世界的イラストレーターの生頼範義氏がお亡くなりになった。
映画「スターウォーズ」「ゴジラ」「グーニーズ」のチラシなど多数の作品が有名だ。またゲームソフトのパッケージのイラストも多く、光栄の「信長の野望」「三国志」などの勇壮なイラストをご記憶の方も少なくないと思う。
されど、私の記憶に最初に残るイラストは、早川SF文庫に収録されていた平井和正のウルフガイ・シリーズに他ならない。あの狼男たちの物語はハードボイルドSFとでも云ってイイほどのワイルドで、ヴァイオレンスなものであった。
それを見事に描き出したのが、若き日の生頼氏の挿絵であった。迫力ある絵であった。どんな過酷な状況下であっても、逞しく生きる力強さを感じさせる画風であった。
多分、私が初めて買った画集が、生頼氏のイラスト集であったはずだ。画壇における彼の評価が如何なるものであるか、私はまったく知らない。しかし、暴力的とでも評したくなる彼の画風が、お上品な日本のお偉いさんたちに受けがいいはずないだろうと想像している。
でも、そんなことは関係ない。世界中の多くの人が彼のイラストに惹きつけられたのは事実だ。彼の名前は知らなくても、そのイラストを見たことがある人は多いと思う。
その画風は暴力的な威圧感を感じるほどに、生命の強さの拍動が伝わってくる。激しく、鮮烈で、苛烈なまでに見る者の目を惹きつけて止まない。その迫力は、国境を越えて評価されて、映画会社の目に留まり、映画のちらしのイラストが世界に衝撃を与えた。
私が散々悪態をついている早川書房だが、70年代の多くの文庫本に生頼氏のイラスト、表紙画を採用している。しかし、現在ではそれらの文庫本は廃版、あるいはイラストを変更、はたまた廃止している有様である。
もし古本屋などで、生頼氏の挿絵が入った文庫本をみつけたら是非手に取って欲しい。貴重品ですよ。