弁護士大国と云われるアメリカのいて税務訴訟は、弁護士の稼ぎ所である。
アメリカには日本のような税理士制度はない。エンロールドエージェント(EA)はあるが、訴訟が出来ないし、独占資格でもないため、米国公認会計士へのステップアップの位置づけだ。
一方、日本において税務訴訟は弁護士の鬼門とされるほどに行政府側有利である。なにせ裁判官も弁護士も税法を本格的に勉強していない。実際の税務訴訟では、国税庁から派遣された税務訴訟専門家が裁判官の脇に座り、裁判官はもっぱらこの人の意見ばかり窺っていた。
私の師匠のS先生は、ある税務調査でも揉めた時、顧客がどうしても納得せず、やむなく税務訴訟で高裁までいった事案に関わったことがある。S先生の予想どおり原告敗訴に終わり、国税速報にS事務所の名前と共にその敗訴の詳細が報じられてしまった。
私もこの訴訟記録を読ませてもらったが(もの凄い量だった)、裁判官も弁護士も税法及び会計に疎いと云わざるを得ない結果であった。守秘義務があるので詳細は書けないが、敗訴の原因の一つは弁護士が減価償却における法人税法と所得税法の違いを理解していなかったことだと私は考えています。
税務訴訟における納税者側の不利については、税理士会でもしばしば話題に上がっていましたが、当時税法に通じている弁護士は数名しかいなかったのが実情でした。いずれも親が税理士で、実際に税理士事務所での勤務経験があったがゆえに、税務訴訟に強かったのだと思います。
でも、それで納税者勝訴の判決の出る割合は5%程度です。民事や刑事と比べてもあまりに国家側が有利すぎます。ここに目を付けたのが、当時日米の貿易問題に関わっていたアメリカでした。
WTO/GATTの勧告によりアメリカの弁護士が日本の法曹界に入り込むようになると、徐々にですが税務訴訟の数も増え、納税者側勝訴の判決も増えてきたのです。
もちろん某H裁判官による努力もありますが、この方の名前を出すのは控えます。かなりやっかまれたと聞いているので、迷惑をかけたくないからです。
話を戻すと、現在は大手の会計法人などが税務訴訟専門の税理士を育成したりして、だいぶ状況は変わってきました。これに過敏に反応したのが財務省及び国税局です。
従来の現場での税理士と税務職員の話し合い重視路線に限界を感じ、やたらと税法及び施行規則、通達などを詳細に明文化して訴訟に耐えうる仕組みを構築しようとしたようです。
ただ現時点では、この詳細化路線は却って現場を混乱させているのが実情でしょう。全てを否定する気はないのですが、まだまだ現場知らずの稚拙な細分化、詳細化が目立つと私は判じています。
しかしながら、この路線は当分続くとも考えています。アメリカの弁護士だけでなく海外の事業家が日本での活動を増やしてきている以上、日本的な曖昧さが通用しなくなっていく現実に対応せねばならないのは必然です。
決して口外はしないでしょうけど、国税当局も不安なのだと思います。だからこそパブリックコメントで改正税法について意見を求めるなんて従来にはないことをやり出したのだと推測しています。
その意味で先週、民間からの意見を尊重して300万円基準の適用を止めたことは、十分評価するべきだと考えています。
でも、このような事態に税務署を追い込んだ民間のコンサルたちの節税プランには、正直私は好感をもっていません。あれはやり過ぎだと思うので。
令和4年段階で、サラリーマンなど給与所得者に最も有効な節税は二つだと私は考えています。一つは医療費控除、もう一つはふるさと納税です。
少しお堅い話が続き過ぎたので、これで今回は終わりにしますが、二つの節税手法については、いずれ書き記そうと考えております。
早くに御礼申し上げねばならぬ処でした。
コロナ感染で寝込んでまして、あと数日の隔離でして。そのような理由でコメ遅れましてすみません。充実の内容ありがとうございます。
そしてお疲れ様でした。
300万撤回の件、知らなかったです。実は正社員ではないが、賞与も社会保険もつく、これまでの副業を拡大して、資格を活かした本業は開店休業状態に移行してます。なので、来年の青色申告分を除くと、もう、あまり注目してなかった事もあります。やはり撤回しましたか。
帳簿は業者なら当たり前ですからねぇ。事実上の撤回なのだと思います
とはいえ、バカな事をするもんだなとは思いました。
300万の件は発表以来、気になっていました。なによりパブリックコメントを求めるものであったので不思議に思っていたほどです。300万基準は、正直賢い基準ではないと思いますが、節税目的のバカなコンサルが妙な営業やらかしたもんだからこそ起きたもの。現場の税務職員は困ったと思うので、基準を設けて一律に処理しようとした気持ちは分かるつもりです。