■平成20年8月3日(日)午前5時52分、首都高速5号池袋線(下り)熊野町ジャンクションにおいてタンクローリーが横転、炎上する事故が発生し、主桁等の道路構造物に著しい損傷が生じました。2年半前に民営化されたばかりの首都高速道路会社にとって、大きな試練として立ちはだかったこの事故からほぼ2ヵ月半。突貫工事の成果で、10月14日(火)に全面復旧しました。
首都高速道路会社は、この事故による被害額を現時点で45億円以下と推定し、減収分については、さらに綿密な精査を加えて、遅くとも来年3月末までに、事故の起因者の多胡運輸に請求するとしています。
これほどの大事故を起こしながら、全く謝罪会見もせず、一見、普段と変わりなく営業を続けている多胡運輸とは、いったいどんな企業なのでしょうか。
■多胡運輸の企業情報について、東京商工リサーチによる資料があります。
**********
企業番号:270271104
商号:多胡運輸(株)(タゴウンユ)
所在地:〒370-3104
評点:W点
電話番号:027-360-7333
設立:平成4年11月
資本金:12,000(千円)
代表者:多胡茂美(タゴ シゲミ)(男)
生年月日:昭和30年6月9日
役員:(取)多胡ヨウ子
営業種目:一般貨物自動車運送(100%)
大株主:多胡茂美、多胡ヨウ子
取引銀行:しののめ信金(六郷)
仕入先:関東いすゞ自動車、赤尾商事
販売先:北部運送、赤尾商事
業績:決算期/売上(千円)
2004年8月/230,000
2005年8月/225,000
2006年8月/230,000
2007年8月/231,000
業界内売上高順位:業種コード:44(業種:道路貨物運送業)
全国12235社/23793社
県内 207社/ 379社
申告所得:不詳
収益指標:売上増加率:100.43%
一人当たり月売上高(千円):642(※ということは従業員は30名か)
事業概況:業暦33年(?)の一般貨物運送業者で、トラック30台を保有し受注基盤も確立。
更新年月日:2008年1月25日
**********
■こうしてみると、多胡運輸株式会社の年間売上はここ数年2.2~2.3億円で推移しており、この売上高を見る限り、仮に首都高速道路会社が45億円の損害賠償請求をしても、支払える可能性はゼロと見られます。このことは、既に首都高速道路会社も調査済みと思われます。10月14日に記者会見した佐々木克己社長が「ガソリン運搬を依頼した荷主にも賠償請求できるかどうかも検討する」という方針を示した背景には、当然このことを念頭にしたはずです。それにも関わらず、記者会見で賠償請求の方針を明らかにした首都高速道路会社の目算はどこにあるのでしょう。
一つには、多胡運輸が加入している関東交通共済協同組合の共済を使って賠償額が支払われる可能性です。対物無制限の任意保険では、原状回復義務によって当事者が賠償の責任を負ってしまった場合、それがモノであれば、その物損の回復にかかる費用を法的に支払う義務が被保険者に生じた場合、保険の適用内容と過失割合に応じて支払ってもらえます。
■ところが、今回の場合、事故の原因が、多胡運輸の過失なのか、首都高速道路の構造にも起因するのか、事故発生原因について警察が何も発表しないため、一般人には何も分かりません。唯一、10月10日(金)に国交省関東運輸局が、多胡運輸に出した行政処分に関する報道発表をみると、事故を端緒として運輸局が特別監査を行った結果、運転手への指導・監督不足や過労運転の防止義務違反、初任者に対する指導教育が実施されていないなど計8件の違反が分かったことから、多胡運輸の過失割合は少なくないでしょう。関東運輸局は「本社営業所の車両5台を55日間使用停止とし、運行管理者の一人である多胡社長に資格者証の返納を命じた」からです。
また、今回の場合、事故によって起きた火災に関しての賠償となります。自動車保険の多くは、火災が事故によって起きたとしても保険の適用外となっているケースが多く、火災によって生じた二次災害は任意保険が適用されない可能性が高いことです。このため、保険での全額カバーが当てにできないので、首都高速道路会社も、多胡運輸に支払を求める姿勢をとらざるを得ないからです。
しかし、前述のとおり、年間売上げ2億円余りの多胡運輸に対して、仮に45億円の損害賠償請求が出されれば、多胡運輸は直ちに倒産するでしょう。したがって、首都高速道路では、賠償能力のある会社に連帯責任者として請求することを考えていることでしょう。その場合、元請のホクブ運送と、荷主の出光興産が念頭に挙げられます。
■事実、地元の群馬県の輸送業者の間では、「下請の多胡運輸の賠償については、元請のホクブ運送が多胡運輸を吸収して、その賠償を請け負うことになるのだろう」という噂が囁かれています。このホクブ運送は正式社名を「ホクブトランスポート」といいます。同社のホームページ(事故直後から閉鎖中)に載っている会社概要は次のとおりです。
**********
社名:ホクブトランスポート株式会社
本社所在地:〒370-0803 群馬県高崎市大橋町51番地
TEL:027-361-3977(代)
FAX:027-361-7697
MAIL:info@hkb-trp.com
創立:昭和32年2月
代表取締役社長:梅山立之(うめやま・たつゆき)
資本金:6千万円
従業員数:グループ総員数 1,100人超
車両台数:グループ総台数 1,000台超
営業所:
関東事業本部:北関東エリア(群馬支店、栃木支店、長野営業所※)、南関東エリア(埼玉支店、北東京支店、千葉営業所※)
東北事業本部(仙台支店、小名浜営業所、青森営業所、八戸営業所)
協力会社:47社(関東32社、東北10社、中部5社)
主要顧客先:
アストモスエネルギー株式会社・出光興産株式会社
伊藤忠エネクス株式会社・岩谷物流株式会社
兼松ペトロ株式会社・三愛石油株式会社
シナネン株式会社・大陽日酸株式会社
橋本産業株式会社・マルハ産業株式会社
丸紅ガスエナジー株式会社・丸紅エネルギー株式会社
三井液化ガス株式会社 他 燃料油・液化石油ガス販売各社
取引銀行:
群馬銀行・みずほ銀行・三井住友銀行・東和銀行・商工中金・八十二銀行・足利銀行・りそな銀行
**********
売上げは定かでありませんが、出光興産及びその関係会社をはじめ、日本のエネルギー分野をリードする企業各社の配送を引き受けており、その商権は目を見張るものがあります。さらに重要なことは、この会社と地元大物政治家との繋がりが非常に強いことです。そのことにより、事故発生直後に突然閉鎖された同社のホームページや、多胡運輸の元請会社であるにも関わらす全く表に出ようとしない対応が、さまざまな憶測を生んでいます。
■さらに不思議なのは、荷主の出光興産の対応です。ネット情報によれば、首都高の炎上事故の直後、8月4日(月)に、出光興産広報担当者に電話で問い合わせたところ「事故を起こしたのは弊社のカンバンローリーに間違いない」「事故を起こしたのは二次請け運送会社(所謂、孫受け会社)」「出光としては今の所、対策を協議中なるも現時点では関連するコメントは謝罪を含め、一切発表していない」「謝罪コメント等は、昨今の親企業としての姿勢を厳しく問われる世論風潮等を考慮しつつ、断言は出来ないがこれから今後の弊社の対応姿勢を検討する」という回答があったということです。ところが、その後、現在に至るまで、出光興産は沈黙を続けたままです。これは一体どうしたことでしょうか。
出光興産の会社概要を見ると、日本のエネルギー分野における代表的な民族資本企業であることは一目瞭然です。
**********
商号:出光興産株式会社
本社:〒100-8321 東京都千代田区丸の内3-1-1
代表取締役社長:天坊 昭彦
設立年月日:1940年3月30日(創業1911年6月20日)
資本金:1,086億円(2008年3月末現在)
従業員:7,503名(2008年3月末現在)連結
製油所:北海道・千葉・愛知・徳山
工場:千葉・徳山
国内支店:18ケ所(2008年3月末現在)
海外事務所:36都市(2008年3月末現在)連結
売上高:3兆8,643億円(2007年度)連結
**********
広報やCSRにも熱心で、コンプライアンスやコーポレート・ガバナンスもしっかりしている、この名門企業が、どういうわけか沈黙を続けていることについて、尋常ではないと感じている人はたくさんいることでしょう。当会もそうです。
おそらく、出光興産としては、事故の背景や社会的企業責任の立場から、何らかのコメントを発したかったに違いありません。しかし、ついに踏み切れなかった理由は、よほど多胡運輸や、多胡運輸の後ろ盾になっている元請の運送会社やその背後にある何かを慮ってのことではないかと、巷間ではもっぱら囁かれているのです。
■資本金1200万円、従業員30名、年間売上2億円余りの運送会社がやらかした大事故に関して、地元大物政治家と強いパイプを持つ資本金6億円のホクブトランスポートや、日本の財界に強い影響力を持つ資本金1000億円あまりの大企業が一言も発声できない状況は、尋常ではありません。
しかし、安中市土地開発公社51億円巨額詐欺横領事件の発覚から幕引きまでの顛末を体験した安中市民にとっては、別段、不思議なことではありません。公社51億円横領事件では、タゴ一族に対して、安中市も群馬県も群馬銀行も、警察も検察も税務署も裁判所でさえも、事件の真相に踏み込めず、結局尻拭いを、一番、事件とは無関係の一般市民に押し付ける結果とされてしまいました。
司直はなぜ「公社事件の関係者の平穏な生活を守る」必要があるのか。その理由は、警察の捜査でも14億円以上、当会の調査では20億円以上のカネが使途不明金として、闇に消えたことにより、その闇の中で蠢いていた巨額のカネにたかった連中が司直を黙らせるほどの権力を行使できる立場にあったためだと考えられます。
■公社51億円横領事件が発覚した直後、当会には複数の市民から、事件の背景には地元の大物政治家が関与しているとの情報がたびたび寄せられました。事件直後、地元にばら撒かれた怪文書にも、それを示唆する内容が載っていました。
にもかかわらず、公社事件が元職員・多胡邦夫の単独犯行として幕引きが行なわれ、事件に関係した政治関係者は誰一人責任を問われませんでした。
平成6年の10月から12月まで、多胡邦夫が安中市役所からエリートとして選抜されて、東京の六本木にある自治大学校に研修派遣された際に、赤坂の料亭で、多胡邦夫を激励する大宴会が行なわれ、安中市の市議会議員が多数参加し、ツケは全部多胡が支払ったという情報は、今でも安中市民の間で語り草になっています。しかし、結局、政治関係者で警察の調書を取られたのは、多胡邦夫が保護者会長をしていた学習塾の経営者でもある安中市議(当時)ただひとりだけで、しかもその調書さえ、平穏な生活を脅かすという理由で、検察は市民に開示しません。
このことは、公社51億円事件の真相を隠そうとする勢力が、司直をもコントロールできることを示しているというのが当会の分析結果です。
■51億円事件の真相が、市民に発覚するのを極端に警戒する勢力は、事件の真相究明、責任の所在、再発防止よりも、真相を闇に葬り、事件関係者の平穏な生活を最優先しようとしました。今回、多胡邦夫の親族が経営する運送会社が、事件後、どうして存続できたのか。
奇しくも、8月3日に発生した首都高でのタンクローリー横転炎上事故で、そうした勢力の存在が浮き彫りになりました。そして、その後、現在に至る経緯を見ると、13年前の巨額横領事件のときと同じく、多胡一族を手厚く保護することにより、51億円横領事件の真相を必死に隠し通して、身の保全を図ろうとする強い意向を感じざるを得ません。
新聞には、役所を舞台にした横領事件のニュースが毎週のように報道されます。しかし、横領額が数十億円ともなると、容疑者のほうが立場が強くなることがあることを、安中市民は痛感させられています。
今回、45億円余の損害賠償請求の意向を表明した首都高速道路会社が、きちんと原因者である多胡運輸に請求して、損害額を回収できるのかどうか、引続き、当会ではさまざまな角度から分析を加えいきたいと思います。
【ひらく会特別調査班】
写真上:果たして首都高速道路会社は、多胡運輸を取り巻くバリヤーを突破できるのだろうか。
首都高速道路会社は、この事故による被害額を現時点で45億円以下と推定し、減収分については、さらに綿密な精査を加えて、遅くとも来年3月末までに、事故の起因者の多胡運輸に請求するとしています。
これほどの大事故を起こしながら、全く謝罪会見もせず、一見、普段と変わりなく営業を続けている多胡運輸とは、いったいどんな企業なのでしょうか。
■多胡運輸の企業情報について、東京商工リサーチによる資料があります。
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企業番号:270271104
商号:多胡運輸(株)(タゴウンユ)
所在地:〒370-3104
評点:W点
電話番号:027-360-7333
設立:平成4年11月
資本金:12,000(千円)
代表者:多胡茂美(タゴ シゲミ)(男)
生年月日:昭和30年6月9日
役員:(取)多胡ヨウ子
営業種目:一般貨物自動車運送(100%)
大株主:多胡茂美、多胡ヨウ子
取引銀行:しののめ信金(六郷)
仕入先:関東いすゞ自動車、赤尾商事
販売先:北部運送、赤尾商事
業績:決算期/売上(千円)
2004年8月/230,000
2005年8月/225,000
2006年8月/230,000
2007年8月/231,000
業界内売上高順位:業種コード:44(業種:道路貨物運送業)
全国12235社/23793社
県内 207社/ 379社
申告所得:不詳
収益指標:売上増加率:100.43%
一人当たり月売上高(千円):642(※ということは従業員は30名か)
事業概況:業暦33年(?)の一般貨物運送業者で、トラック30台を保有し受注基盤も確立。
更新年月日:2008年1月25日
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■こうしてみると、多胡運輸株式会社の年間売上はここ数年2.2~2.3億円で推移しており、この売上高を見る限り、仮に首都高速道路会社が45億円の損害賠償請求をしても、支払える可能性はゼロと見られます。このことは、既に首都高速道路会社も調査済みと思われます。10月14日に記者会見した佐々木克己社長が「ガソリン運搬を依頼した荷主にも賠償請求できるかどうかも検討する」という方針を示した背景には、当然このことを念頭にしたはずです。それにも関わらず、記者会見で賠償請求の方針を明らかにした首都高速道路会社の目算はどこにあるのでしょう。
一つには、多胡運輸が加入している関東交通共済協同組合の共済を使って賠償額が支払われる可能性です。対物無制限の任意保険では、原状回復義務によって当事者が賠償の責任を負ってしまった場合、それがモノであれば、その物損の回復にかかる費用を法的に支払う義務が被保険者に生じた場合、保険の適用内容と過失割合に応じて支払ってもらえます。
■ところが、今回の場合、事故の原因が、多胡運輸の過失なのか、首都高速道路の構造にも起因するのか、事故発生原因について警察が何も発表しないため、一般人には何も分かりません。唯一、10月10日(金)に国交省関東運輸局が、多胡運輸に出した行政処分に関する報道発表をみると、事故を端緒として運輸局が特別監査を行った結果、運転手への指導・監督不足や過労運転の防止義務違反、初任者に対する指導教育が実施されていないなど計8件の違反が分かったことから、多胡運輸の過失割合は少なくないでしょう。関東運輸局は「本社営業所の車両5台を55日間使用停止とし、運行管理者の一人である多胡社長に資格者証の返納を命じた」からです。
また、今回の場合、事故によって起きた火災に関しての賠償となります。自動車保険の多くは、火災が事故によって起きたとしても保険の適用外となっているケースが多く、火災によって生じた二次災害は任意保険が適用されない可能性が高いことです。このため、保険での全額カバーが当てにできないので、首都高速道路会社も、多胡運輸に支払を求める姿勢をとらざるを得ないからです。
しかし、前述のとおり、年間売上げ2億円余りの多胡運輸に対して、仮に45億円の損害賠償請求が出されれば、多胡運輸は直ちに倒産するでしょう。したがって、首都高速道路では、賠償能力のある会社に連帯責任者として請求することを考えていることでしょう。その場合、元請のホクブ運送と、荷主の出光興産が念頭に挙げられます。
■事実、地元の群馬県の輸送業者の間では、「下請の多胡運輸の賠償については、元請のホクブ運送が多胡運輸を吸収して、その賠償を請け負うことになるのだろう」という噂が囁かれています。このホクブ運送は正式社名を「ホクブトランスポート」といいます。同社のホームページ(事故直後から閉鎖中)に載っている会社概要は次のとおりです。
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社名:ホクブトランスポート株式会社
本社所在地:〒370-0803 群馬県高崎市大橋町51番地
TEL:027-361-3977(代)
FAX:027-361-7697
MAIL:info@hkb-trp.com
創立:昭和32年2月
代表取締役社長:梅山立之(うめやま・たつゆき)
資本金:6千万円
従業員数:グループ総員数 1,100人超
車両台数:グループ総台数 1,000台超
営業所:
関東事業本部:北関東エリア(群馬支店、栃木支店、長野営業所※)、南関東エリア(埼玉支店、北東京支店、千葉営業所※)
東北事業本部(仙台支店、小名浜営業所、青森営業所、八戸営業所)
協力会社:47社(関東32社、東北10社、中部5社)
主要顧客先:
アストモスエネルギー株式会社・出光興産株式会社
伊藤忠エネクス株式会社・岩谷物流株式会社
兼松ペトロ株式会社・三愛石油株式会社
シナネン株式会社・大陽日酸株式会社
橋本産業株式会社・マルハ産業株式会社
丸紅ガスエナジー株式会社・丸紅エネルギー株式会社
三井液化ガス株式会社 他 燃料油・液化石油ガス販売各社
取引銀行:
群馬銀行・みずほ銀行・三井住友銀行・東和銀行・商工中金・八十二銀行・足利銀行・りそな銀行
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売上げは定かでありませんが、出光興産及びその関係会社をはじめ、日本のエネルギー分野をリードする企業各社の配送を引き受けており、その商権は目を見張るものがあります。さらに重要なことは、この会社と地元大物政治家との繋がりが非常に強いことです。そのことにより、事故発生直後に突然閉鎖された同社のホームページや、多胡運輸の元請会社であるにも関わらす全く表に出ようとしない対応が、さまざまな憶測を生んでいます。
■さらに不思議なのは、荷主の出光興産の対応です。ネット情報によれば、首都高の炎上事故の直後、8月4日(月)に、出光興産広報担当者に電話で問い合わせたところ「事故を起こしたのは弊社のカンバンローリーに間違いない」「事故を起こしたのは二次請け運送会社(所謂、孫受け会社)」「出光としては今の所、対策を協議中なるも現時点では関連するコメントは謝罪を含め、一切発表していない」「謝罪コメント等は、昨今の親企業としての姿勢を厳しく問われる世論風潮等を考慮しつつ、断言は出来ないがこれから今後の弊社の対応姿勢を検討する」という回答があったということです。ところが、その後、現在に至るまで、出光興産は沈黙を続けたままです。これは一体どうしたことでしょうか。
出光興産の会社概要を見ると、日本のエネルギー分野における代表的な民族資本企業であることは一目瞭然です。
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商号:出光興産株式会社
本社:〒100-8321 東京都千代田区丸の内3-1-1
代表取締役社長:天坊 昭彦
設立年月日:1940年3月30日(創業1911年6月20日)
資本金:1,086億円(2008年3月末現在)
従業員:7,503名(2008年3月末現在)連結
製油所:北海道・千葉・愛知・徳山
工場:千葉・徳山
国内支店:18ケ所(2008年3月末現在)
海外事務所:36都市(2008年3月末現在)連結
売上高:3兆8,643億円(2007年度)連結
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広報やCSRにも熱心で、コンプライアンスやコーポレート・ガバナンスもしっかりしている、この名門企業が、どういうわけか沈黙を続けていることについて、尋常ではないと感じている人はたくさんいることでしょう。当会もそうです。
おそらく、出光興産としては、事故の背景や社会的企業責任の立場から、何らかのコメントを発したかったに違いありません。しかし、ついに踏み切れなかった理由は、よほど多胡運輸や、多胡運輸の後ろ盾になっている元請の運送会社やその背後にある何かを慮ってのことではないかと、巷間ではもっぱら囁かれているのです。
■資本金1200万円、従業員30名、年間売上2億円余りの運送会社がやらかした大事故に関して、地元大物政治家と強いパイプを持つ資本金6億円のホクブトランスポートや、日本の財界に強い影響力を持つ資本金1000億円あまりの大企業が一言も発声できない状況は、尋常ではありません。
しかし、安中市土地開発公社51億円巨額詐欺横領事件の発覚から幕引きまでの顛末を体験した安中市民にとっては、別段、不思議なことではありません。公社51億円横領事件では、タゴ一族に対して、安中市も群馬県も群馬銀行も、警察も検察も税務署も裁判所でさえも、事件の真相に踏み込めず、結局尻拭いを、一番、事件とは無関係の一般市民に押し付ける結果とされてしまいました。
司直はなぜ「公社事件の関係者の平穏な生活を守る」必要があるのか。その理由は、警察の捜査でも14億円以上、当会の調査では20億円以上のカネが使途不明金として、闇に消えたことにより、その闇の中で蠢いていた巨額のカネにたかった連中が司直を黙らせるほどの権力を行使できる立場にあったためだと考えられます。
■公社51億円横領事件が発覚した直後、当会には複数の市民から、事件の背景には地元の大物政治家が関与しているとの情報がたびたび寄せられました。事件直後、地元にばら撒かれた怪文書にも、それを示唆する内容が載っていました。
にもかかわらず、公社事件が元職員・多胡邦夫の単独犯行として幕引きが行なわれ、事件に関係した政治関係者は誰一人責任を問われませんでした。
平成6年の10月から12月まで、多胡邦夫が安中市役所からエリートとして選抜されて、東京の六本木にある自治大学校に研修派遣された際に、赤坂の料亭で、多胡邦夫を激励する大宴会が行なわれ、安中市の市議会議員が多数参加し、ツケは全部多胡が支払ったという情報は、今でも安中市民の間で語り草になっています。しかし、結局、政治関係者で警察の調書を取られたのは、多胡邦夫が保護者会長をしていた学習塾の経営者でもある安中市議(当時)ただひとりだけで、しかもその調書さえ、平穏な生活を脅かすという理由で、検察は市民に開示しません。
このことは、公社51億円事件の真相を隠そうとする勢力が、司直をもコントロールできることを示しているというのが当会の分析結果です。
■51億円事件の真相が、市民に発覚するのを極端に警戒する勢力は、事件の真相究明、責任の所在、再発防止よりも、真相を闇に葬り、事件関係者の平穏な生活を最優先しようとしました。今回、多胡邦夫の親族が経営する運送会社が、事件後、どうして存続できたのか。
奇しくも、8月3日に発生した首都高でのタンクローリー横転炎上事故で、そうした勢力の存在が浮き彫りになりました。そして、その後、現在に至る経緯を見ると、13年前の巨額横領事件のときと同じく、多胡一族を手厚く保護することにより、51億円横領事件の真相を必死に隠し通して、身の保全を図ろうとする強い意向を感じざるを得ません。
新聞には、役所を舞台にした横領事件のニュースが毎週のように報道されます。しかし、横領額が数十億円ともなると、容疑者のほうが立場が強くなることがあることを、安中市民は痛感させられています。
今回、45億円余の損害賠償請求の意向を表明した首都高速道路会社が、きちんと原因者である多胡運輸に請求して、損害額を回収できるのかどうか、引続き、当会ではさまざまな角度から分析を加えいきたいと思います。
【ひらく会特別調査班】
写真上:果たして首都高速道路会社は、多胡運輸を取り巻くバリヤーを突破できるのだろうか。