
8月最後の土曜と日曜、年間を通して最も賑わう恒例の「祭り」が終わり、人々は去っていった。前夜の盛況がまるで嘘のようにまたいつもの平穏が戻ってくると、一人だけが取り残された寂寥というのか、アルコールによって増幅されていく孤独感をこんな山の牧で深夜、いつもに増してヒシヒシと感じている。ただ、この水底へでも沈んでいくような感覚も、快感の部類に入れていいだろう。
それにしても真夜中の時間が経つのは早い。いつの間にか1時間が過ぎてしまい、その間に考えていたことといったら、隣の小屋の冷蔵庫にあるビールを取にいこうかどうかと、他愛もない逡巡を重ねていただけだった気がする。管理棟の冷蔵庫は小さ過ぎるのだ。
先程外に出てみたら、薄雲がかかっていて期待したような星空は見えなかったから、それがどうなったのか、ビールもだが、外に出たついでに見ておきたくなってきた。
で、行ってみた。まずはカシオペアを探し、それから東方向の夜空に目を向けてみると、まるで知らない土地にでも行ったような馴染みのない星々ばかりが見えて、携帯電話の星座表に頼ったり、ついには愛用のカールツアイスまで持ち出してみたが、それでもあまりはっきりしない。
実は惑星や星座の知識はそのくらいでしかない。だからここで次々と星座の名前を挙げ、さらに火星を見たとか冥王星を見たとか、冬の夜空でお馴染みのふたご座までも視界に入れたとか、そういうことを得意気に語る勇気などとてもない。天頂よりか少し西に、とりわけ目立つ明るい星が木星であるかさえも、断言しない方がいいだろう。
ここにあるタカハシ製の100ミリ屈折望遠鏡も、月を見て、その他は木星と土星を見るくらいが関の山だ。なにしろ、いまだに望遠鏡の取り扱い説明書を開いたこともなければ、極軸望遠鏡の扱い方すら知らないくらいだから。
午前3時、ようやくオリオン座を東の空に確認した。それでも、あの冬の夜空で主役を張るような輝き、精彩には程遠く、かろうじて脇役で出ることになった化粧前の老女優を見たような気がした。
いかん、寝よう。今から寝て、普通の時間に起きても寝不足の心配はないはずだ。昨夜は8時に眠った。
キャンプ場を含む「入笠牧場の宿泊施設のご案内」は下線部をクリックしてご覧ください。
本日はここまで。