入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’22年「秋」(17)

2022年08月23日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 最早ここには夏の気配などどこにもない。いや、もともと夏など来なかったのだから、そんなものを求める方が可笑しな話だ。季節に裏切られ、当たらない気象予報に翻弄され、ようやく迎えた今の季節に少し安堵している。午前11時、気温20度。
 
 きょうも朝から曇天の空模様で、周囲は鳥の声も虫の声もせずに静まり返っている。雲に隠れた権兵衛山の方から余分にでもなったのか、時々白い雲の切れ端が国有林の落葉松の林にゆっくりと降りてきて、その緩慢な動作がさらにこの谷の静けさを強調するのに役立っているようだ。
 落葉松の木はそろそろ水の吸い上げを止めるだろうし、ツタウルシの紅葉もそんなに待たずに始まるだろう。それと、近年はあまり収穫できていないあの林の中のキノコだが、果たして今年はどうだろうか。湿り気を含んだ土の匂いを嗅ぎながらよく晴れた秋の一日、小さなお宝を求めて歩き回る日が待ち遠しい。

 囲いの扉を開けて、牛が自由に第4牧区とを行き来できるようにしてから5日も経ったというのに昨日、とっくに逃げ出していたと思っていた囚われの鹿がまだ中にいて、ようやく自由の身になる姿を目撃した。
 鹿は一瞬、扉の手前でひるみ、戻ろうとした。それを見て、近くに張られた電気牧柵に感応する能力があって怖れたのかと思ったが、以前に小入笠の頭で鹿が感電した様子を見ていたため、その考えを打ち消した。
 しかし、この鹿ばかりか牛も、囲いの外へ出る時は必ず警戒心を露わにする。下牧が近付き、囲いに牛を集める際にも、極端なまでに扉の前で中に入るのを嫌う牛がいるし、すんなり全頭が入るということはまずない。電気に敏感な牛がいるとも言えず、いないとも断言できないが、牛でも鹿でも中には他より少しだけエレキに敏感と言うか、神経質なのがいるのかも知れない。今は勝手に出入りできるようにしている。

 南信州から来た和牛の中には、去年も来ていた牛がいるのか、第4牧区の端の方、国有林との境に近い林の中を今年も根城にしている。昨日、その根城まで行き頭数確認を終えて帰ろうとしたら、昨年と同じように牛たちがゾロゾロと後を追ってきた。どうも牛の記憶力をあまり馬鹿にしてはいけないと、彼女らに身を以て教えられたような気がした。
 確かに、かつて入牧時に、追い上げ坂の牛を面白がって叩いたりする者がいたころは、後々まで打たれた牛は警戒を緩めなかった。ただ、こういう牛は決まって仲間を扇動して逃げ回るから始末に悪い。

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 本日はこの辺で。
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