉だと思う。

でも、あれは日本の畜産農家がこの一世紀あまりの短期間に改良に改良を重ねて築き上げた努力の味覚だ。美味いと認めつつ、あれは人工的な肉の美味さだと思っている。つまり肉本来の美味さとは少し違う。

やはり肉本来の美味さは、噛みしめた時に肉汁がほとばしるような硬さの肉ではないかと思う。これは単に生育方法だけではなく、解体した後の熟成により練りこまれた味でもある。

だから国産牛でも、欧米式に時間をかけてしっかりと熟成された肉だと、欧米のステーキハウスと同じような固いが美味しい味となる。ただ、あまり多くは出回っていないようで、欧米からの観光客が多く泊まる一流のホテルあたりでないと味わえない。

以前、紹介したプロレスラーご用達と云われたリベラというステーキハウスは、この欧米流の時間をかけて熟成させたステーキを食べさせてくれる珍しい店だ。なんでも店以外に熟成のための倉庫を持っていて、問屋から仕入れた肉を更にそこで熟成させてから店に出すそうだ。

そんな熟成された牛肉を堪能するには、しっかりと噛みしめる必要がある。箸で裂けるような柔らかい松坂牛と異なり、しっかりと噛みしめなければならないので、丈夫な歯が必要でもある。

面白いことに、柔らかい松坂牛の肉は、それほど沢山は食べられない。いや、美味しいので、いくらでも食べられそうな気になるが、けっこう腹にたまるので腹8分ぐらいで抑えてしまう。

ところが固めの欧米流の熟成された牛肉は、不思議なくらい胃にもたれない。だから高齢者でも一人一ャ塔h(約450グラム)食べれてしまう。多分、脂身の多い松阪牛は、脂身の甘さと柔らかさが特徴なので、その分消化に時間がかかる気がする。

私はどちらも好きだが、近年少しずつ脂身が辛くなってきた。美味しいのは間違いないのだが、胃にもたれる感が強まっているのだ。それでも、ステーキを頼む時は、赤身のひれではなく、ロースを頼むのは脂身の美味さを否定できないからだ。

でも、たまには固くても美味しい欧米流の熟成がされたステーキも食べたくなる。多分、年齢を重ねて高齢者の域に入れば、こちらの肉のほうが楽しめるはずだ。ただし、この固めの肉を楽しむには、健康な歯が必要となる。

だから私は年3回の歯科検診を欠かさない。美味しいお肉を楽しむには、入れ歯ではなく、自前の健康な歯が大事だからだ。

そう意識している私の歯だが、実は虫歯が多い。これは甘党で和菓子、洋菓子、フルーツと分け隔てなく大好きだからでもある。デザートを諦める気はさらさらないので、食後の歯磨きを徹底することを重視している。

70過ぎてもステーキを自前の歯で堪能する。これが私の目標なのだ。

もちろん歯が健康なのは当然だが、もう一つ大切なことがある。それは咬む力を維持することだ。柔らかいものばかり食べてはいけない。たまには固いものを噛みしめる必要がある。

そのため私の机の引き出しには、干し昆布や煮干しが常時置いてある。イカの乾物も良いのだが、これは匂うので事務所のスタッフから評判が悪い。「なんか、イカ臭いです」などと言われて赤面するのは嫌なので、これは諦めている。

でも歯の健康のためには必要なことだと考え、今も干し昆布を齧りながら、この原稿を書いている。おかげで私の歯は元気で、固い肉だって簡単に咬みちぎれる。自慢じゃないが、私の歯の切れ味はかなりいい。これまで噛み切れなかった肉はないと豪語できるほどだ。

ただ、過ぎたるは及ばざるがごとし。

多分、少し硬めでも美味しいステーキでも食べる夢でもみていたのだろう。夢のことは忘れているが、この痛み、舌から流れる血の味は忘れられない。

寝ながら、舌を自分で咬んで飛び起きた。舌の痛みもさることながら、錆びた鉄の味がする血の味にげんなりしながら、自分の間抜けさ加減に腹が立つ。鏡で舌をチェックすると、出血したところ以外にも傷跡が数か所ある。

寝ながら咬む練習なんて必要ない。いや、なんで自分の舌を咬んだのか、自分でも分からない。

そんなに卑しいのかな、私。寝ながら舌まで齧るとは、自分でもうんざりです。
コメント (4)
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