ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ある母親の物語 アンデルセン

2014-04-17 16:22:00 | 

忘れがたいが、既にその記憶が曖昧になっているのが哀しい。

子供の頃、よく見ていたTVアニメに、「アンデルセン物語」があった。妖精のキャンティが良いことをすると貰える魔法カードを集めるため、相棒のズッコと二人してアンデルセンの童話を紹介していく。そんなアニメであった。

親指姫を初めとして、幾つもの物語があったが、原作とは少し違ったストーリーが幾つかあった。その一つが表題の作品だ。wikiで調べたが、どのアニメ作品がこれに該当するのかは分からなかった。

もう40年以上昔のことであり、記憶は薄れがちである。でも、あの哀しさ、切なさ、悲痛さは忘れがたく記憶に刻まれている。

貧しいが誠実に生きるある母子のもとから、その子供が魔物に連れ去られてしまう。悲しみに暮れる母親は、子供を探す旅に出て、美しい髪を引き換えに情報を得て、その目すらも犠牲にして、遂に子供が死神の元にいることを突き止める。

厳しい風雪をついて、ようやく死神の元に辿りついたのに、盲目の哀しさで這いずる最中に思わず掴んだ小さな花の咲いた草が、実は姿を変えた子供であった。握りつぶしてしまった花が、子供の変わり果てた姿だと死神に教わり、泣き崩れる母親。

私は哀し過ぎて、その後どうなったのかはほとんど思い出せない。ただ、番組の最後でズッコが寂しげに「あの母子は天国で一緒になったんだよね」とキャンティに語りかけると、「そうよ、そうに決まっているわよ」と返事している場面だけが思い出せる。

その後、大人になってからようやく原作と思しき作品を読むことが出来た。おそらく、表題の短編がそうだと思う。私の記憶にあるアニメとは、少し最後が違うように思うが、これが原作だと思う。

アンデルセンの童話は、どうしようもなく哀しい結末が用意されていることが少なくない。この作品もその一つだと思うが、私にはTVアニメのエンディングよりも、原作のほうがしっくりときた。

21世紀を迎えた今日でさえ、子供の生存率は決して100%にならない。病気、事故、戦争、災害と様々な原因で幼い命が奪われていく。いつの時代も、幼いわが子の命が失われていく苦痛が母親を襲ってきた。

その苦しみに耐えるためにこそ、神の救いが必要だったのだろう。アンデルセンが作中において、死神を通じて示した子供の死への対処は、確かに悲しみに暮れる多くの母親へのワクチンとなってきたのではないか。

童話とは、親が子供に読み聞かせるものですが、案外と親にこそ読んで欲しかったのがアンデルセンの本音かもしれません。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする