
昨日の続きになってしまうが、南稜のことで思い出したことがある。友人のUがプロの山岳指導者と一緒に、阿弥陀の沢に氷登り(アイス・クライミング)の訓練に行ってたときのことだったらしい。南稜から一人の単独行者が降りてきたので顔を見たら、何と登山家のM氏だったという。Uも氏の主催する登山学校には何度か参加したことがあったため、そこで師と生徒、ばかりかもう一人の師との間でも、気まずい雰囲気になったらしい。それはさておき、驚いたことにその時のM氏は、手に羽毛服を持っていただけで、他に何の荷物も持っていなかったそうだ。その後、あの距離を歩いて茅野の駅まで行ったのだろうか。
友人のUの話では、M氏の指導は懇切丁寧で、信頼できたという。しかし、その氏もで実に数々の物語を残してやはり山で死んだ。佐瀬稔著「狼は帰らず」のモデルになった森田勝氏のことである。近年評判になった山岳小説で、映画にもなった「神々の銀嶺」は、焼き直しと言えるほど相当の部分を前書に負っている。また「銀嶺」は、昨年の5月、エベレストの南西壁で亡くなったクリキ氏(栗城)氏にも、何らかの影響を与えた可能性がある、と思っている。
入笠へ行ってから3日が過ぎた。あれからも雪が降ったから、きょうの写真よりこの辺りもかなり積雪を増しただろう。そろそろ車は無理かも知れない。こんな気持ちの良さそうな林道、スノーシューズやスキーの出番である。また行ってみよう。当然、その時は羽毛服も持っていくが。