■安中市土地開発公社を舞台に15年間もの間、長期配置された元職員タゴ邦夫の単独犯行として、51億円余の巨悪横領事件が市民に明らかにされてから13年5ヶ月の歳月が経過しました。
事件発覚当時、あれほど動転していたタゴ事件関係者も、元職員タゴの単独犯行として、警察や検察が事件を幕引きしてくれたおかげで、平穏な生活が脅かされることなく、いまやすっかり落ち着きを取り戻してしまいました。それどころか、タゴ邦夫が奔放に公金をばら撒いていた時代を懐かしむ声さえ聞こえてくる始末です。やはり、事件の真相を究明しないまま、責任の所在を明らかにしないまま、事件を幕引きすると、公金の支出へのチェックがおろそかになり、昔の体質が再び頭をもたげてくることは、今回の群馬県の不正経理問題でも証明されています。
■安中市の場合、さらに懸念されるのは、タゴ邦夫と関係の深かった御仁が首長をしていることです。当時、事件発覚直前に、市議会議員から県議会議員に鞍替えしたため、この事件の傍観者として立ち振る舞えたのをよいことに、事件については何ひとつコメントしなかった人物が、皮肉にも、安中市と土地開発公社が、群馬銀行と交わした和解条項の最初の節目である10年目の見直し時期に、安中市長として対応することになりました。
結論は目に見えています。自分自身を含め、タゴ51億事件の関係者の平穏な生活を守るためには、和解金を公金で支払い続ける方法をとるに違いありません。そう懸念していた市民の予測どおり、案の定、群馬銀行への和解金支払を、公金で支払うことを提案していたことが、11月4日に判明したのです。
■11月5日の各紙は、このことについて次のように報じました。
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安中巨額詐欺 「年2000万円を10年」和解から10年 群銀と再協議 市が支払い提案
安中市の元職員による土地開発公社をめぐる巨額詐欺事件=豆辞典=で、同市は11月4日、群馬銀行に対して「再び今後10年間、毎年最低2千万円を支払う」とする提案をしていることを、市議会全員協議会で明らかにした。公社と市が連帯して同行に対し24億5千万円を支払う和解成立から10年が経過し、市は同行と今後の支払いについて協議しており、市議会に経過を報告した。
1998年の群馬銀行との和解条項では、①公社と市は初回に4億円、以降毎年12月に最低2千万円を支払う②10年後に再協議を行い、支払金額を決める-などとなっている。
市の説明によると、10年目となる今年、市と同行は4月から協議を重ねてきた。市側は「市民世論は10年で(支払いは)終わると思っている」「3億円支払うので本事案は終わりにしてほしい」などと提案したが、同行側は「市、公社は健全経営を行っており、債務免除はできない。むしろ(支払金額を)増額してもらいたい」などと主張したという。
市側は、これまでと同様に毎年2千万円以上を支払うことについて、「最大限努力をした提案。受け入れてほしい 」として、先月20日、公社理事長(岡田義弘市長)名で同行に文書で送付した。一方、同行は「役員会を開いてから回答する」としているという。
市側は今回の経緯について、市議会12月定例会終了後に市民に対し説明会を開く予定。
<豆辞典>【安中市の巨額詐欺事件】
1995年、元市職員が公文書を偽造するなどして、群馬銀行が公社に振り込んだ事業資金などをだまし取ったとして逮捕ざれた。犯行総額は51億円。同年10月、銀行は元金33億8600万円や利息などの返済を求め民事提訴。98年、市と公社が銀行に24億5千万円を支払う和解が成立した。
(上毛新聞2008年11月5日朝刊)
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和解金残金支払い 全員協議会へ報告 詐欺事件で安中市
安中市は11月4日、1995年に発覚した市土地開発公社職員による巨額詐欺事件をめぐり、公社が被害者の群馬銀行に分割して支払っている和解金について、今後10年間も現在と同様に年2千万円ずつ支払う見通しとなったことを市議会全員協議会に報告した。
事件をめぐっては、群銀が被害額約33億8千万円の支払いなどを求め、公社と市を提訴。群銀が約9億3千万円を免除し、残り24億5千万円を公社が支払い、市が連帯保証することで和解した。公社は支払い初年度の98年度に4億円を、翌年度から年2千万円を分割して支払い、10年ごとに支払額などを協議することになっていた。このため、今後10年間の支払方法などを協議するため後者が群銀側に協議書を送付するなどしていた。(樋口聡)
(東京新聞2008年11月5日朝刊)
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■岡田市長は、2006年4月の合併市長選挙では、このタゴ事件のことについては、一言も公約で触れませんでした。もっとも、合併選挙では「合併特例債を使いません」「新庁舎は作りません。今ある市庁舎を使います」などと公約しておきながら、就任3年目の現在、特例債は全額使うべく手当たり次第に借りまくる姿勢を示しており、市庁舎は耐震を名目に補強ではなく建て替えをすると先月10月24日に発表したばかりです。もともと、岡田市長は二枚舌が持ち味ですから、その公約は「はがす為にある膏薬のようだ」として、最初から信じていない市民も多いようです。
■さて、報道によれば、安中市は2008年4月から群馬銀行と協議を重ねてきた中で、「市民世論は10年で本件の支払は終わると思っている」と提案していました。
実際の市民世論は、「本件の損害については、タゴ邦夫及びその一族や、タゴ事件関係者である公社役員ら責任のある立場の者たちが賠償すると思っている」というのが本当なのに、本件の支払元がこれまで公金だった事実について、安中市はなぜ触れようとしないのでしょうか。
また、安中市は「3億円支払うので本事案は終わりにしてほしい」と提案していました。これを知った市民は、首を傾げています。「いったいどこに3億円を支払える原資があるのだろうか」と。
■昨年6月4日の報道によると、安中市土地開発公社の財政事情について、次のように発表されています。
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巨額詐欺 負債重たく 安中市土地開発公社 06年度赤字転落 年2000万円返済 市負担の恐れ
安中市が全額出資する市土地開発公社(理事長・岡田義弘市長)は06年度決算をまとめた。当期損益は200万円の赤字に転落した。95年に発覚した元職員による巨額詐欺事件で抱えた負債を年2千万円ずつ返済し、安定経営が求められるなかで、厳しい1年となった。決算は6月5日から始まる定例市議会に報告される。
公社によると、06年度は販売を見込んでいた宅地や工業団地が売れず、売上げは当初の9億9千万円を大きく下回る1450万円で、当期損失は200万円となった。公社としての通常の業務以外に、大きくのしかかるのが巨額詐欺事件の負の遺産だ。公社が銀行に支払うことになった和解金24億5千万円は、98年度に4億円を返済し、以降は公社の収益から年2千万円ずつ返済している。それが、赤字だった06年度は、金融機関から新たに借りた資金で返済したのが実態だ。借金の一部は、返済期限の延長も受け入れてもらっているという。
和解金の06年度末残高は、なお18億9千万円に上り、「本業」である公有地取得や土地造成などに伴う借金12億6千万円を大きく上回る。(朝日新聞2007年6月4日群馬版)
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■安中市土地開発公社が、この一年間に3億円の利益を上げたのでしょうか。公社は公益法人ですから、もともと多額の利益を上げることが出来ない仕組みになっています。そうなると、この3億円の原資がどこにあるのか気になります。「まさか、このカネも公社が金融機関から借りて、長期返済するつもりなのではないか」・・・安中市の考えることは、市民の想像を常に超えるので予断を許しません。
確かなことは、タゴ事件で使途不明金として処理されている14億円余のカネを、タゴ事件関係者から回収して支払に充当するとは到底思えないことです。本来、タゴ事件関係者が責任をとるべきなのですが、タゴ邦夫と親しかった岡田市長が、そのような対応をするはずもありません。
■一方、被害者としてタゴ事件に関わった群馬銀行側は「市、公社は健全経営を行なっており、債務免除はできない」「むしろ、支払金額を増額してもらいたい」と主張していますが、これにも理由があります。
群銀としては、和解で9億4千万円近い金額をチャラにして、しかも、和解に伴い、公社が借り入れていた金額のうち、水増しされた金額以外の分(数億円とみられる)も免除し、安中市は、返済義務を免除された後者の金額を、初回の和解金4億円として充当し、群銀に支払った形をとったと見られるからです。
群馬銀行は、1998年12月の和解当時、「この和解に応じなければ、安中市は財政再建団体に転落していたはずだ」と豪語していました。それだけに、これほど、安中市に便宜を図ってやったのだから、この期に及んで、和解金を今後免除してくれ」などという安中市の身勝手な提案を、「はい、そうですね」と呑むわけにはいかない事情があるのかもしれません。
■あるいは、群銀は、安中市が10月20日付けで公社理事長でもある岡田義弘市長が送付した文書に対して「役員会を開いてから回答する」と言っていることから、まずは否定的な見解を安中市にぶつけておきながら、役員会で、あっと言わせる回答を用意するのかもしれません。
しかし、タイミングの悪いことに、サブプライムローンで揺れる経済不安は、金融機関にも重大な影を落としています。
103年ローンの残り93年分の18億6千万円を棒引きにすることは、群銀にとって、社内的にも、株主や他の自治体など対外的取引先の手前もあり、難しい事情を抱えていると思われます。
■ところで、10年前の安中市と群馬銀行との和解条項は、次の内容です。平成10年(1998年)12月1日に、安中市議会全員協議会で安中当局が初めて明らかにしました。
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【和解条項】
一 原告と被告らは、友好的且つ健全な金融取引を通じて、よりよい地域社会づくりの実現に向け努力することを目的とし、本件事案の特殊性及び被告らの財務負担の軽減ひいては住民福祉に配慮した裁判所の和解勧告を尊重し、互譲の精神をもって、以下のとおり和解する。
二 被告安中市土地開発公社は主債務者として、被告安中市は連帯保証人として、原告に対し、連帯して、原告請求にかかる本件借入金元金33億8618万円2425円及び本日までに発生した利息損害金全額相当額の支払義務あることを認める。
三 原告は、被告らに対し、本日、前項の債務のうち借入金元金9億3618万2425円及び前項の利息損害金全額相当額の支払いを免除する。
四 被告らは、連帯して、原告に対し、前項の免除後の残債務金24億5000万円を、次のとおり分割して、原告安中支店における群馬銀行安中支店長名義別段預金口座番号0185582に振り込んで支払う。但し、残債務金には利息を付さない。
1 平成10年11月25日限り金4億円
2 平成11年から10年間は、毎年12月25日限り金2000万円宛
3 前号後の10年間の残金支払方法については、原告と被告らが前号の最終支払期日までに、その時の被告らの財務状況並びに一般経済情勢等を勘案のうえ、前号の年間支払額を下回らない範囲で協議して定め、以降も残金支払済みまで同様とする。
五 被告らが前項1及び2の各分担金の支払いを1回でも1か月以上遅滞したときは、被告らは当然に期限の利益を失い、残額及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日から支払済みまでに年14パーセントの割合による損害金を一括して直ちに支払う。
六 被告安中市土地開発公社は、別紙供託金一覧表記載の供託金を取り戻すものとし、原告はこれに異議はない。
七 原告はその余の請求を放棄する。
八 原告と被告らは、本件に関し、本和解条項に定める他には何ら債権債務のないことを相互に確認する。
九 訴訟費用は、各自の負担とする。
**********
安中市土地開発公社元職員による巨悪横領事件をめぐり、平成7年10月19日に、群馬銀行が安中市と公社を相手に起こした貸金・保証履行請求訴訟は、3年1ヶ月余りの係争の果てに、上記のとおり和解という形で、平成10年(1998年)12月9日に終結しましたが、ご覧のとおり、実質的には、安中市・公社側の敗訴に近いものです。
■それにしても、安中市側が必死になって103年ローンの支払終了に固執して、群銀の機嫌をとろうとしているのに対し、群馬銀行側が「市・公社は健全経営を行なっており、債務免除は出来ない」と主張しているのをみると、群銀はよほど、安中市の体質を知り抜いていると見られます。
なぜなら、群馬銀行は、タゴ事件後、安中市のメーンバンクとして磐石の地位が保証されており、安中市の公金の管理や出納を独占的に任されているから、安中市や土地開発公社の財政事情は、隅々まで熟知しているからです。
自分の財布の中身が相手に全部知られていて、しかも、タゴ事件の真相についてもマル秘情報を握られている安中市としては、最初から群馬銀行のペースに従わざるを得ないのかもしれません。
当会では、さっそく、今回の安中市と群馬銀行との本件に関する協議の過程をチェックすべく、情報公開請求を安中市と土地開発公社に行なう予定です。
群馬銀行とタゴ事件の関係については、別途報告します。
【ひらく会情報部】
事件発覚当時、あれほど動転していたタゴ事件関係者も、元職員タゴの単独犯行として、警察や検察が事件を幕引きしてくれたおかげで、平穏な生活が脅かされることなく、いまやすっかり落ち着きを取り戻してしまいました。それどころか、タゴ邦夫が奔放に公金をばら撒いていた時代を懐かしむ声さえ聞こえてくる始末です。やはり、事件の真相を究明しないまま、責任の所在を明らかにしないまま、事件を幕引きすると、公金の支出へのチェックがおろそかになり、昔の体質が再び頭をもたげてくることは、今回の群馬県の不正経理問題でも証明されています。
■安中市の場合、さらに懸念されるのは、タゴ邦夫と関係の深かった御仁が首長をしていることです。当時、事件発覚直前に、市議会議員から県議会議員に鞍替えしたため、この事件の傍観者として立ち振る舞えたのをよいことに、事件については何ひとつコメントしなかった人物が、皮肉にも、安中市と土地開発公社が、群馬銀行と交わした和解条項の最初の節目である10年目の見直し時期に、安中市長として対応することになりました。
結論は目に見えています。自分自身を含め、タゴ51億事件の関係者の平穏な生活を守るためには、和解金を公金で支払い続ける方法をとるに違いありません。そう懸念していた市民の予測どおり、案の定、群馬銀行への和解金支払を、公金で支払うことを提案していたことが、11月4日に判明したのです。
■11月5日の各紙は、このことについて次のように報じました。
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安中巨額詐欺 「年2000万円を10年」和解から10年 群銀と再協議 市が支払い提案
安中市の元職員による土地開発公社をめぐる巨額詐欺事件=豆辞典=で、同市は11月4日、群馬銀行に対して「再び今後10年間、毎年最低2千万円を支払う」とする提案をしていることを、市議会全員協議会で明らかにした。公社と市が連帯して同行に対し24億5千万円を支払う和解成立から10年が経過し、市は同行と今後の支払いについて協議しており、市議会に経過を報告した。
1998年の群馬銀行との和解条項では、①公社と市は初回に4億円、以降毎年12月に最低2千万円を支払う②10年後に再協議を行い、支払金額を決める-などとなっている。
市の説明によると、10年目となる今年、市と同行は4月から協議を重ねてきた。市側は「市民世論は10年で(支払いは)終わると思っている」「3億円支払うので本事案は終わりにしてほしい」などと提案したが、同行側は「市、公社は健全経営を行っており、債務免除はできない。むしろ(支払金額を)増額してもらいたい」などと主張したという。
市側は、これまでと同様に毎年2千万円以上を支払うことについて、「最大限努力をした提案。受け入れてほしい 」として、先月20日、公社理事長(岡田義弘市長)名で同行に文書で送付した。一方、同行は「役員会を開いてから回答する」としているという。
市側は今回の経緯について、市議会12月定例会終了後に市民に対し説明会を開く予定。
<豆辞典>【安中市の巨額詐欺事件】
1995年、元市職員が公文書を偽造するなどして、群馬銀行が公社に振り込んだ事業資金などをだまし取ったとして逮捕ざれた。犯行総額は51億円。同年10月、銀行は元金33億8600万円や利息などの返済を求め民事提訴。98年、市と公社が銀行に24億5千万円を支払う和解が成立した。
(上毛新聞2008年11月5日朝刊)
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和解金残金支払い 全員協議会へ報告 詐欺事件で安中市
安中市は11月4日、1995年に発覚した市土地開発公社職員による巨額詐欺事件をめぐり、公社が被害者の群馬銀行に分割して支払っている和解金について、今後10年間も現在と同様に年2千万円ずつ支払う見通しとなったことを市議会全員協議会に報告した。
事件をめぐっては、群銀が被害額約33億8千万円の支払いなどを求め、公社と市を提訴。群銀が約9億3千万円を免除し、残り24億5千万円を公社が支払い、市が連帯保証することで和解した。公社は支払い初年度の98年度に4億円を、翌年度から年2千万円を分割して支払い、10年ごとに支払額などを協議することになっていた。このため、今後10年間の支払方法などを協議するため後者が群銀側に協議書を送付するなどしていた。(樋口聡)
(東京新聞2008年11月5日朝刊)
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■岡田市長は、2006年4月の合併市長選挙では、このタゴ事件のことについては、一言も公約で触れませんでした。もっとも、合併選挙では「合併特例債を使いません」「新庁舎は作りません。今ある市庁舎を使います」などと公約しておきながら、就任3年目の現在、特例債は全額使うべく手当たり次第に借りまくる姿勢を示しており、市庁舎は耐震を名目に補強ではなく建て替えをすると先月10月24日に発表したばかりです。もともと、岡田市長は二枚舌が持ち味ですから、その公約は「はがす為にある膏薬のようだ」として、最初から信じていない市民も多いようです。
■さて、報道によれば、安中市は2008年4月から群馬銀行と協議を重ねてきた中で、「市民世論は10年で本件の支払は終わると思っている」と提案していました。
実際の市民世論は、「本件の損害については、タゴ邦夫及びその一族や、タゴ事件関係者である公社役員ら責任のある立場の者たちが賠償すると思っている」というのが本当なのに、本件の支払元がこれまで公金だった事実について、安中市はなぜ触れようとしないのでしょうか。
また、安中市は「3億円支払うので本事案は終わりにしてほしい」と提案していました。これを知った市民は、首を傾げています。「いったいどこに3億円を支払える原資があるのだろうか」と。
■昨年6月4日の報道によると、安中市土地開発公社の財政事情について、次のように発表されています。
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巨額詐欺 負債重たく 安中市土地開発公社 06年度赤字転落 年2000万円返済 市負担の恐れ
安中市が全額出資する市土地開発公社(理事長・岡田義弘市長)は06年度決算をまとめた。当期損益は200万円の赤字に転落した。95年に発覚した元職員による巨額詐欺事件で抱えた負債を年2千万円ずつ返済し、安定経営が求められるなかで、厳しい1年となった。決算は6月5日から始まる定例市議会に報告される。
公社によると、06年度は販売を見込んでいた宅地や工業団地が売れず、売上げは当初の9億9千万円を大きく下回る1450万円で、当期損失は200万円となった。公社としての通常の業務以外に、大きくのしかかるのが巨額詐欺事件の負の遺産だ。公社が銀行に支払うことになった和解金24億5千万円は、98年度に4億円を返済し、以降は公社の収益から年2千万円ずつ返済している。それが、赤字だった06年度は、金融機関から新たに借りた資金で返済したのが実態だ。借金の一部は、返済期限の延長も受け入れてもらっているという。
和解金の06年度末残高は、なお18億9千万円に上り、「本業」である公有地取得や土地造成などに伴う借金12億6千万円を大きく上回る。(朝日新聞2007年6月4日群馬版)
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■安中市土地開発公社が、この一年間に3億円の利益を上げたのでしょうか。公社は公益法人ですから、もともと多額の利益を上げることが出来ない仕組みになっています。そうなると、この3億円の原資がどこにあるのか気になります。「まさか、このカネも公社が金融機関から借りて、長期返済するつもりなのではないか」・・・安中市の考えることは、市民の想像を常に超えるので予断を許しません。
確かなことは、タゴ事件で使途不明金として処理されている14億円余のカネを、タゴ事件関係者から回収して支払に充当するとは到底思えないことです。本来、タゴ事件関係者が責任をとるべきなのですが、タゴ邦夫と親しかった岡田市長が、そのような対応をするはずもありません。
■一方、被害者としてタゴ事件に関わった群馬銀行側は「市、公社は健全経営を行なっており、債務免除はできない」「むしろ、支払金額を増額してもらいたい」と主張していますが、これにも理由があります。
群銀としては、和解で9億4千万円近い金額をチャラにして、しかも、和解に伴い、公社が借り入れていた金額のうち、水増しされた金額以外の分(数億円とみられる)も免除し、安中市は、返済義務を免除された後者の金額を、初回の和解金4億円として充当し、群銀に支払った形をとったと見られるからです。
群馬銀行は、1998年12月の和解当時、「この和解に応じなければ、安中市は財政再建団体に転落していたはずだ」と豪語していました。それだけに、これほど、安中市に便宜を図ってやったのだから、この期に及んで、和解金を今後免除してくれ」などという安中市の身勝手な提案を、「はい、そうですね」と呑むわけにはいかない事情があるのかもしれません。
■あるいは、群銀は、安中市が10月20日付けで公社理事長でもある岡田義弘市長が送付した文書に対して「役員会を開いてから回答する」と言っていることから、まずは否定的な見解を安中市にぶつけておきながら、役員会で、あっと言わせる回答を用意するのかもしれません。
しかし、タイミングの悪いことに、サブプライムローンで揺れる経済不安は、金融機関にも重大な影を落としています。
103年ローンの残り93年分の18億6千万円を棒引きにすることは、群銀にとって、社内的にも、株主や他の自治体など対外的取引先の手前もあり、難しい事情を抱えていると思われます。
■ところで、10年前の安中市と群馬銀行との和解条項は、次の内容です。平成10年(1998年)12月1日に、安中市議会全員協議会で安中当局が初めて明らかにしました。
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【和解条項】
一 原告と被告らは、友好的且つ健全な金融取引を通じて、よりよい地域社会づくりの実現に向け努力することを目的とし、本件事案の特殊性及び被告らの財務負担の軽減ひいては住民福祉に配慮した裁判所の和解勧告を尊重し、互譲の精神をもって、以下のとおり和解する。
二 被告安中市土地開発公社は主債務者として、被告安中市は連帯保証人として、原告に対し、連帯して、原告請求にかかる本件借入金元金33億8618万円2425円及び本日までに発生した利息損害金全額相当額の支払義務あることを認める。
三 原告は、被告らに対し、本日、前項の債務のうち借入金元金9億3618万2425円及び前項の利息損害金全額相当額の支払いを免除する。
四 被告らは、連帯して、原告に対し、前項の免除後の残債務金24億5000万円を、次のとおり分割して、原告安中支店における群馬銀行安中支店長名義別段預金口座番号0185582に振り込んで支払う。但し、残債務金には利息を付さない。
1 平成10年11月25日限り金4億円
2 平成11年から10年間は、毎年12月25日限り金2000万円宛
3 前号後の10年間の残金支払方法については、原告と被告らが前号の最終支払期日までに、その時の被告らの財務状況並びに一般経済情勢等を勘案のうえ、前号の年間支払額を下回らない範囲で協議して定め、以降も残金支払済みまで同様とする。
五 被告らが前項1及び2の各分担金の支払いを1回でも1か月以上遅滞したときは、被告らは当然に期限の利益を失い、残額及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日から支払済みまでに年14パーセントの割合による損害金を一括して直ちに支払う。
六 被告安中市土地開発公社は、別紙供託金一覧表記載の供託金を取り戻すものとし、原告はこれに異議はない。
七 原告はその余の請求を放棄する。
八 原告と被告らは、本件に関し、本和解条項に定める他には何ら債権債務のないことを相互に確認する。
九 訴訟費用は、各自の負担とする。
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安中市土地開発公社元職員による巨悪横領事件をめぐり、平成7年10月19日に、群馬銀行が安中市と公社を相手に起こした貸金・保証履行請求訴訟は、3年1ヶ月余りの係争の果てに、上記のとおり和解という形で、平成10年(1998年)12月9日に終結しましたが、ご覧のとおり、実質的には、安中市・公社側の敗訴に近いものです。
■それにしても、安中市側が必死になって103年ローンの支払終了に固執して、群銀の機嫌をとろうとしているのに対し、群馬銀行側が「市・公社は健全経営を行なっており、債務免除は出来ない」と主張しているのをみると、群銀はよほど、安中市の体質を知り抜いていると見られます。
なぜなら、群馬銀行は、タゴ事件後、安中市のメーンバンクとして磐石の地位が保証されており、安中市の公金の管理や出納を独占的に任されているから、安中市や土地開発公社の財政事情は、隅々まで熟知しているからです。
自分の財布の中身が相手に全部知られていて、しかも、タゴ事件の真相についてもマル秘情報を握られている安中市としては、最初から群馬銀行のペースに従わざるを得ないのかもしれません。
当会では、さっそく、今回の安中市と群馬銀行との本件に関する協議の過程をチェックすべく、情報公開請求を安中市と土地開発公社に行なう予定です。
群馬銀行とタゴ事件の関係については、別途報告します。
【ひらく会情報部】