中学生の頃まで、私の読書の大半は学校の図書室で借りたものであった。
当時、私が住んでいた三軒茶屋には図書館がなかった。電車で世田谷区役所に行けば、その中に図書館はあったが、狭くてあまり揃えが良くなかった。公民館の図書室は雑誌ばかりだし、念願の図書館が下馬に出来たのは、私がその街を転居する一年前であった。
だから図書室に置いてない本は、小遣いを貯めて古本屋を巡って買うか、教会で知り合った大学生の人たちから借りるしかなかった。その学生さんたちは、教会のメンバーであると同時に、毛語録の読書会のメンバーでもあったので、どうしても左派系の本が多かった。
ただ、おかしなことに左派系の本は学校の図書室にもけっこう置かれていた。おかげで私はロシア文学に傾倒し、日本のプロレタリア文学も耽読する左派少年に育った。
しかし、ひねくれた子供だった私はこれで満足することはなかった。中一の頃から古本屋巡りをするようになり、3冊100円のワゴンセールの単行本を読みだした。そこで私はSFの世界を知った。
そのなかでも、ウルフガイ・シリーズの平井和正の後書きから大藪春彦やミッキー・スピレーンを知った。ハードボイルド小説のなかでも、格段に暴力寄りの作家である。大人が薦める良書に辟易していた私は、初めて酒を飲んで酔っぱらう快感を知った酔漢のように、ヴァイオレンス・ハードボイルドに酔い痴れた。
この熱狂は2年ほど続いたが、次第に醒めてきて歴史小説やSFに戻っていった。でも、大藪春彦の作品は、大学生の頃までコツコツと読み続けた。反社会性の強い大藪春彦のもとには、読者からのタレこみ情報が集まっていると噂があった。
その情報は主に政治家や高級官僚たちの不正に関わるものが多かったと聞く。大藪春彦はそれをネタに主人公が悪徳政治家や偽善エリート官僚を暴力で打倒す小説を数多く書いている。
おそらくだが、そのタレこみ情報の発信者は、政治家の部下や一般官僚が混じっていると思われる。だからこそ迫真性があったし、それゆえに政治家やエリート官僚から嫌われた。
でも、大藪春彦の小説は永田町や霞が関界隈でよく売れていたのは隠せぬ事実だ。特に官庁の購買部では売れ筋商品であったらしい。ただ大藪は、反社会性は強かったわりに、野党や労働組合からも評判は悪い。
理由は簡単で、彼ら左派の大衆受けを狙った偽善的姿勢もまた大藪の攻撃対象であったからだ。必然的に日本ペン倶楽部からも嫌われ、文芸協会からも唾棄されていた。
しかし大藪は気にしていなかった。彼の本を買う多数の読者がいる限り、彼は無敵の人であった。孤高の人でもあった。実際、彼の追随者は皆無だった。でも、実は西村寿行を始め幾人かの仲間はいたようだ。
大藪作品に合共通する暴力による問題解決の手法は、望ましいものでも、好ましいものでもない。しかし、多くの人の潜在的欲望を満たしていたのは確かだと思う。
かつて、どこの書店にいっても大藪春彦は専用のコーナーを設けられていたが、今では存在そのものがなくなっている。私はそのことを訝っていたのだが、どうやら電子書籍で売られているらしい。
これまで未読の大藪本は、古本屋巡りで探し出していたが、どうやらそろそろ私も電子書籍デビューしたほうが良さそうである。
ところで表題の作品は松田優作が主演しての映画化がなされた人気作だ。このテーマ曲、元ペドロ&カプリシャスの前田曜子が歌っていたことに今頃気が付いた。はて?私はなんで気が付かなかったのだろう。けっこう好きな歌手だったはずなのですがね。
当時、私が住んでいた三軒茶屋には図書館がなかった。電車で世田谷区役所に行けば、その中に図書館はあったが、狭くてあまり揃えが良くなかった。公民館の図書室は雑誌ばかりだし、念願の図書館が下馬に出来たのは、私がその街を転居する一年前であった。
だから図書室に置いてない本は、小遣いを貯めて古本屋を巡って買うか、教会で知り合った大学生の人たちから借りるしかなかった。その学生さんたちは、教会のメンバーであると同時に、毛語録の読書会のメンバーでもあったので、どうしても左派系の本が多かった。
ただ、おかしなことに左派系の本は学校の図書室にもけっこう置かれていた。おかげで私はロシア文学に傾倒し、日本のプロレタリア文学も耽読する左派少年に育った。
しかし、ひねくれた子供だった私はこれで満足することはなかった。中一の頃から古本屋巡りをするようになり、3冊100円のワゴンセールの単行本を読みだした。そこで私はSFの世界を知った。
そのなかでも、ウルフガイ・シリーズの平井和正の後書きから大藪春彦やミッキー・スピレーンを知った。ハードボイルド小説のなかでも、格段に暴力寄りの作家である。大人が薦める良書に辟易していた私は、初めて酒を飲んで酔っぱらう快感を知った酔漢のように、ヴァイオレンス・ハードボイルドに酔い痴れた。
この熱狂は2年ほど続いたが、次第に醒めてきて歴史小説やSFに戻っていった。でも、大藪春彦の作品は、大学生の頃までコツコツと読み続けた。反社会性の強い大藪春彦のもとには、読者からのタレこみ情報が集まっていると噂があった。
その情報は主に政治家や高級官僚たちの不正に関わるものが多かったと聞く。大藪春彦はそれをネタに主人公が悪徳政治家や偽善エリート官僚を暴力で打倒す小説を数多く書いている。
おそらくだが、そのタレこみ情報の発信者は、政治家の部下や一般官僚が混じっていると思われる。だからこそ迫真性があったし、それゆえに政治家やエリート官僚から嫌われた。
でも、大藪春彦の小説は永田町や霞が関界隈でよく売れていたのは隠せぬ事実だ。特に官庁の購買部では売れ筋商品であったらしい。ただ大藪は、反社会性は強かったわりに、野党や労働組合からも評判は悪い。
理由は簡単で、彼ら左派の大衆受けを狙った偽善的姿勢もまた大藪の攻撃対象であったからだ。必然的に日本ペン倶楽部からも嫌われ、文芸協会からも唾棄されていた。
しかし大藪は気にしていなかった。彼の本を買う多数の読者がいる限り、彼は無敵の人であった。孤高の人でもあった。実際、彼の追随者は皆無だった。でも、実は西村寿行を始め幾人かの仲間はいたようだ。
大藪作品に合共通する暴力による問題解決の手法は、望ましいものでも、好ましいものでもない。しかし、多くの人の潜在的欲望を満たしていたのは確かだと思う。
かつて、どこの書店にいっても大藪春彦は専用のコーナーを設けられていたが、今では存在そのものがなくなっている。私はそのことを訝っていたのだが、どうやら電子書籍で売られているらしい。
これまで未読の大藪本は、古本屋巡りで探し出していたが、どうやらそろそろ私も電子書籍デビューしたほうが良さそうである。
ところで表題の作品は松田優作が主演しての映画化がなされた人気作だ。このテーマ曲、元ペドロ&カプリシャスの前田曜子が歌っていたことに今頃気が付いた。はて?私はなんで気が付かなかったのだろう。けっこう好きな歌手だったはずなのですがね。