Photo by Ume氏
この縞状に生えている木の殆どがコナシで、これから花が咲き出せば、真っ白な花の帯に変わる。牧場が、最も華やぐ季節となる。この航空写真からも分かるように、白樺はすでに葉が茂り始めたのに、ダケカンバはミズナラに歩調を合わせるつもりか、遅い。
日本でも中部に当るこの辺りの森林限界は標高2千600メートル位で、ダケカンバが多い。それでも深山となれば、やはりモミやシラビソ、そしてトウヒ(スプルース)などの常緑樹の生い茂る森が目に浮かんでくる。このところ連日のように闘っているテイ沢の倒木は、そのモミの木である。
この木は堂々とした貫禄を備えた大木となり、幹からは多くの枝が緑の葉を茂らせ、光を遮り、暗い鬱蒼とした森の独特の雰囲気をつくる。ところが、印象とは違って、モミの木は実は意外と脆い。チェーンソーを使って伐れば分かるが、同じ太さなら落葉松などよりか早く伐ることができる。
ならば、倒木処理の作業は楽だろうと思われるかも知れないが、そうでもない。なぜテイ沢の倒木にはモミの木が多いかと言えば、この木そのものに堪え性がないこともだが、夥しい枝のせいでもある。春の水気の多い雪が多量にこの枝に積もれば、どれほどの重量になるのだろうか。そのことを思い知らされたのが、沢の水に浸かった枝をに引き上げる際に感じた重さである。まるで、大型マグロをを吊り上げるのはこんな感じだろうかと、最近気配を絶ってしまった大物釣り師の山奥氏のの奮闘する姿まで想像した。
加えて、入笠山周辺は表土が浅い。根こそぎ倒れた木を見れば驚くほど根張りが貧弱で、あの何トンもの大木を、対してまるで纏足のような根が支えるのだから無理もない。
ともかく、一応のことは済ませた。あまり手を入れて、渓相に影響するようなことはしたくないから、鉄砲水を防ぐことができれば良しとした。同じことは今後も起こる。今回片付けた倒木は10年、20年すれば自然と一体化するだろうが、この渓はそのころ、一体どうなっているのだろう。
本日はこの辺で。