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昨日、入笠の例年にない雪不足と暖かさを呟いていたら、東京では初雪が降ったと。本当に予測のつかない気紛れな天気だが、こうやって今年も、天気とその予報に翻弄されるのだろうか。山の天気予報が下界並みになるのは、まだまだ先のことだろう。
天気にかこつけて、もう少し雨具のことを呟いておこう。その昔、と言っても1970年の終わるころ、北岳のバットレスで遊んでいたら、急に雨が降ってきた。相方は下ることを主張してきたが、その時下(お)ろしたてのゴアテックスを着ていたから、その性能を信じて登攀を続行した。ところが、期待に反してずぶ濡れになってひどい目に遭った。まだゴアテックスはかなり高価で、その評価が定まらない時期だった。
その件を5月、涸沢で登山用具に詳しい友人と話していたら、問題の雨具を広げ、上から水をかけてみろと言われた。で、そのようにしたら、頼りのゴアテックスは木綿のようにいとも簡単に水を通してしまった。不良品だということになり、販売先に問い合わせたら新品と交換するから送り返せという。そして、そうしたら、忘れたころに新品が届いた。何故か最初に買ったのはLサイズだったのに、届いたのはMサイズだったことを覚えている。それはともかく、今度は雨具の役をそれなりにしてくれた。
そんなことがあったため、この新素材のことはいつごろ「世に出回ったか」を覚えていた。今なら雨具を防寒具にも兼用できるが、大昔の冬期用の防寒具、ウインドヤッケは、初冬の雨には全く通用しなかった。それが凍死の原因の一つでもあった。だから、ナイロン製の雨具を、別に持っていくこともあったくらいだ。 雨具として、安心、安全な製品と言えるかは措いて、ゴアテックスが登場する1970年代後半よりも以前は、誰もがかなり無理をして雨風に耐えた。テントも雨には弱かった。さすがにそこまではしなかったが、炭俵をマットの代用に敷いた人たちもいた。中高年の登山者を冬の山で目にすることなどなかったと思う。
そのころは、遭難が報じられると、原因は決まって装備に問題ありだと言われ、死者は鞭打たれたものだ。したり顔にそう語る人には怒りが湧き、精一杯の努力をして倒れた彼らにはその無念を思い、心底から気の毒に思った。山の装備はそういう中で、改良進歩されてきたのだ。
日が傾きかけた長い影を引く落葉樹の森や牧場も、やがては雪の中に眠るでしょう。お出掛けください。
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