私は先生に厳しい。
先生とは生徒の上位にあるべきで、敬意を受ける代わりに教師としての責務である勉学を生徒に与えるべきだと考えていた。これは小学生の頃から一貫して変わらない。
だから聞くに値しない教師の授業は当然のように手を抜いた。聴いているふりをして、空想の世界に逃げて授業は上の空であった。その代り聞くに値すると判じたならば、その先生が如何に厳しかろうと、断固として学んだ。
先生には威厳が必要だと信じていた。それゆえに生徒と「お友達」になりたがる先生が嫌いだった。軽蔑していたといっていい。教えることに自信がないから、生徒と同じ位置に立って、馴れ馴れしくしてくるのだと馬鹿にしていた。
ところで私は四コマ漫画が大好きだ。その原点は、やはり「いしいひさいち」にあるが、実はこの作品の作者である「ももせたまみ」もかなり好きだ。可愛らしい絵柄なのに、内容はちょっとエッチなのでエッチ四コマ漫画の祖だなんて呼ばれている。
でも断言しますが、如何にエッチなネタを四コマ漫画に描こうと、ももせたまみの漫画で欲情する読者はまずいない。絵柄が可愛らしいせいだけではなく、そのエッチな内容がひどく微笑ましいのだ。
それもニヤリと笑いを誘うというよりも、思わずホッとしてしまうような穏やかな笑いを誘う不思議な漫画であった。間違いなく女性の視点からのエッチなネタなのだが、辛辣さや冷静さは感じられず、普通に真面目に思春期を過ごし、そのまま普通に働いて、平凡に結婚して大人になった人だと分かる漫画であった。
率直に言ってかなり珍しいタイプの漫画家だと思う。実際にももせたまみは、四年制の大学を普通に卒業し、ゲーム会社に就職し、ゲームセンター勤務の経験さえあるOLさんであった。漫研育ちの若手漫画家が当たり前の漫画界にあって、本気で漫画家になろうとしたわけでもなく、ただ好きな漫画を描いているうちにプロの漫画家になってしまった変わり種である。
ただし、ただ者ではない。今でこそ珍しくないが、漫画雑誌への連載から単行本発刊では満足せず、ラジオ・ドラマからアニメCD、ネット上の展開、TVアニメと多方面にわたり企画を広げた所謂メディア・ミックスの先駆者のひとりでもある。
表題の漫画も、単に可愛らしい先生と生徒の物語を描いたものではない。登場人物に様々な特徴をもたせて、いろんな読者の需要を満たすように企画されている。これは作者自身がそのような展開を目指したと広言している。
実際、漫画に関してはあまり多趣味とは言いかねる私は、この漫画でBL(ボーイズラブ)とかコミケ、コスプレなどを知ったぐらいだ。それもさりげなく作中に取り入れられているので、当初は気が付かなかったほどだ。
当初雑誌「まんがライフ」に連載されていたが、ももせ自身が若手作家が育ちにくい四コマ漫画界を憂いて、敢えてスピンアウトする形で雑誌「まんがライフMOMO」を創刊。その看板漫画として連載を続ける一方、若手の登用に積極的に動き、衷走[を代表する四コマ漫画雑誌に育てる。
途中、産休や育児休暇を挟みながらも15年以上にわたり連載が続いたのだから大したものである。
ちなみにこの作品自体、当初は楽しみながらも私は懐疑的であった。童顔丸顔を生徒たちからからかわれている主人公に、どうも批判的にならざるを得なかったからだ。私はこんな先生、出逢ったことがない。生徒たちから、いじられキャラとして可愛がられている先生なんて、先生の資格がないと内心思っていた。
もっともお笑い四コマ漫画に、糞真面目に突っ込むのもどうかと思っていたから、内心ぶつくさ言いながらも楽しんで読んでいた。もっとも、主人公のみか先生、本を読み過ぎて二浪し、大学院まで行って本ばかり読んでいた超本おたく。本来なら読書家といいたいのだが、本の虫というより本おたくが相応しい。
この点だけには、大いに共感できるキャラではありました。最近、読書の時間を作るのに難儀している私としては、ちょっと羨ましいのは確かです。
連載は15年目を迎えた今年の春にめでたく終了。機会がありましたら是非楽しんでみてください。