ヌマンタの書斎

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郵貯株式の上場

2015-11-09 15:52:00 | 経済・金融・税制

今日、書く記事は少し気が重い。

私は預言者でもなければ、予言者でもない。前者は神の言葉を預り、人々に伝える者であり、モーゼ、イエス、マホメットが有名だ。一方、後者は未来を予知して告げる人である。ノストラダムスを始めとして多々いるが、私が信じていないので、どうでもいい。

私は、ただ過去の事実から将来を推測するだけだ。推測に過ぎないし、私にとっては知的遊びに等しい。だから、その遊びで人の気持ちを傷つけるのは気が重い。

新聞紙面を見ると、日本郵政の民営化に伴い、東証一部への上場総額17兆円とある。うちの事務所のクライアントにも購入してしまった方はいるかもしれない。そう思うと、ますます気が重くなる。

思い出して欲しい。旧国鉄がどうなったかを。分割され民営化されたJRの株価が、今どうなっているのかを。率直に云って、旧国鉄の民営化を失敗とは云わないが、株式上場は失敗だったと思っている。

この場合、政府及び財務省の見解は違うことは分かっている。政府にしてみれば、国有財産を民間市場に売りに出して、巨額の資金を獲得したのだから、当然に成功である。

しかし、JRの株式を購入した国民はどうなる。株価が良かったのは、最初の2年程度に過ぎなかったはずだ。長期的視点でみれば、倒産の可能性こそ少ないが、初期投資資金がすべて回収できる見込みは、限りなく低い。

私は鉄道を決して過小評価はしていない。21世紀における石油資源の枯渇問題を思えば、エネルギー効率のいい鉄道輸送の将来価値は低くない。ただし、国内で化石燃料を十分供給できない日本は、高コストに悩むだろうとも予測できる。

太陽光エネルギーや、風力発電などの自然回帰エネルギーは安定性に欠く上に、総量が絶対的に不足している。日本近海にあるメタンハイグレードは、有効な資源だが、海底にあるがゆえの高コストが重しになる。さりとて、石炭に戻ることも難しい。

ましてや、人口が長期的に逓減傾向にある日本で、鉄道の輸送量自体が減少するのも必然である。JR株式について、私はまったく楽観的にはなれずにいる。

そして、今回の郵貯と簡保の上場である。多大な初期投資が必要とされた鉄道事業と異なり、郵便事業自体は、国の独占業務だからこそ価値があった。簡保は国の事業だからこそ、信頼された。

果たして民営化し、民間企業との競争に巻き込まれた郵貯、簡保に明るい未来はあるのだろうか。

まったく可能性がないとは云わない。郵便局は100年以上の歴史を持つ。たとえコンビニがなくても、郵便局は必ずある。それは過疎地に行けば分かる。この郵便局に対する日本国民の信用の高さは、決して侮れない。

しかし、民間企業以上の優秀な経営力があるとは、到底思えない。大組織だけに、官僚的な手堅さはあるとは思う。しかし、変化する市場に対応できる柔軟さがあるとは到底思えない。

それなのに、あの株価である。郵貯の背後には、日本政府の後ろ盾があると信じての株価であろうと思うし、もしかしたら、銀行を初めてとした機関投資家が日本政府へのお義理で、高値を承知で買い取ったかもしれない。

だが、間違いなく今回、購入した株主の中には、低利率の預金にうんざりした高齢者等が、日本政府の後ろ盾を信じて買ってしまったケースが、かなりあると思われる。

今後、一年くらいは、ある程度の高値が維持されると思う。そこで売り抜けられればいいが、数年後には確実に下落すると私は予測している。っつうか、上昇する株式とは思えないからだ。

もちろん、私の予測が外れる可能性だってある。それは否定しない。でもねぇ・・・私には優秀な企業とは思えないのです。買ってしまった方には申し訳ないが、私はどうしても否定的にならざるを得ません。

コメント
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