長きにわたりミステリー界を賑わしてきたフロスト警部、最後の事件が表題の作品である。
外見はくたびれた中年男性であり、お洒落や教養とは無縁の男である。デスクは未決の書類の山であり、乱雑に資料が積み上がっている。ところかまわずタバコを吹かし、その灰をまき散らす。
そして口を開けば際どい猥談とお下品な冗句で周囲を困惑させるデントン警察の名物刑事である。
名物刑事ではあるが、必ずしも名刑事という訳ではない。それどころか違法捜査から経費の水増しまでやらかす脱法刑事である。そのせいで、今回は長年勤めてきたデントン市警を追われる羽目になる。
しかし中年男はしぶとい。そうそう簡単には転勤に応じるつもりはない。だが敵もさるもの、後継の警部を連れてきてフロストを追い込み、なにがなんでもデントン署を追放するつもりである。
唯一の救いは、デントン市を賑わす未成年の失踪事件やその後に発見された死体など難事件が続出していることだ。一件解決しても、次の事件が発生して、ゆっくり引越しの余裕もない。
果たして公私ともに危機に陥ったフロスト警部、さあどうする。
その結果は本書を読んでもらう他ない。
一つだけネタバレしておくと、本書が最後のフロスト警部作品であるのは、著者のウィングフィールド氏が亡くなったからであり、フロスト警部が殉職した訳ではない。
フロスト警部の執念深さ、しぶとさ、下品さを味わえるのも本書が最後である。私としては多くのミステリーファンにこの楽しみを共有して欲しいと、拙に願う次第です。
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