入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’24年「冬」(5)

2024年01月07日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 午前5時半、中天の少し南には弦をたわませた弓のような月が青白い光を放ち、点在する星々の光りはそんな月の光りに負けている。
 そのうちに目が慣れてくると北斗七星が像を結んで、天の北東の広い領域に見えてきた。そうなると、最初から目に付いていた夜空のほぼ中央の赤い星こそは、われらが牛飼い座の主星、アルクトゥールスということになる。
 冬の夜空をオリオン座が主役を張っている時間帯は、柄杓は見えてもその柄の先にある牛飼い座の主星は東の楽屋からまだ出てこないのだ。思いがけない時間に、1等星の赤色巨星と久しぶり出会え気を良くして部屋に戻った。

 この独り言は一日前に戻ることに
 天気良く、一人で小屋にいても仕方ないだろうと、周囲の雪景色が盛んと誘ってくれる。どちらにするか迷った挙句、山スキーの方が準備に手が掛からないような気がして、スノーシューズは出番から外す。
 とりあえず御所平峠に行って、北原のお師匠の担ぎ上げた地蔵尊に新年の挨拶をし、その後のことはその時の気分に任せるということにした。
 林道を進む間は山スキーの実力をそれなりに感じるが、積雪量の少ない細い法華道を登るうちにスキーは邪魔になり、ついに途中で捨て、そして、スキー靴に申し訳ない程度の靴底が付いた靴で歩くことにする。
 峠では「お師匠、来たぜー」と、つい大きな声が出た。しばし帽子を取り、神妙に頭を下げる。
 やはり散歩は峠で終わらず、さらには秘密の森の中へ足を踏み入れることになった。それというのも、スキー靴を履いて歩けばその歩きずらさに誰でも閉口するものだが、意外とこの靴はそれなりの役目をはたしてくれるのだ。
 歩き、急登もし、クマササの中も構わず進む。少しばかり雪山登山の気分がしてきて、気持ちが高揚してくる。体力があまり低下していないと喜び、年齢を忘れさらに歩き、登る。
 快晴、遠くに拡がる白い峰々が眩しく光っていた。
 
 
    ピンボケ、水平も怪しい
 
 あれは惰性とでもいうしかない。小屋に戻りしばらくするとまた、別の森へも出掛けてみたくなってきた。
 もう山スキーもスノーシュズも要らないと分かったから、今度はゴム長靴に替え、風もないので窮屈な雨具も脱ぐことにした。その代わりに、思い出多き二人の亡友と深い関わりのある半纏を着ることにする。もちろん、杖(ストック)など持たない。
 この森は常緑樹のモミが多く、それらが雪を被り、森閑とした雰囲気を守りながら闖入者を迎えてくれた。こちらもできるだけ足跡を残さないよう、時にクマササの中を進み、沢の水の流れの中を歩く。
 その間、動物の足跡は鹿やウサギなど雪の上に見たが、どこへ行ったのか姿はなく、いつもなら決まって聞く鹿の警戒音すらしない。
 
 日が傾きかけるまで、雪に埋もれかけた森の中を、あのこと、このこと、尽きぬ思いを抱えて歩き回る風変わりな男を、秘密の森は沈黙を守り、好きなようにさせてくれた。(1月6日記)

 きょうも好天に恵まれ、小屋の5名が出掛けていく。
 本日はこの辺で。

 
 
 
 
コメント
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