デブよりノッポほうが喧嘩が強いと云われている。
たしかに背の高い奴は、腕も足も長いので、こちらの手足が届かない距離から殴ってくる。しかも長い手だけに可動域が広く、体重をのせないジャブでもかなり威力がある。しかも、上から叩きつけるように殴ってくるので威力は倍増している。
だから私は背の高い奴との喧嘩を苦手としていた。はっきり言って、勝つためには寝技に持ち込むしかなく、道路上では無理だ。アスファルトという奴は、案外と表面がギザギザしていて、寝技なんてやろうものなら体中傷だらけになる。だから下が土か屋内でもないかぎり、背の高い奴との喧嘩は避けたほうが賢明だ。
一方デブとの喧嘩は、いささか様相が違う。太り方にもよるが、一番怖いのは固太りしている奴だ。これはラグビーなど身体のぶつかり合いで鍛えられた奴に多く、筋肉の周囲に脂肪が巻いている感じで、打撃がまったく効かない。
もっとも普通にただ太っているだけなら話は別だ。脂肪があついので殴っても堪えないのは同じ。でも、動きが鈍く、しかも耐久力がないので息切れするのを待ってから、足技で転がせば案外勝ちやすい。
もっとも寝技に持ち込んでも、手足がぶっとくて上手く関節を取れない場合もある。しかも、上に乗っかられると重いので、こちらがスタミナ切れしそうになる。結局のところ、格闘技の技量が低い私の場合、デブでもノッポも厄介であった。
ただ、経験的にはノッポのほうが強い奴が多かったと思っている。もっとも例外はどこにでもある。デブでも俊敏で運動神経の良い奴、これは喧嘩相手としては、極めつけに厄介だった。
プロレスの世界でも事情は同じで、やはりデブ型のレスラーよりもノッポのレスラーのほうが強いとされている。ちなみにアンドレ・ザ・ジャイアントはデブで長身という規格外の身体(身長2m38cm、体重250キロ)だが、若い時の体重が180キロ台で痩せている時でも問答無用で強かった。この人はデカすぎなので例外だろう。
もっとも、どこにでも例外はいるもので、今回取り上げるクラッシャー・バンバン・ビガロはその典型だ。とにかくまん丸のデブなのだが、マットの上で軽々と側転をやってのける。おまけに俊敏で、運動神経はかなりいい。
剃りあげた頭頂部から下半身まで、おどおどしい刺青が入っているせいで、恐ろしげに見えるが、実は頭も良く、プロレスが上手だった。デビューしたころは、怪奇レスラー的な扱いを受けていたが、その器用さと頭の良さで、どんな相手ともプロレスを演じてみせると評価はうなぎ上り。
たしかにどんなへぼレスラーとも、そこそこの試合を組み立てられる器用な人だった。旧ソ連からメダリストのアマチュア・レスラーを新日本が招聘した際にも、アメリカ代表としてソ連人レスラーと対戦して、プロレスのイロハを仕込んだことでも知られている。これは馬鹿では出来ない。プロレスをよく理解していたビガロだからこそ、出来たと言える。そのせいで、新日本プロレスの幹部たちからの評価は、非常に高かった。
ただ、タッグを組んだ相手が悪かった。やはりデブだけど異常に喧嘩が強いビックバン・ベイダーは、強いことは強いのだが、手加減が下手。つまりプロレスが下手なので、ビガロは裏方に回って試合がプロレスで済むよう四苦八苦していたように思えた。
強く引き止める新日本プロレス幹部たちの説得を断り、主戦場をアメリカに移した原因は、このあたりにあったように思えた。私としては、もう少し日本のマットで、じっくりと観たいレスラーであっただけに残念だ。
ちなみに芸達者なビガロは、日本のTV番組にも登場している。たしか、とんねるずの「みなさんのおかげです」で仮面ノリダーの対戦相手として現れて、しっかりとギャグをかましている。
これだけ多彩な才能に恵まれたビガロだが、実は45歳の若さで亡くなっている。どうも薬物中毒らしいのだが、よくは分からない。刺青だらけの外見から、やはり悪人だったのだと思われそうなのが気の毒だ。
ビガロはアメリカの自宅の近くで火事が起きた際、火の中に飛び込んで余所の子供を救出して大やけどを負っている。この時の怪我が意外に重く、これ以降プロレスからは手を引いている。その後、交通事故を起こして同乗者が死んだりと不幸が続き、その数年後の薬物死であった。
全身刺青だらけの乱暴者のデブという誤解を招きやすい外見であったが、中身はまともな人であっただけに、早過ぎる引退と死は残念でなりません。
仕事場で死傷事故があった以上、非難されるのは仕方ない。
ただ、いささか違和感はある。先月のことだが、群馬県桐生市で中学生が体育館の解体現場での事故で亡くなった。学校側は、その生徒が工事を請け負った解体業者の下で働いていたことを了承していたようだ。
それどころか、延べ17人もの中学生が働いていたことが判明し、学校が非難されているという。解体業者のほうでは、不登校などの生徒を学校側に頼まれて受け入れていたとの発言もあるところをみると、学校、生徒、業者いずれもが了解の上での労働だったのだろう。
義務教育である中学へ通わず、解体現場で働くことを勧める学校への非難もあるようだ。また、そんな幼い子供を危険な解体現場で働かせていた業者への非難も、相当にあると聞いている。
危険性の高い解体現場での中学生の死亡事故だけに、非難されるのは当然だと思う。しかし一方で私は当初から、それほど簡単に白黒つけられるような事件なのか、いささか疑問に思っていた。
たしかに義務教育のある中学生が、学校にも通わずに働いていること事態は、やはり問題がある。だが、そりゃ外野の取り澄ました意見に過ぎないように思う。自宅にひきこもっている子ならともかく、荒っぽい建築現場で働いているところからして、おそらくは所謂不良(ヤンキー)なのだろう。
中学の頃から不良の仲間入りするような子供は、まともに授業なんちゃ受けやしない。いや、学校に来れば来たで喧嘩だ、タバコだ、シンナーだと問題を起こす。かといってほっておけば、盛り場をうろつき、チンピラ化していく。
こんなヤンチャな子供は、大工などの職人の世界に叩きこんで、仕事のイロハ、大人社会の礼儀作法を拳骨で叩きこむのが一番の教育だ。そう考えた末に、学校、生徒、業者皆が了解の上での職場体験だったのだろう。
これって悪いことなのか?
勉強に興味がない子に授業を無理矢理受けさせても無駄だ。むしろ騒ぎを起こしたりして、授業の妨げになるほうが多い。私のかつての級友には、この手のヤンキーたちが沢山いた。
中学で既に不登校になる強者もいて、たまに会う時は公園か、盛り場ばかり。シンナー臭かったりして危険な奴もいたし、年上の女性に飼われている、いわゆるツバメ君もいた。学校に行く気もないし、仕事も面倒くさいとぼやくだけ。
私は内心、こんな奴らは職人の弟子にして、鉄拳教育で働かせるのが一番イイだろうと思っていた。新聞で、低賃金の未熟練労働者を学校が作ってどうするといった非難が掲載されていたが、それこそお門違い。
世の中、案外と義務教育さえ満足に受けていない人はいる。彼らが皆、低賃金の末端労働者だと思ったら大間違いだ。たしかに学力は低いし、教養にも乏しい。常識さえ怪しい人は、けっこういる。でも、腕一本で生きてきた逞しさは尋常ではないし、親方や会社社長にまで成り上がった強者数知れずだ。
実際、うちの事務所の顧問先でも、学校に満足に通わずに社長になったり、親方になっている御仁は何人もいる。高等教育がなくても、立派に人生の勝者になっていると本人たちも自覚している。そこまでいかなくても、職人として自分の腕に誇りをもって生きている人は少なくない。
なにも皆が皆、高等教育を受けてエリートサラリーマンを目指す必要はないと思う。
ただ、今回残念なのは、危険だと分かっている解体現場で働かせ、十分安全に目を配らなかったことだ。こればっかりは非難を免れない。
私としては、今後もこのような不登校児の職場体験は続けて欲しいと思います。少なくても、自宅に引きこもりさせたり、あるいは盛り場のチンピラ予備軍化させるよりも、はるかに良いことだと思います。
悪食。
以前から思っていたが、西原理恵子って悪食だ。いや、食べ物に関してではなく、人間に対してだ。だいたい、漫画デビューした頃の麻雀雑誌で、おじさん編集者をたぶらかしての作品掲載だった。私が知る限り、麻雀のルールを知らずに、麻雀の漫画を描いた漫画家は西原だけだ。それだけではない。
あの画力で普通の漫画雑誌では採用されるはずもない。にもかかわらず連載までされていた。嘘だと思ったら、西原の「まーじゃんほーろうき」を読んでみればいい。あの絵柄で原稿料をもらっていたというのだから信じがたい。まるで子供の落書き並みなのだから。
ちなみに、デビュー作の「ちくろ幼稚園」は、西原を見出したヤングサンデーの編集部員であった八巻氏が、編集長に無断で登用させたそうだ。たぶん、許可を求めていたら、落とされていたので、これは八巻氏のファイン・プレーとしか言いようがない。
あの下手くそな絵柄を見て、多くの漫画家志望の若者たちが「なんで!?」と悲鳴にも似た疑問を口にしたことだろう。それぐらい下手だった。連載されたのは、きっと編集者をたぶらかしたからだとの陰口が出たのも無理ないと思う。
たぶらかした、というよりも西原の営業努力の成果だと私は思う。この人、昔っから中高年の男性、つまりオジサンたちに取り入るのが上手い。おじさんキラーだと言ってもいいぐらいだが、驚かされるのは、そのオジサンたちが揃いもそろって、一癖二癖ある変わり者ばかりだからだ。
間違っても品行方正で、社会的地位が高い紳士は、西原のターゲットとならない。高須医院長は微妙だが、末井さんといい、山崎たぬドンといい、まともじゃない。そんな変わったおじさんばかりを周囲にはべらす西原を悪食と言わずして、何と呼ぶ。
更に付け加えるなら、この人の漫画はただ絵が下手なだけではない。下手は下手でも、西原にしか描けない下手さなのだ。これを個性と呼ばずして、何と呼ぶ。その個性は、毀誉褒貶の激しい西原の人生の賜物以外の何物でもない。
ところで、あれから二十数年がたった。西原の画力は上がったのか?
本人曰く「上達ではなく、下達した」とのことだが、「私より下手な漫画家はもっといる!」との科白を聞きつけた八巻氏が、では対決してみましょうと言いだして、引くに引けなくなった西原がやる羽目に陥ったらしい。
凄いのは、その対戦相手だ。元々親交のあった「とがしやすたか」はともかく、あの藤子氏まで登場させてしまった。他にも釣りバカ日記の高井氏や、あんぱんまんのやなせ氏まで、その対戦相手に引っ張り出すのだから、西原の営業力は凄い。
しかも、企画を知らずに対決に巻き込まれた高井氏に怒られるも、逆に噛み付き返して漫画のネタにするあたり、無頼派西原の面目躍如といったところだろう。
それにしても、漫画家の先生方がその場で即効で描いた絵のしょぼいこと、しょぼいこと。もう引退しているといっていい藤子氏や高井氏はともかくも、現役バリバリの先生方の絵には爆笑するしかない。
ちなみに私が密かにこの人、性格悪いんじゃないかと疑っている浦沢直樹は、事前に練習して登場(第二巻)。だから上手いんだけど、やっぱこの人、性格悪いわな。その上、あの昼{恵子先生まで引っ張り出すのだら、西原の横暴ぶりには呆れかえる。でも爆笑。
ええ、下らない企画だと思いますよ。でもね、仕事に疲れたなァ、家事したくねぇなァなどとボヤいている時に読むと、馬鹿笑いして、気が付くとやる気が出てくるのが、西原ワールドの不思議なところ。
まァ、西原初心者にはお勧めしませんがね。
戦争が終わった、終わったと喜び、戦争は悪いことだと決めつけ、謝りゃいいだろうと済ましたのが、戦後の日本の最大の過ちだと思う。
特にダメなのが、日本は悪うございましたと外国に宣伝することで、自らの善人ぶりをアピールしたがる自虐的善人ぶりっこだ。典型的なのは、二枚舌で悪名高いノーベル文学賞受賞者の大江健三郎だろうが、他にもうじゃうじゃいる。
なにか日本を否定するようなイベントがあると、しゃしゃり出てくるので直ぐ分かる。最近だと反・原発とか環境問題の場でよく見かける。嬉しそうに、だから日本はダメなんだと、はしゃいでいる。
私は日本が再び戦争への道を歩むとしたら、その原動力になるのは、この手の反日、自虐の善人ぶりっ子平和愛好市民たちだと思う。なぜなら、彼らは戦争の反省をまじめにしていないからだ。
なぜ、日本は大陸に侵略し、アメリカに牙を剥いたのか。その原因と背景に対する考察をせず、ただ日本は悪い、軍部が悪いと誤魔化してきた。なぜ、あの時代、日本人が侵略と戦争しか生き残る道はないと思い込み、軍人を信じ、政府を支持したのか。その原因を真摯に考察することなく、ただ戦争は悪いこと、侵略は悪い、だから謝ろうと安直に済ませてきた。
私は謝るだけの反省なんて認めない。それはポーズだけに過ぎない。なぜ戦争への道を進んだのかという疑問に対し、その当時の国際情勢、日本の対応、その背景を考え、他にとるべき道はなかったのかと思索し、さらに戦争をもっと上手く終わらせることが出来なかったのか。そこまで考え込まなければ、本当の反省ではない。
ただ、形だけの反省と謝罪で誤魔化してきた人たちは、一世紀前の日本人と同じ過ちを繰り返す可能性は高いと思う。戦争にせよ、侵略にせよ、それなりに当時の人たちが真剣に考えて実行したものだ。それを単純に悪い、悪いと決めつけるのは思考放棄に近い。
恐ろしいことに、戦後の日本の歴史教育は、本当の意味での歴史考察から逃げて、単なる年号暗記と事件暗記だけで済ませてきた。なぜ、そのような行為をしたのかの必然性や、その背景に対する考察を放棄してきた。
私が中学や高校で受けた授業は、日本の昭和初期の歴史教育を安易に済ませてきた典型であった。そこに思索はなく、そこに疑問は浮かばず、ただ年号暗記と事件暗記だけの教育。あるとしたら、せいぜい戦争は悲惨だ、悪いことだとの感傷的教育だけ。
おかしなことに、予備校の大学受験のプロ講師たちの講義のほうが、よっぽど踏み込んだ歴史教育を感じさせた。もちろん予備校の目的は大学合格であり、そこに重点を絞った講義内容となっている。
だが講師の先生たちは、時折空いた時間に不満をもらす。ダジャレの年号暗記で人気だった世界史の山村先生は、こんなの本当の歴史授業ではない。大学合格には必要なテクニックだけれど、歴史を学ぶということは、そんなテクニックを学ぶことではないと吐き捨てるように本音を語っていた。
垂直的、並列的な世界史講義で教科書では学べない広範囲な歴史授業をしてくれた武井先生は、当時共産シナとソ連の蜜月関係を称える日本の新聞TVを痛烈に非難した。あれだけ長い国境線を持つ国同士がいつまでも良好な関係にある訳ないと。両国の歴史を振り返れば、争いと和平の繰り返しであり、そう近くないうちに紛争は必ず起こると。
歴史をしっかり学んでいれば、そんなことは常識なのだと悲憤していた。講義の時間を超過してまでして、痛烈に日本の新聞TVの勉強不足を嘆いていたことは、今も忘れがたく覚えている。そして武井先生の予測通り、中ソの国境紛争は火を噴いた。
戦争は悪いことだと嘆く暇があるなら、もう一度昭和の歴史を考察すべきだ。戦後の日本の歴史教育の最大の欠陥が、昭和初期から中期の時期だと思う。なぜ、当時の日本人はあのような行動に出たのか。当時の政治家は、あのような決断を下したのか。そして、当時の日本の大衆は、それを支持したのか。
その理由を考えることの一助になるのが、表題の作品だと思います。興味がありましたら是非どうぞ。
間違いではないが、正しくもない。たしかに海底地震は津波を引き起こすことがある。まだ東日本大震災の直後に襲ってきた津波の映像が、目に焼き付いている方なら誰しもそう思うであろう。
だが、海底地震だけが津波を作るわけではない。
例えば宇宙から落下してきた隕石。6500万年前にメキシコ、ユカタン半島沖に墜落した隕石が引き起こした津波は、その高さ数百メートルで速度は数百キロでアメリカ湾岸を襲ったと考えられる。もちろんヨーロッパ大陸やアフリカ大陸にも、巨大な津波が襲ったとされている。
こんな津波が襲ってきたら、どんな防災対策も無意味となる。
まぁ、いささか極端すぎる例かもしれないので、近代となり実際に計測された津波を取り上げたい。この津波も大きかった。なにせ最高到達点は、はるか山の上、海水面から500メートルも上がった稜線に、しっかりと津波の痕跡を残している。
それが1958年のアラスカの深く切れ込んだリツヤ湾だ。その湾は氷河が削ってつくられただけに、細く長い川のような湾であった。アラスカの巨大な山脈から流れてきた氷河の行きつく先でもあり、現在も年間数センチづつ氷河が海に沈みこんでいる。
この氷河のはるか上流でマグニチュード7クラスの地震が起きた。その結果、氷と岩の巨大な壁が崩落し、数万トンの氷塊が大挙して湾に落ち込んだ。ちなみに他の湾では、このような巨大な崩壊はなかったため、揺れただけで津波なんぞ起きなかった。
だが、リツヤ湾に崩落した氷塊が引き起こした津波は、まさに怪物的巨大津波であった。細長い湾であったことがわざわいし、津波は加速度的に高さを増して、なんと標高520メートルの高さにまで到達している。
現在のところ、このリツヤ湾の津波が計測されたもののなかでは、最も巨大だとされている。M7クラスの地震は大きいが、山間部での地震であったせいか、人的被害は一切報告されず、このリツヤ湾の津波も目撃者がいたからこそ後世に知られるようになった。
私はこのことを、CS放送のディスカバリーチャンネルで知ったのだが、その番組内でこの次予測されている巨大津波があることを知り仰天した。
場所は、大西洋の避暑地として有名なカナリア諸島のラ・パルマ島だ。活火山を擁する島だが、問題は火山そのものではない。この島の東西の巨大な岸壁こそが問題だった。その岩質は、火山から作られた軽石状のもので、あまり頑丈ではない。
もし、この島で中規模クラスの地震や、火山の噴火等が起こると、中央部で大規模な地滑りが起こり、結果として海沿いの巨大な岸壁が崩壊することが予測されている。この数百億トンにも及ぶ岸壁が崩壊して、海に次々と落ちることにより巨大な津波が発生するものと考えられている。
番組のなかで、CGで作られた高さ100メートルにも及ぶ巨大津波がアメリカ東海岸やヨーロッパの沿岸部を襲うさまが描かれていた。それは、まさに巨大な海の壁に呑みこまれていく地獄図であり、数百万人の死傷者が出る可能性を科学者が述べていた。
断っておくが、これはSFドラマではなく、大自然の脅威を伝えるドキュメンタリー番組である。もちろん可能性の問題でもあるので、必要以上に恐れることはないが、今のところ島の東西の崖に警報装置を取り付けてあるだけだそうだ。いや、本当にそれだけしか対策は立てられていない。
私が知る限りではあるが、この番組が放送されて以降も、日本のような津波からの避難設備建築や、防災訓練などを定期的に行っているといった情報はない。果たして諦めているのか、それとも津波の危険性を敢えて認識していないのか分からない。
おそらく津波の危険に対する認識なんて、そんなものなのかもしれない。実際、日本でも震災前に30メートルクラスの津波の可能性を警告は存在した。福島原発でも、やはりそのような報告はあった。でも、敢えて無視されていた。
あまりに巨大すぎる危険性は、人の思考を硬化させてしまうらしい。
今年になり、日本政府も8月の末に南海トラフで大規模な海底地震が発生した場合の、最悪を想定したハザードマップを公開した。けっこう騒ぎになっているが、喉元過ぎればなんとやら。多分、半年後には忘れられいるのだろう。
残念ながら、人間なんてそんなものだと思う。