ヌマンタの書斎

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労働力の輸入

2014-04-18 12:00:00 | 社会・政治・一般

日本が少子高齢化を迎え、人口の減少という未曾有の事態を迎えているのは確かだ。

だが、広く世界を見渡せば人口は急増中であり、その大半が貧困に喘いでいる。一方、電気や上下水道などの社会資本が整備された日本は、治安も良く、選ばなければ仕事にも溢れている。

その社会資本を整備運営する人材もいずれ不足するだろうし、増大する一方の高齢者の生計を支える年金の担い手である若い勤労者が減ることで、年金財源も危うくなってきている。

その危機感が、労働者の輸入20万人という数字となって発表されたのだろう。

誤解を恐れずに言ってしまうと、外国からの労働者の導入は確実に日本社会を不安定化させる。治安の悪化はもちろんだが、日本的慣習に対する抵抗も含めて、今までどおりではいられなくなるのは確実だと断言できる。

おそらく優秀な外国人労働者との競争に敗れて失業する人もでるだろう。経営者や上司が外国人となり、今までどおりの働き方、生き方さえ出来なくなる可能性もあるだろう。

だからこそ、外国人労働者の導入に反対する意見が必ず出る。それは必然といっていい。

だが、敢えて言おう。もはや反対している段階ではないと。もう既に労働現場では人材不足で困っている。建築現場がその典型だが、それは氷山の一角に過ぎない。日本の物流を支えるトラック運送業界だって、人手不足は深刻だ。スクラップ業界ともなれば、外国人抜きでの仕事はもはやあり得ないレベルにある。

サービス業界でも、目に見えない部分では、既に外国人労働力抜きでは回らないほどに日本人の労働力不足は深刻だ。人気のテーマパークでさえ、来園客の目に触れない部分の業務では、外国人労働者が当たり前のように働いている。

今さら外国人労働者の導入に反対しても手遅れだ。反対するのなら安易な導入にこそ反対すべきなのだ。間違いなく異なる生活習慣を持つ外国人を隣人として迎えた場合、些細な誤解や、重大な事実誤認など様々な原因でトラブルが生じる。

トラブルが生じることを前提に、その対応策を講じた上で、なおかつ想定以上のトラブルが生じることを前提として外国人労働者を迎え入れねばならない。実例が知りたければ、日系ブラジル人を多数受け入れた群馬県の太田市や大泉町、あるいは静岡県の磐田市の行政の対応を見学してみるといい。

うちの事務所は太田市界隈に顧問先が数件ある関係で、毎月訪問し、その実情や裏話などを見聞きしている。町ぐるみで外国人労働者とその家族を迎え入れた結果の苦労や、トラブルの多さは間違いのない事実である。

だが恐れてはならない。関東でも群馬県は関東の製造業の一大拠点である。大手の下請け、孫請け、その更に下の末端の零細事業者が数多ある地域である。その群馬県の中で、一番活気のある町が太田市である。県庁所在地である前橋や新幹線の駅のある高崎市も、けっこうな規模がある地方都市ではある。

しかし、人の動き、金の流れなど目に見える活気があるのは、間違いなく太田市だ。ここは、他のどの地方都市と比べても外国人労働者が多い。不況の時には安易に首を切られることもあるが、受注が急増して人手不足になれば頼りになるのが外国人労働者だ。

単純労働だけではない。群馬は日本一の自動車保有率を誇る地域だが、廃車になった車の処理業者は、驚くほど外国人事業者が多い。彼らは自動車を解体し、その部品を海外に輸出する。海外では日本の中古車が大人気であり、その修理のための部品の需要は非常に多い。

彼らの事務所に行くと、インターネットで海外(多くの場合故国だ)で部品の注文を受け、廃車の山から目当ての部品を見つけ出して、たちまちのうちに輸出手続きを始める。なければ、同業者に片言の日本語で連絡して、素早く必要な部品を見つけ出す。

パキスタン人やベトナム人に加えてロシア人までいるが、面白いのは彼らの会話が共通語として日本語で行われていることだ。現金取引が主流だが、もちろん円が共通通貨である。日本国内だとドルは使わないようだ。

おそらくいずれは人材派遣業にも彼ら、外国人がマネージャーとして活躍することになると予測している。都内では既に外国人が設立し、活動している法人も存在している。多くの場合、配偶者のどちらか一方が日本人であるようだが、社員の多くは外国人である。

実は私の事務所のあるテナントビルにも、このような会社がある。昼時になると、褐色の肌の男性たちがゾロゾロと出てくるので、すぐに分かる。どうもコンピューターソフト開発会社らしいのだが、詳しくは知らない。

もはや外国人は単純労働だけでなく、様々な産業分野に入り込んで活躍する。私の予測では、そう遠くない将来は、公的な部門でも外国人労働力が必要とされると思う。なぜなら日本人の労働人口は減る一方であり、社会システムを動かす部門でも当然に人手不足となるのは目に見えているからだ。

当然に様々なトラブルは頻発する。だからこそ安易に外国人労働力を呼び込むことは、かえってトラブルを増やす。彼ら外国人に敷金礼金なんて風習はないし、ゴミ出しの区別の習慣もない。

だが、私が太田で見聞きする限り、ある程度は理解しあえる。ただ、民間人同士だけでは限界がある。だからこそ、それをサポートする行政の役割は重要だ。今のところ、地方自治体が自主的に行っているだけであり、やはり最終的には国政においても、ガイドラインが必要となるはずだ。

これは既に現実に問題となっている。たとえば外国人労働者も日本で働く以上、立派な納税者だが、彼らが扶養する故国の家族の扱いなどは、明文化されていないのが実情だ。実はある要件を満たせば日本の扶養家族としての扱いも可能なのだが、そのやり方は未だ一般化されていない。

私はたまたま、そのやり方を知ることが出来たが、一般には周知されているとは言い難い。税務は公平でなければならないことを考えると、これは問題だと思う。街の税理士に過ぎない私でさえ、既に外国人労働者の問題に突き当たっているのだから、相当な広がりがあると憶測できる。

繰り返しますが、もはや反対すれば良いという段階は過ぎています。トラブルが生じることを前提にした現実的な政治的対応が求められている時代だと認識すべきだと思います。

コメント (2)
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