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第1牧区にいた牛44頭と、囲い罠の中にいたまき牛他6頭の放牧場所の入れ換えを、雨降る中で強行した。急坂を追われ、それまでとは環境が大きく変わった柵の中に押し込まれた牛たちは面喰ったようで、いつものように気の小さなホルスの中には大暴れをした牛もいた。
先にパドックから草地に出されていたまき牛(種牛=雄の和牛)には笑った。目の前で次から次へと囲い罠に入っていく雌牛を目にして、あたかもハーレムに入ることを拒まれた王ででもあるかのように、焦り、怒り、かと見れば懇願し、奇妙な声まで出して気を引こうとしていた。しかし、後宮にはどうしても入れてもらえず、むなしく地団太を踏むばかりで可笑しくもあり、気の毒でもあった。
今日は、牧区の入れ換えという目的の他に、感染症対策という重要な仕事があった。ワクチンを直接牛の背中に吹き付けるため、面倒ながら1頭づつ狭いパドックに入れ、同時にすでに感染しているかを調べるため、全頭から採血もした。
牛の防疫対策については口蹄疫以外、一般には知られていないようだが、1杯の牛乳、或いは皿の上の1枚のステーキのために、実はかなり手のかかる仕事や対策が執られている。
あんな大きな生き物が4カ月を過ごすために事前の準備があり、牛がいる間はもちろんだが、下りた後でも牧場の管理は初雪のころまで続く。さらにこのような広大な面積を必要とする牧場の放牧料収入は、しかし、スズメの涙どころか、ハエのおしっこ、だ。
雨は止んだようだが霧は絶え間なく流れていく。たくさんの牛が夕暮れの草を食む様子を見ながら山を下ろう。それにしても何だか今日は、家までの距離がいつもより遠く感ずる。
CHIYさんお久しぶりでござんす。星空を眺めながら、入浴する勇気が付いたらお出で下され。
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