
午前7時、曇天、気温0度。もう少し好天を期待していたが、天気はあまり良くなさそうだ。昨夜は雪も舞ったらしく小屋の前の枯草の上に白い物が残っている。中天から大きく南にずれた太陽が、権兵衛山の稜線の少し上の雲を明るくしている。ようやく日が顔を出すところで、今まで空の大半を占めていた雲がいつの間にか消えている。いや、幾つもの重そうな雲の塊が北に向かって流れていく。この分ではきょうはいい天気になるかも知れない。
コナシの葉もほぼ散りつくした。あの木の葉が落ち始めたのはまだ秋が始まった9月ころのことで、優に1ヶ月半以上をかけたことになる。その木の枝にホオジロらしきが1羽来ている。こんな時季に忙し気に飛び回る寒そうな留鳥の姿は何となく取り残されたようで、哀れを誘う。先日は誤って窓に激突したらしく、その死体が窓辺の草むらに落ちていた。そういえば、カラスもいつのまにか姿を消したようだ。

訪れる人のいなくなったキャンプ場には夜間、鹿が頻繁に出没するようで、その落し物がやたら目に付くようになった。先日の映画撮影の際、鹿の捕獲を依頼され、キャンプ場内にも1台くくり罠を仕掛けておいた。誘引には塩を使い、写真の手袋の先に罠が埋めてある。
よく見れば分かると思うが、2箇所に塩を舐めた跡が残っている。しかし、巧みに罠を避けている。そう思うしかない。しかし、どうやってその存在を知るのだろう、というよりか、ここ2,3年はくくり罠を使った猟はやっていない。罠のことやそれが危険であることをいつ、どのようにして鹿は学んだのだろうか。
大型の囲い罠にしても、塩による誘引効果を疑いたくなるほど無視され続け、牛が山を下りてからこれまでにたったの2頭しか捕獲できていない。誘引に用いている塩の種類を変えてみてはどうかと言う人もいたが、先程の写真で見る限り、効果がないわけではないと思う。鹿の学習能力は侮れないし、また蓄積されたその量、内容についても分からないことが多い。
害獣に指定され、有害駆除が奨励されている野生鹿ではあるが、もしかすればこの害獣にも、良い面があるかも知れない。牛の放牧に使ってない牧区のことだが、そこは確かに鹿の天国である。しかしそのことが、放牧地のススキや落葉松の成長を抑止しているとも考えられるからだ。鹿は牛よりかも貪欲に草や若い木を根こそぎ食べてしまう。
これはまだ、もしかの段階であり、たとえ三分の理のような話でも、あれだけの数の泥棒は御免こうむりたい。
きょうもまずまずの天気になりそうだ。渋い風景が拡がる。本日はこの辺で。