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ふたご座流星群 Photo by かんと氏
入笠牧場の小屋の前は、夜になれば絶好の星の観望地となる。今や、天体観測は、観光客誘致にかなりの効果があるらしく、どこそこの空が日本一だとか、いやその調査は古い、実はウチの方が・・・、とか喧(かまびす)しいことになっている。当牧場でも、効果は別にして、そういうことをウリにもしているから、あまり大きな声で批判めいたことを言うのは控えたい。
ただし、今年になって打ち上げられたロケット「イプシロン4号」の搭載した衛星の中身には、違和感を感じた。何でもそれには、他の実験や研究機材と一緒に、ビー玉くらいの大きさの金属球が何百個も積み込まれていて、来春、その金属の玉を宇宙に放出して、人工の流れ星をつくるのだという。結構大きなニュースになったから覚えている人も多かろう。
これを企画し、実行したのが民間企業の「ALE(えーる)」という会社で、同社の女性社長は、一般の人にも宇宙の魅力を伝えたいのだとか言ってた。非情に優秀な人だそうだから、こんなお題目のような説明とは別なことも、ベンチャー企業を牽引する立場として、きっと考えているだろう。
このロケットの打ち上げには35億円の国費が使われているらしい。そのことについては素人だから、安いのか高いのかの判断はできない。現在地球を周回している宇宙ステーションは、わが国が負担する金額だけでも1日1億円ほどもするというから、費用対効果を疑問視する人もいる。防衛費とからめて議論する人もいる。
しかし、そのことは入笠とはほとんど関係ない。問題は、あそこから眺める夜空である。一体そうまでして人口の流れ星を一般の人に見せることに、どれほどの意味があるというのだろう。もう充分に地球の外周は汚れている。この上、あの脆弱でわずかな空間・層に、商業主義的なものをさらにドンドンと持ち込んでも大丈夫なのだろうか。そのうち夜空に、大きな広告でも現れはしないかと心配になる。
きょうのかんと氏の流れ星を見て欲しい。寒さに耐え、一晩中じっと天体ショーを待つ。それができるのも天然の現象だからで、それをわれわれは崇高に感じたり、神秘的に思ったりするわけだろう。ホタルの光に、無粋な灯を当てる必要などない。
今、地方の観光地で盛んに行われている電飾にも、かなり抵抗を覚えていると、そんなことを呟けば、時代遅れと言われるだろうか。