先日書いたとおり、平成25年度税制改正大綱で発表された資産税では、概ね増税となる。
一番、影響が大きいのが基礎控除の縮小だ。ご主人が亡くなり、奥様とお子様2人のケースを例に挙げる。
平成26年までは、基礎控除5千万円に法定相続人3名×1000万円=8000万円だ。これだけ手厚い非課税枠があると、相続あれども相続税が発生することは希だ。実際、相続税の申告率は、100件の相続があっても、4件程度しか申告は必要ない。
しかし、今回の改正で非課税の枠が大きく縮小された。財務省は100件に8件程度の申告を見込んでいる。
平成27年1月以降の相続では、基礎控除3000万円に法定相続人3名×600万円=4800万円が非課税枠となる。少し財産のある中流の少し上程度の家庭でも、相続税の申告納付が必要になると予想される。まさに増税策である。私はこれを相続税の大衆化と呼んでいる。
だが、鞭でひっぱたくばかりではない。今回の改正では飴も提供されている。しかも飴は三つ用意されている。まず、背景を説明しておきたい。
少子高齢化を迎えた日本では、資産とりわけ金融資産の世代間格差が問題になっている。大雑把にみて、個人の銀行預金の過半が高齢者で占められている。その一方、若い世代は低賃金化が進み貯蓄どころか日々の生活にもゆとりをもてずにいる。
そこで財務省が考えているのは、高齢者の世代から子供たちへの資産移転を、相続ではなく、生前に行えるようにすることだ。つまり、金を多く使うことが少ない高齢者から、家の購入、子供の学費など資金を大量に必要とする世代へ財産を移転(贈与)させることだ。
たとえば家を新築、購入する場合、4000万以上の物件だと、6割以上が親からの資金援助を受けている。親からの資金援助なくしては、家を買うことが出来ないのが実情なのだ。
ここで問題になるのが、親からの資金援助の中身である。親から借りたのならともかく、普通は無償の援助、すなわち贈与だ。日本の贈与税は世界で最も過酷な税率で悪名高い。仮に1000万円の贈与をすると、270万6千円という贈与税額を納めねばならない。
あまりの馬鹿らしい税金なので、非常に苦情、不満が多かったらしい。そこで考え出されたのが、数年前に創設された相続税精算課税制度だ。ところが、これが思ったほどには活用されていない。私も顧客に積極的に薦めることは希だ。
実をいうと、この制度は節税にはならない。生前の贈与を相続税にまとめてしまう制度なので、事前に財産の所有権を移すことによる相続争い防止にはなる。でも、生前の全ての贈与を相続税に取り込むため、資産家からは疑念を持たれている制度でもある。
そこで、もう少し簡便な特例が作られた。これは平成21年4月の経済危機対策に基づいて期間限定で実施された「直系尊属からの住宅取得資金の贈与の特例」という。既に終わってしまった制度だが、この特例が大変使いやすかった。
おそらくこの制度が下敷きになっていると思うのが、今回の「直系尊属から20歳以上の者が贈与を受けた場合の贈与税の見直し」ではないかと思う。簡単に云えば、世界一高いといわれる贈与税の税率についての緩和措置だ。
もっとも私からすると、この税率措置の緩和程度では住宅は買えない。従前の制度を残して欲しかったのが本音だが、毎年100万円づつ子や孫に贈与していた資産家には、この制度を活用するよう助言するつもりだ。
実は、今回の相続税増税という鞭に対する飴は、後二つほどある。
二つ目は、小規模宅地の減額制度における面積要件の緩和であり、これはこれでありがたい減税措置だ。他にも細かい改正はあるが、専門的に過ぎるので割愛します。
問題は、三つ目の飴なのだ。これは教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設なのだが、ありがたいような、ありがたくないような制度なので困る。少し細かく説明したいので次回(最後です)に書き記したいと思います。
一番、影響が大きいのが基礎控除の縮小だ。ご主人が亡くなり、奥様とお子様2人のケースを例に挙げる。
平成26年までは、基礎控除5千万円に法定相続人3名×1000万円=8000万円だ。これだけ手厚い非課税枠があると、相続あれども相続税が発生することは希だ。実際、相続税の申告率は、100件の相続があっても、4件程度しか申告は必要ない。
しかし、今回の改正で非課税の枠が大きく縮小された。財務省は100件に8件程度の申告を見込んでいる。
平成27年1月以降の相続では、基礎控除3000万円に法定相続人3名×600万円=4800万円が非課税枠となる。少し財産のある中流の少し上程度の家庭でも、相続税の申告納付が必要になると予想される。まさに増税策である。私はこれを相続税の大衆化と呼んでいる。
だが、鞭でひっぱたくばかりではない。今回の改正では飴も提供されている。しかも飴は三つ用意されている。まず、背景を説明しておきたい。
少子高齢化を迎えた日本では、資産とりわけ金融資産の世代間格差が問題になっている。大雑把にみて、個人の銀行預金の過半が高齢者で占められている。その一方、若い世代は低賃金化が進み貯蓄どころか日々の生活にもゆとりをもてずにいる。
そこで財務省が考えているのは、高齢者の世代から子供たちへの資産移転を、相続ではなく、生前に行えるようにすることだ。つまり、金を多く使うことが少ない高齢者から、家の購入、子供の学費など資金を大量に必要とする世代へ財産を移転(贈与)させることだ。
たとえば家を新築、購入する場合、4000万以上の物件だと、6割以上が親からの資金援助を受けている。親からの資金援助なくしては、家を買うことが出来ないのが実情なのだ。
ここで問題になるのが、親からの資金援助の中身である。親から借りたのならともかく、普通は無償の援助、すなわち贈与だ。日本の贈与税は世界で最も過酷な税率で悪名高い。仮に1000万円の贈与をすると、270万6千円という贈与税額を納めねばならない。
あまりの馬鹿らしい税金なので、非常に苦情、不満が多かったらしい。そこで考え出されたのが、数年前に創設された相続税精算課税制度だ。ところが、これが思ったほどには活用されていない。私も顧客に積極的に薦めることは希だ。
実をいうと、この制度は節税にはならない。生前の贈与を相続税にまとめてしまう制度なので、事前に財産の所有権を移すことによる相続争い防止にはなる。でも、生前の全ての贈与を相続税に取り込むため、資産家からは疑念を持たれている制度でもある。
そこで、もう少し簡便な特例が作られた。これは平成21年4月の経済危機対策に基づいて期間限定で実施された「直系尊属からの住宅取得資金の贈与の特例」という。既に終わってしまった制度だが、この特例が大変使いやすかった。
おそらくこの制度が下敷きになっていると思うのが、今回の「直系尊属から20歳以上の者が贈与を受けた場合の贈与税の見直し」ではないかと思う。簡単に云えば、世界一高いといわれる贈与税の税率についての緩和措置だ。
もっとも私からすると、この税率措置の緩和程度では住宅は買えない。従前の制度を残して欲しかったのが本音だが、毎年100万円づつ子や孫に贈与していた資産家には、この制度を活用するよう助言するつもりだ。
実は、今回の相続税増税という鞭に対する飴は、後二つほどある。
二つ目は、小規模宅地の減額制度における面積要件の緩和であり、これはこれでありがたい減税措置だ。他にも細かい改正はあるが、専門的に過ぎるので割愛します。
問題は、三つ目の飴なのだ。これは教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設なのだが、ありがたいような、ありがたくないような制度なので困る。少し細かく説明したいので次回(最後です)に書き記したいと思います。