ヌマンタの書斎

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広大地 その1

2006-04-27 09:48:45 | 経済・金融・税制
広くて大きい土地。一般にはあまり馴染みのない言葉だと思います。土地の評価という奴は、けっこう難しく、経験を重ねるたびに新しく学ぶことがある。

さて、ここで問題。一坪20万円の土地(40坪)の時価は800万円です。ではその隣の土地が400坪あったとしたら、その時価はいくらでしょう?

単純に考えれば、20万円×400坪で8000万円なのですが、残念ながらこの値段では,売買はまず成立しないでしょう。400坪(1,320㎡)は一軒の宅地の規模としては大きすぎるのです。6~7区画くらいに分けないと、宅地としては売れません。え?10区画ではないか?って思われる方は多いと思います。

土地の形状にもよりますが、10区画に分けてしまうと道路が作れません。そう、ある程度の広さのある土地は、道路や公園といった公共施設を設けないと、宅地開発許可が下りないのです。

こんな手間のかかる土地は不動産業者以外に買い手はつきません。不動産業者は、この広い土地を売るために、道路建設、ガス水道電気、広告等様々な手間をかけます。ですから、この土地は単純計算では8000万円ですが、通常はその5~6鰍ッ程度の値段でしか売買されないのが通例です。

このような未開発の宅地を広大地と呼びます。比較的最近登場した専門用語です。いや、広大地自体は、以前から存在していたはずですが、そのことが税務の世界に広まったのが最近なのです。

私が相続税及び財産評価の勉強をしたのは平成4年です。当時は「広大地」という言葉自体存在しなかった。少なくとも財産評価通達には記載されていなかった。では税務行政の世界ではどうしていたのかというと、資産税に詳しい税理士や、勉強熱心な税務職員は通常の宅地評価をした上で、2~3割程度減額して評価していたようです。(・・・なんて大雑把な!)

どうも問題意識はあったようですが、具体的方策が練られることはなかったようです。ところが地価税の創設が、こんな曖昧な評価を許さないことになった。地価税の納税義務者の多くは大企業です。
彼らは多くの広大地を有していましたし、今までのいい加減な評価で納得するはずもない。国を相手取っての長期の訴訟さえ辞さない構えをみせていたので、国税庁はおおあわてで財産評価通達の改正を手当てしました。これが平成6年だったようです。当時は面大地という呼称もあったと記憶しています。

私は当時所長から、「コウダイチ」について調べて来いと言われ、「中華料理屋ですか?」と間抜けな返事をしたくらい、知られていない概念でした。私ども税理士の世界では、土地の評価に関する仕事は「資産税実務」といいますが、広大地に関しては、ほとんど知られていなかったのが実情のようです。

このことが、後々問題を引き起こすことになりますが、次回お話します。広大地の評価方法は、その後平成16、17と立て続けに改正されました。以前より実態に近い評価額となりましたが、まだ改善すべき点は残っているようです。いやはや、土地の評価は難しい。
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