ヌマンタの書斎

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「人間豹」 江戸川乱歩

2006-10-28 14:21:39 | 
無粋は嫌いだ。

公序良俗に反するとか、徒に欲情を扇動するとかの理由で、日本では性器を露にしてはならないとされている。映画、写真など、様々な表現に対して、黒墨や黒マジック、最近はモザイクなどで性器が露出しないよう、お上の指導が入る。

断っておくが、私は性の露出に関しては、やはり規制は必要だと考えている。ただし映画や写真などの作品に直接規制(改竄であり、破壊行為でもある)を掛けるのではなく、入場規制などの機会を制限するかたちが望ましいと思う。

馬鹿げていると思うのは、性器そのものを見えなくするようにすれば、公序良俗を守り、過剰な欲情を抑制できると考える、お役所の見識の低さだ。芸術とは、人間の本能に訴えるものなのだから、性器が一部露出しているだけで、それを否定するのは極めて愚かで、無粋だと思う。

そもそも、役人に判断させること自体、間違っていると思う。せめて立法府で判断すべきことだと思うが、なぜかお役人に任せている。それが日本人の気質なのだと言われれば、そうかもしれないと思うが、それでもやっぱりオカシイと思う。

80年代までは陰毛が露出すること自体、やましいことだとされていたから失笑するしかない。最近、昔はぼかしが入っていたはずの映画をDVDで観たが、なぜに、ぼかしが入っていたか理解が出来なかった。ぼかしの必然性が、まったく分からない。陰毛が見えただけで、過剰に欲情するとは、どうみても思えなかった。

世の中には、隠した方がイヤラシイ場合だってある。それを意図して隠す方が、はるかに扇情的だと思う。初めて海外旅行に行ったハワイで、ドラッグストアの奥に堂々展示されていた、100%露出しているHな雑誌は、全然イヤラシサが物足りなかった。あれほどまでに、あっけらかんと性器を露出されると、かえって淫靡さに欠ける気がする。

実は、私が初めてイヤラシイと思った本が表題の「人間豹」だ。悪役がヒロインを裸にして、豹の毛皮のなかに閉じ込めて、いたぶる場面を読んで仰天したのは小学生6年の時だった。誤解されると困るので断言するが、私にSMの趣味はない。だが後年読んだ「チャタレイ夫人の恋人」なんぞと比べても、格段に扇情的で淫靡であったと思う。

作者の江戸川乱歩は「怪人二十面相」を初めとして明智小五郎ものが好きで、熱心に読んでいたのだが、「パノラマ島奇談」を始として、けっこうスケベな作品が多い。私は小学生の頃から、大人向けの推理小説を数多く読んでいたので、スケベな少年に育ち、やがて性犯罪を犯すように・・・

そんなわきゃない! そりゃ、人並みにスケベだとは思うが、正統派のスケベだ。人様に後ろ指刺されるようなHはしたことない。まして性犯罪なんぞ、するかいな。

馬鹿げた性規制なんぞ、性犯罪の抑制の役には立つわきゃない。人間に性欲がある以上、いくら性に関する規制をかけても、性犯罪はなくならない。ただし、青少年の健全な育成という観点から、ある種の規制はあってもいいとは思う。でも、性器を隠すことが規制になるとは思えない。性行為なら、分かるけどさ。

ところで今回、再読してみて思ったのだが、「人間豹」は推理小説としては駄目だと思う。明智小五郎まるで推理してないしね。でも、単純にエンターテイメントとしてはどうか。う~ん、猟奇に頼り勝ちで、いささか消化不良の感が強い。ちょっと、がっかりの再読でした。
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6 コメント

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Unknown (jin rock)
2006-10-28 18:23:00
隠しても 見たがるのが 人間というものですね 同様に タバコや酒を 規制しても どこかで ぬけ道を さがしだしてしまいます さて 平成の はじめごろ 宮沢りえの サンタフェに はじまったヘアヌードも あのころほどの 氾濫は ありませんね 男性器は ドラマでも 雑誌でも写され どんな形か 誰でもみんな知ってますが 女性器に関しては 幼児でさえ隠してしまいます これは見る側への規制ではなくて 見せる側に対して 羞恥心を養うための 規制ではないでしょうか しかしながら 女性器は グロテスクで 見る側の気分を害する可能性もあります 私の同級生は アダルトビデオを見て 気分が悪くなり 食事もすすみませんでした
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Unknown (jin rock)
2006-10-28 18:55:03
現在 風俗店において 借金のためとかいう 強制的な 暗いイメージはなく その点で ドラマや小説は 先入観に しばられた おくれてるものだと思います 彼女たちは ファーストフードや コンビニで バイトするのと同じ感覚で 勤務し 昼間は 学生やOLの子も 少なくありません 自分の都合で 長期に休むこともあります 規制すれば そういった風俗店にもいけない学生とか貧困層とかの 性犯罪を増長することにもなります 種族保存のための本能に さからうことは 自然な姿では ありません 
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Unknown (jin rock)
2006-10-29 17:59:30
私は 結城彩雨氏の小説が 好きです 浣腸や肛虐や汚物のオンパレードですが ビデオで映像でみると 気持ちが引いてしまいますね
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Unknown (ヌマンタ)
2006-10-30 09:48:35
jin rockさん、こんにちは。性に関する感性は民族、時代、年齢、慣習など様々な要素により変わってもいいとは思います。ただ、あまりに機械的というか、幼稚な性規制には同意できませんね。南米のインディオのドキュメンタリー番組で、性器にモザイクをかけていたのには、呆れた覚えがあります。なにを考えているのだが・・・
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Unknown (アブダビ)
2014-07-22 00:26:30
乱歩でくか…高校生の時に「人間椅子」を読み、フェチというものが世に存在することを知りました。あ種のいかれたイメージは凄いです。
山田風太郎の忍法帳は、いかれた発想を描きながら、どこまで奇想を展開できるか著者がゲーム感覚に醒めている感じがします。
乱歩は変態を語るのが愉しくてたまらないような、
作家があちら側に全開なのてすよ。私見ては。
そこにドン退きしたくなるのてすね。
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Unknown (ヌマンタ)
2014-07-22 12:41:11
アブダビさん、こんにちは。江戸川乱歩という人は、かなり両極端というか躁鬱の激しい人であったらしいですね。ある意味、犯罪者側の心理と、それを取り締まる側の心理の両方に通じていたのだと思います。どちらにあっても、彼なりにのめり込んでいたのだろうと推測しています。
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