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ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

戦争なんて ネコ爆弾

2013-06-14 12:00:00 | 社会・政治・一般

ネコはたしかに水を嫌う。

そう思ったからこそ、爆弾の中に猫を入れて、水面を避けさせて、船舶に辿り着くことを期待したのだろう。

事の起こりは太平洋戦争が勃発し、真珠湾でアメリカ戦艦が大破、マレー沖海戦でイギリスの戦艦、巡洋戦艦が沈没したことによる。いずれも航空機による攻撃で、戦艦が沈没するという従来の常識を覆す大事件であった。

このことに衝撃を受けたアメリカ軍は、急遽航空機による艦船攻撃を真剣に取り組まざるを得なくなった。現在でこそ、艦船は航空兵力に弱いは常識となっているが、当時としては歴史的大転換であった。

日本軍は真珠湾攻撃を計画していた段階から、既に航空機を中心とした攻撃を想定し、そのための兵装開発と訓練を繰り返していたが、アメリカ軍にその準備はなかった。だからこそ、やっきになって研究を進めた。

実際問題、航空機で艦船を攻撃することは容易ではない。攻撃は大きく分けて2種類。爆弾を投下しての攻撃か、魚雷を空中投下しての攻撃(雷撃という)となる。いずれも当時の航空機の能力では至難の業であった。

雷撃に関しては、まず魚雷を搭載できる性能を持つ航空機が必要であり、また空中投下に耐えられる魚雷の開発も問題となる。そして、なによりこの新たな戦術に対応したパイロットの訓練が大切となる。

ただし雷撃には、それ専用の機体が必要となる。日本軍は1937年に97式艦攻を開発し、その運用に成功したからこその大成果であった。一方、アメリカは真珠湾以降、急ピッチで開発したアベンジャー艦攻の開発に成功した。このあたりの開発力はさすがに世界一の工業大国である。

ただ、雷撃は水面ギリギリを飛行して、敵艦の対空砲火を掻い潜って魚雷投下をするため、その操縦は難易度が高く損傷率も高い。ミサイルが開発されてからは廃れた戦術である。

一方、爆弾を投下しての攻撃は、命中精度に難があった。なにせ艦船は航空機に比べれば低速だが、それでも移動する目標である。対空砲火を避けた高度からの爆撃では、まず命中しなかった。

だから対空砲火の危険を承知で、急速降下しての爆撃が主流となった。これには急激な運動に耐え得る頑丈な機体と、上昇のための大出力のエンジンが必要であり、なおかつ熟練度の高いパイロットが必要不可欠であった。

特攻攻撃などと兵士の命を消耗品としか考えぬ日本軍と異なり、アメリカ軍は兵士の消耗、とりわけ育成に費用と時間のかかるパイロットの損失を危惧した。だからこそ、安全な高度からの爆撃を欲した。

しかし、これはいくら高水準な測定器を用いても、動く目標である艦船に命中させることは難しかった。そこである技術者が思いついたのがネコであった。

ネコが水を嫌う性質を利用して、水面を避けて艦船に向かうことを期待して作られたのがネコを搭載した爆弾であった。冗談みたいな話だが、この爆弾は実際に製作されて実験を繰り返した。

私が観たのはCS放送のディスカバリーチャンネルの番組であった。猫の手足に紐をつけ、猫が水面を嫌がり、艦船に向かう動きを利用して爆弾に付けられた舵を操作させる映像には本当に仰天した。

しかし、結果的にはこのネコ爆弾は実戦投入はされなかった。たしかにネコは水を嫌がるが、決して金づちではない。実は泳げるので、必ずしも艦船に向かっての動きをしてくれなかったことも一因である。

でも最大の理由は、爆弾投下の衝撃でネコが気絶してしまうことが判明したからだった。おかげでネコ爆弾は使われることなく、多くのネコが戦死しないで済んだ訳だ。

実のところ、この手の抱腹絶唐ネ奇想天外兵器の話は少なくない。戦争というものが、如何に人の理性を狂わすかの一例にも思えるが、戦い生き残るための必死さの顕われでもある。他にもいろいろネタはあるので、気が向いたら書いてみます。

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