今月の三連休は、家にこもっていた。
その直前、金曜日の夜は帰宅が遅かったのだが、あの晩は冷えた。あまりの寒さと、溜まっていた疲労のせいか夜半から頭痛がして、翌朝には頭が重く感じられた。
発熱はたいしたことがなかったので、インフルエンザでないことは分かった。多分、風邪であったと思う。時期が時期だけに、ここは慎重を期して徹底的に静養に努めることにした。それゆえに家にこもっていた次第である。
ただそれほど激しく体調を崩した訳でもないので、けっこう暇であった。暇にまかせて、CS放送のヒストリーチャンネルを見ていたら、武田信玄のドラマを放送していた。
そのドラマのなかで、武田の騎馬軍団が勇壮に描かれていたが、私はいささか疑問に思っている。戦国時代の馬は、現在の馬に比べてかなり小型で、甲冑を着た武者が騎乗すると、人が歩くよりも少し速い程度の速度しか出せない。
ただ、人間よりは持久力があるので、騎馬兵が弱い訳ではない。実際、武田の騎馬軍団は、戦場において活躍したのも史実ではある。ただ、数はそれほど多くない。要所、要所に投入された遊撃隊であったのが実態ではないだろうか。
数が多くないのは、馬が人間の8倍、糧食を食べるからだ。もちろん水も大量に飲む。多数の馬を維持するのは、経済的負担が非常に大きい。武田は、日ごろ木曽馬を農耕馬として各農家に置いて於けたので、ある程度の数を維持できた。
でも、多数の馬を戦場で駆使するのは、兵站面で非常に負担が大きかった。このあたりの事情が、大陸で活躍した遊牧民族率いる騎馬軍団との根本的な違いである。
もう一点、大きな違いがある。日本に於ける騎馬兵は、主に槍や長刀などを駆使して戦場を駆け抜けた。しかし、モンゴルやウィグルなどの遊牧民族の騎馬兵はまるで違う。
遊牧民族の騎馬兵の武器は弓である。扱い易い軽装備であり、長距離射程の弓で、高速移動が可能な機動力を活かした戦法で、大陸を駆け抜けて、恐れられた。
重い鎧をまとい、槍や長刀などで戦う日本やシナ、西欧の騎士とはまるで違うのが、遊牧民族の騎馬軍団であった。この軽装備の遊牧民族の弓兵こそが、騎馬軍団の本来の戦い方であろう。
なお、日本の馬は小柄なので騎馬戦闘に不向きとの説もあるが、これは誤解である。現在、我々がよく目にする大型の馬は、サラブレッド種である。この大型馬は短距離を高速で走ることに特化した改良馬である。
なので、武具をまとった兵士を乗せて長距離を疾駆するような真似は出来ない。実際、チンギスハン率いる騎馬軍団の馬も、ナポレオン率いる騎馬たちも、原産のアラブ種で、日本の木曽馬と体格はあまり変わりはない。ただ駆使する戦法が違った。
TVの歴史ドラマが史実に忠実である必要は薄く、面白ければ良いので、これ以上ケチを付けるのは止める。まァ、確かに大柄なサラブレッド種で重い鎧をまとった武士のほうが映像的に映えるのは確かですから。