入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’21年「冬」(5)

2021年11月06日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 里や都会は「深まる秋」でも、ここはすでに冬の趣を感ずる。日中は好天が続いてくれ、色付いた辺りの景色を冬と言うにはまだ早いが、それでも昼と夜の寒暖の差は大きく、一日の中に秋と冬が同居しているようなものだ。やがてもっと落葉が進めば、この穏やかな小春日和の雰囲気は変わってしまう。
 昨日は高遠まで下り、その往復に芝平の谷の紅葉を満喫してきた。モミジの色はまだ黄色であったり、ちょうど見頃の赤だったり、焼けて落葉一歩手前などとさまざまだったが、季節がその終幕へと向かう佳境を今年も目にし、見とどけ、それで頼まれもしない自分の役目は終わったような気がした。

 今朝は囲いの中の2頭の鹿を処分するため、依頼してあった鉄砲撃ち2名が来てくれた。ところが、2頭のうち小さい方はいつの間にか姿をくらまし、金網の一部がこじ開けられていた。鹿の生への執着である。この場合はよく逃げたと言ってやってもよかった。
 その後、2箇所のくくり罠に掛かっていた鹿を屠り、県から何かの講習に使うからと頼まれていた鹿肉の一部を確保した後、囲い罠の中で仕留めた鹿も一緒に3頭の屍は生まれた森に帰した。昨日と同じことを呟くが、個々の鹿には何の憾みもない。その鹿の生命を絶つのだからキノコ採りをするのとはやはり違う。何度やってみても精神的にも、肉体的にも疲労感は残る。

 それで午前は終わった。午後は清めの酒のせいもあり、仕事ををするのを止めにした。その代わりに残り少ない秋を味わおうと、フラフラと山の中を歩いた。結果、少しばかりは殺伐とした気が収まったと思うが、鹿の血の流れた後のきょうの秋は只々見事という他はなかった。それも、ただ絢爛というよりか、華やかさの中にも老優のような渋さのある味わいで、それに孤独と静寂が混ざり合い神妙な気にさせてくれた。



 キャンプの予約を受けても、夜間はこの寒さだから戸惑うことが多い。それでも来ると言われれば断るわけにもいかず受けるが、昨日来た男女2名の設営し終えたテントを見て驚いた。まずその大きさ、中にはストーブも備わっていて煙突が外に出ていたし、寝るのはベッドだと言う。
 キャンプに対する考え方の違いもあろうが、こういう人たちと、山用や単独用のテントを使用する人と同じ料金では不公平だと思うし、こういう大型が主流になればキャンプ場の受け入れ可能な人数は減るから、料金が上がる可能性もある。
 快適を求める風潮は用品メーカーの望むところでもあり、益々商業化が進む。古い時代の山を知る者には難しい時代が来たと感じている。
 本日はこの辺で。明日は沈黙します。
コメント
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