
まだ少し気が早いのは承知で、ツタウルシの色付き始めた1枚の葉、この秋2回目の登場になる。今朝は空の広い範囲で青空が拡がっている。午前8時、気温21度。しかしこの好天も夜には雨になるらしい。

珍しい物を見付けた、昨日のことだ。追い上げ坂と隣接する第2牧区のススキを刈っていたら、下方の囲い罠の中に幾頭かの乳牛と1頭のジャージー牛が戻っているのが見えた。普段の給塩時には乳牛は和牛に遠慮してしまうから、いい機会だと作業を中止して和牛に気付かれないうちに塩を持っていってやることにした。
囲いの扉を開けようとしたら泥の中に光る物が見えた。それが、2年前だか3年前だかになくしたナイフだとすぐに分かった。刃はすっかり錆びていたが、柄の部分にステンレスが使われていて、光っていたのはその部分だった。
あれはどういう理由だったか、もう詳しいことは思い出せないが当時2代目になる種牛がいて、その雄牛が狂暴で、そのことと関係していたことは間違いない。囲いの牧草だけでは足らず、草を乾燥させロール状にしたヘイキューブを下から運び上げ、囲いの中に入れる際に干し草を包んだビニールを切るためにこのナイフを持ち出し、気が付けば行方が分からなくなってしまっていたのだ。
素晴らしい切れ味で、ナイフのケースを見れば分かるがまだ新品同様だった。確か四国の伝統のある品だったと思う。
「砂山の砂を指で掘ってたら、真っ赤に錆びたジャックナイフが出てきたぜ。どこのどいたが埋めたか、胸にジーンとくる小島の秋だ」なんて古い歌を唄いながら、錆びを落とし、研いでみた。以前のような輝きは無理でも、さすが名のある山刀、刃こぼれはなくて切れ味はそこそこ復活しそうだ。
鹿の止め射しには刃の長さが少し足りないが、もうそんなことに使うことはないだろう。
2組、30人くらいの人たちが今週末をここで過ごす。そして恒例の集まりが終われば、またいつもの静かな牧に帰り、本格的な秋が来る。
ここにはコスモスの花が咲かない。里との往復が間遠くなって、そんなことを今頃になって気付いた。
キャンプ場を含む「入笠牧場の宿泊施設のご案内」は下線部をクリックしてご覧ください。
本日はここまで。明日は沈黙します。