■閣僚を辞任して一代議士となった小渕優子元経産相の政治資金規正法違反容疑で当会が告発した件で、群馬県議会議長が小渕優子後援会開催の不正会計に係る釈明の説明会に、群馬県議会議長が、議会事務局が運転する最高級車のレクサスの議長公用車に載って出席した件で、市民オンブズマン群馬は、本日午後3時過ぎに、次の訴状を前橋地裁に提出しました。提出した訴訟資料は次のとおりです。
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訴 状
平成28年7月25日
前橋地方裁判所 御中
原告 〒370-0862 群馬県高崎市片岡町三丁目2166-3-401
大 河 原 宗 平
被告 〒371-8570 群馬県前橋市大手町一丁目1番1号
群馬県知事 大澤 正明
議長公用車目的外使用損害賠償請求事件
訴訟物の価格 160万円(算定不能)
貼用印紙額 13,000円
第1 請求の要旨
1.被告 群馬県知事 大澤正明は、議長公用車である黒塗りレクサスの目的外使用にともなうリース代、燃料代、消耗代、運転手の人件費合計65,148円および遅延損害金として年5分の法定金利を議会事務局のしかるべき責任者に請求せよ。
2.訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
第2 当事者
(1)原告は群馬県の住民であり納税者である。
(2)被告は、群馬県知事であり、上記予算を管理する者である。
第3 住民監査請求
(1)平成28年4月11日、原告は群馬県監査委員に、地方自治法第242条第1項により、議長公用車の目的外使用にかかるリース代、燃料代、消耗代、運転手の人件費合計65,148円(以下、「本損害金」という。)について措置請求(甲第1~4号証)を行った。
(2)平成28年4月25日、群馬県監査委員は原告に対して住民監査請求の補正依頼通知を出した(甲第5号証)。
(3)平成28年5月6日、原告は群馬県監査委員に対して補正書を提出した(甲第6号証)。
(4)平成28年5月19日、原告は群馬県監査委員に対して、地方自治法第242条第6項の規定に基づき、意見の陳述と証拠の提出(甲第7号証)を行った。
(3)平成28年6月25日、原告は、請求棄却の監査結果(平成28年6月24日付、群監第202-38号)(甲第8号証)を受け取ったが不服である。
第4 監査請求と監査結果に対する不服
(1)原告は、群馬県監査委員に対し「黒塗レクサスを使って、議長を特定の政治団体の会合に送迎したことは使用基準に違背しており、これに関する支出を行ったことは、地方自治法が138条の2で普通公共団体の執行機関に対してその事務を誠実に管理・執行すべき義務を課していること、同法2条14項が事務処理にあたって最小の経費で最大の効果を挙げるべきことを求め、地方財政法4条1項が地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえてこれを支出してはならない、と定めていることに鑑みれば、支出権限者である議会事務局のしかるべき責任者において黒塗レクサスの目的外使用に伴うリース料、燃料代、消耗代、運転手の人件費の各支出は違法・不当な財務上の支出であるから、被告はこれらの支出による損害を回収する措置をとる義務がある」として措置請求を行った。
(2)ところが、群馬県監査委員の監査結果では、「本件議長本人に対して事前に案内があり、社会的に大きく報道されていた小渕議員の関連政治団体を巡る政治資金規正法違反事件について、小渕議員本人が詳細説明を行うとのことだったため、国会議員の協力を得ながら県政を進めていく役割を担う議長として、その説明を聞き、真偽を把握しておく必要があると自ら判断し、出席したものである」として、「本件公用車使用も公用車を公務に使用したものであって、それが違法又は不当であるということはできない。以上のことからすれば、本件議長による本件会議への出席は、公務であるというべきであり、そのための本件公用車使用も公用車を公務に使用したものであって、それが違法又は不当であるということはできない」と結論付けて、原告の請求を理由が無いとして棄却した。
(3)群馬県議会公用車使用基準によれば、議長公用車を含む群馬県議会公用車(専用車)の使用基準は「議長及び副議長が、議会を代表して各種団体等の会議、諸行事に出席するとき」と明記されており、一代議士の政治資金規正法違反の釈明会見に議会公用車を使用することは明らかに目的外使用である。
第5 群馬県の損失
(1)本件議長公用車の目的外使用に伴い被告が支出した65,148円は、公金で負担すべき理由がなく、群馬県の損失である。
第6 本件請求の要旨
1 違法・不当な公金支出
群馬県議会事務局総務課において管理している黒塗の議長用公用車(以下「黒塗レクサス」という。)は、平成27年10月20日の午後、渋川市内で開催された「小渕優子後援会幹部役員県議団合同会議」に岩井均議長を出席させるため、議会事務局職員の運転で使用された。このことについて、市民オンブズマン群馬が、公開質問状で「どのような立場で参加したか」「政党活動をした理由や目的は」などを群馬県議会事務局に書面で尋ね、平成27年10月30日までの回答を求めたが、未だに回答がないのは遺憾である。
その後、この件で調査したところ、平成27年10月20日午後の岩井均議長のスケジュールが次のとおりであったことが判明した。
10月20日 曜日:火
時間/行事内容/場所/議長・副議長・局長/役割/摘要 調整日
正9:30迎 副9:30迎
09:30 庁議/5階特別会議室
10:00 第2回群馬の未来創生安中地域懇談会
安中市役所201会議室 議長○ ●〆10/16 終了11:30
10:00 靖国神社秋季例大祭(第三日祭) 靖国神社
議長欠 〆10/6 H23~26欠
11:00 局議 議会101会議室 局長○
13:30 ミラノ国際博覧会レク(近ツリ■■氏) 議長室 議長○
15:00 小渕議員後援会会合 渋川ホワイトパーク 議長○
15:00 一之宮貫前神社弐年遷宮奉賛会設立発起人会 富岡市社会教育館 議長欠 副議長欠 ●〆10/10
(秘書課運転手対応)
そもそも、群馬県議会事務局が保有している公用車(事実証明書1参照)の使用については群馬県議会事務局が「群馬県議会公用車使用基準」(以下「使用基準」という。)を定めて厳格に運用されているはずである。(事実証明書2参照)
平成22年3月3日に定めたとされるこの使用基準によれば、「群馬県議会において管理する公用車に係る議員の使用については、地方自治法及び会議規則、委員会条例に基づく議会活動に際し使用するものとし、具体的な基準は次のとおりとする」と規定し、「議長及び副議長用公用車」は専用車に区分されており、この専用車の使用基準には「議長及び副議長が、議会を代表して各種団体等の会議、諸行事に出席するとき」と明示されてある。
この使用基準に照らせば、平成27年10月20日の15時から渋川市内にある渋川ホワイトパークで開催された「小渕優子後援会幹部役員県議団合同会議」と称する一代議士の後援会である政治団体の会合に、群馬県議会を代表して岩井均議長を、黒塗レクサスを使って出席させたことは、明らかに不適切である。
なぜなら、群馬県議会を代表して出席する場合の機会として、特定の政治団体の会合というのはおよそ有り得ないことだからである。もしも有り得るとした場合は、同議長が、自ら所属する自由民主党群馬県支部連合会関係の県議団団長、あるいは広報委員長、若しくは筆頭政務調査会副会長、ないし政務調査会副会長、さもなければ組織副委員長の肩書や立場で参加するはずである。
しかも、岩井均県議は、渋川市内での小渕議員後援会会合のあと、前橋市大手町の県政会館に移動して、小渕議員の記者会見にも司会役として参加している。そこへの移動も目的地まで完全に黒塗レクサスだったのかどうかは、未確認であるが、いずれにしても、渋川市内から前橋市内へ向けての移動に黒塗レクサスが使われていたことは、請求人も渋川市内の会場で目撃している。
以上の経緯から、平成27年10月20日(火)13時30分から議長室において近畿日本ツーリストの担当者によるミラノ国際博覧会のための渡航に係るレクチャーを受けた後、14時過ぎに前橋市大手町の議会庁舎を黒塗レクサスで出発し、15時からの小渕議員後援会会合に参加し、16時45分に渋川市内の会場を発って、18時頃に前橋市内の県庁に戻るまでの黒塗レクサス使用は、公務とは認められず、明らかに使用基準に反している。
よって、この期間にムダに費消された黒塗レクサスのリース料、車検整備費用、ガソリン代などの支出、及び公務以外の目的でこの黒塗レクサスを運転するために公務を離れた議会事務局職員の人件費の支出を容認した群馬県の所為は、地方自治法2条14項が事務処理にあたって最小の経費で最大の効果を挙げるべきことを求め、地方財政法4条1項が地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえてこれを支出してはならない、と定めていることに反するものである。以下、理由を具体的に述べる。
2 理由
(1)群馬県議会公用車使用基準に違反していること
事実証明書2に示した平成22年3月3日制定の群馬県議会公用車使用基準によると、「群馬県議会において管理する公用車に係る議員の使用については、地方自治法及び会議規則、委員会条例に基づく議会活動に際し使用するものとし、具体的な基準は次のとおり」とされている。
すなわち、黒塗レクサスは、「専用車」に区分され、使用基準として「議長が、議会を代表して各種団体等の会議、諸行事に出席するとき」と定められている。平成27年10月20日の午後、渋川市内で開催された「小渕優子後援会幹部役員県議団合同会議」に岩井均議長を出席させるため、議会事務局職員の運転で黒塗レクサスが使用されたことは、使用基準に照らして、明らかに目的外使用である。
(2)リース代、ガソリン代及び運転手の人件費を支出していること
目的外使用であるから、事実証明書3によれば黒塗レクサスリース代(4年間で8,981,380円)のうち年換算額2,245,345円、1年の平均公用車使用日数を250日とした場合の1日当たりリース代換算額8,981.38円、1日8時間使用とした場合の時間あたりリース代換算額1,122円×4時間=4,488円、その他、黒塗レクサスの燃料代として当日の午後の県庁~渋川の会場~県政会館の経路の移動に要した燃料代600円(レギュラーガソリン約5リットル相当)及び潤滑油等消耗代60円(燃料費の10%相当を想定)、および運転手の職場離脱時間(14時から18時までの4時間を想定)に相当する人件費(時間当たり15,000円を想定)15,000円×4時間=60,000円が費消された計算となる。したがって、これらの支出合計4,488+600+60+60,000=65,148円が経費としてかかったことになる。
3 結論
以上の点から見て黒塗レクサスを使って、議長を特定の政治団体の会合に送迎したことは使用基準に違背しており、これに関する支出を行ったことは、地方自治法が138条の2で普通公共団体の執行機関に対してその事務を誠実に管理・執行すべき義務を課していること、同法2条14項が事務処理にあたって最小の経費で最大の効果を挙げるべきことを求め、地方財政法4条1項が地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえてこれを支出してはならない、と定めていることに鑑みれば、支出権限者である議会事務局のしかるべき責任者において黒塗レクサスの目的外使用に伴うリース料、燃料代、消耗代、運転手の人件費の各支出は違法・不当な財務上の支出であるから、被告はこれらの支出による損害を回収する措置をとる義務がある。
証 拠 方 法
甲第1号証 群馬県職員措置請求書
甲第2号証 別紙1「群馬県議会事務局公用車」
甲第3号証 別紙2「群馬県議会公用車使用基準」
甲第4号証 別紙3「備品記録(公用車 議長)」
甲第5号証 住民監査請求の補正について(通知)
甲第6号証 群馬県監査委員への補正書(議長公用車不正使用について)
甲第7号証 住民監査陳述 追加証拠「議長公用車」写真綴り
甲第8号証 監査結果通知
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証拠説明書
PDF ⇒20160725pdf.pdf
icpiogpj160725.pdf
甲第1号証
PDF ⇒ bpziccpiogpj160411.pdf
甲第2号証
PDF ⇒bqpqncp.pdf
甲第3号証
PDF ⇒brqqncpgp.pdf
甲第4号証
PDF ⇒bsrilycpz.pdf
甲第5号証
PDF ⇒btpvmij.pdf
btqvqp.pdf
btrvqq1.pdf
甲第6号証
PDF ⇒bu20160506qnicpsgpj.pdf
甲第7号証
PDF ⇒bvp201605191zqicpj.pdf
bvq201605192zqicpj.pdf
bvr201605193zqicpj.pdf
甲第8号証
PDF ⇒bw20160624mijcpiogp.pdf
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■今回の争点は、議会事務局が制定した「群馬県議会公用車使用基準」として「議長及び副議長が、議会を代表して各種団体等の会議、諸行事に出席するとき」と明記されていることについて、一代議士であるオブチ「姫」の後援会における「姫」の政治資金規正法違反の釈明会見のための集会に、同じ政党所属の群馬県議会議長を公用車をつかって送迎することが、目的外使用にあたるかどうか、という、非常にシンプルなものです。
市民オンブズマン群馬では、これまでの、大澤知事の知事公舎を使っての、愛人連れ込み宿泊「妾宅化」不適切使用問題で、大澤知事を提訴して、最高裁まで争った経緯がありますが、このときは群馬県公舎管理規則の規定の解釈が争点となりました。当時の訴状の内容は次のブログを参照ください。
○2012年6月3日:知事公舎をラブホテル代わりにした群馬県大澤知事に利用料等返還を求め住民訴訟を提起(その2)↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/777.html
当時、大澤知事が20年来の愛人をほとんど毎週末知事公舎に連れ込んで不倫行為を働いていたことが週刊誌にスッパ抜かれたことから、当会では、知事公舎の使用ルールを定めた「群馬県公舎管理規則」を盾に、住民訴訟を提起しました。
このとき、「群馬県公舎管理規則」の次の条項を争点としました。
●第2条(定義)「この規則において「公舎」とは、県が公務の円滑な運営を図るため、県に勤務職員の居住に供する目的をもって設置した施設を言う」
●第4条(居住資格)「公舎を使用することができる者は、県に常時勤務する職員(知事が特に認めた場合は、この限りではない。)で公務の円滑な運営を図るため居住の必要がある者に限る」
●規則第8条(遵守事項)「使用者は、公舎を常に善良な管理者としての注意をもって使用するとともに、次の各号に掲げる行為をしてはならない。ただし、第一号及び第二号に掲げる行為で知事又は地域機関等の長の許可を受けたものは、この限りではない。 一 増築し、改築し、もしくは模様替えをし、又は工作物を設置すること。 二 職員と生計を一にする者以外の者(使用人を除く)を同居させること。 三 転貸し、又は目的外に使用すること」
大澤知事は、ほとんど毎週末、愛人とともに知事公舎を使って「政務」ならぬ「性務」のために使用していたのですが、「職員と生計を一にする者以外の者(使用人を除く)を同居させること」について、前橋地裁も東京高裁も、そして最高裁も「職員と生計を一にする者以外の者として、愛人であっても、宿泊と伴う滞在は、同居とはみなされない」という画期的な判断を示しました。
したがって、この大澤知事による知事公舎妾宅化事件の裁判の結果、公務員の場合、愛人やガールフレンドと宿泊をともなう時間をシェアする場合、ラブホテルや妾宅を使うことなく、公舎施設をどうどうと使えることが法的にも認められたことになり、公務員の皆さんの福利厚生にとって、当会の努力で多大な福音となった事例となりました。
■今回の住民訴訟では、議長公用車を、自ら所属する政党に絡んだ政治活動に自由に使ってもよいのかどうか、裁判所の判断が注目されることになります。
当会の今回の法的対応により、結果的に群馬県議会の与党関係者に福音となるのか、あるいは法の鉄槌が、安易な公用車使用を容認する県庁公務員に対して打ち下ろされるのか、法廷の場ではっきりと決着がつけられるのではないか、と考えられます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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訴 状
平成28年7月25日
前橋地方裁判所 御中
原告 〒370-0862 群馬県高崎市片岡町三丁目2166-3-401
大 河 原 宗 平
被告 〒371-8570 群馬県前橋市大手町一丁目1番1号
群馬県知事 大澤 正明
議長公用車目的外使用損害賠償請求事件
訴訟物の価格 160万円(算定不能)
貼用印紙額 13,000円
第1 請求の要旨
1.被告 群馬県知事 大澤正明は、議長公用車である黒塗りレクサスの目的外使用にともなうリース代、燃料代、消耗代、運転手の人件費合計65,148円および遅延損害金として年5分の法定金利を議会事務局のしかるべき責任者に請求せよ。
2.訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
第2 当事者
(1)原告は群馬県の住民であり納税者である。
(2)被告は、群馬県知事であり、上記予算を管理する者である。
第3 住民監査請求
(1)平成28年4月11日、原告は群馬県監査委員に、地方自治法第242条第1項により、議長公用車の目的外使用にかかるリース代、燃料代、消耗代、運転手の人件費合計65,148円(以下、「本損害金」という。)について措置請求(甲第1~4号証)を行った。
(2)平成28年4月25日、群馬県監査委員は原告に対して住民監査請求の補正依頼通知を出した(甲第5号証)。
(3)平成28年5月6日、原告は群馬県監査委員に対して補正書を提出した(甲第6号証)。
(4)平成28年5月19日、原告は群馬県監査委員に対して、地方自治法第242条第6項の規定に基づき、意見の陳述と証拠の提出(甲第7号証)を行った。
(3)平成28年6月25日、原告は、請求棄却の監査結果(平成28年6月24日付、群監第202-38号)(甲第8号証)を受け取ったが不服である。
第4 監査請求と監査結果に対する不服
(1)原告は、群馬県監査委員に対し「黒塗レクサスを使って、議長を特定の政治団体の会合に送迎したことは使用基準に違背しており、これに関する支出を行ったことは、地方自治法が138条の2で普通公共団体の執行機関に対してその事務を誠実に管理・執行すべき義務を課していること、同法2条14項が事務処理にあたって最小の経費で最大の効果を挙げるべきことを求め、地方財政法4条1項が地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえてこれを支出してはならない、と定めていることに鑑みれば、支出権限者である議会事務局のしかるべき責任者において黒塗レクサスの目的外使用に伴うリース料、燃料代、消耗代、運転手の人件費の各支出は違法・不当な財務上の支出であるから、被告はこれらの支出による損害を回収する措置をとる義務がある」として措置請求を行った。
(2)ところが、群馬県監査委員の監査結果では、「本件議長本人に対して事前に案内があり、社会的に大きく報道されていた小渕議員の関連政治団体を巡る政治資金規正法違反事件について、小渕議員本人が詳細説明を行うとのことだったため、国会議員の協力を得ながら県政を進めていく役割を担う議長として、その説明を聞き、真偽を把握しておく必要があると自ら判断し、出席したものである」として、「本件公用車使用も公用車を公務に使用したものであって、それが違法又は不当であるということはできない。以上のことからすれば、本件議長による本件会議への出席は、公務であるというべきであり、そのための本件公用車使用も公用車を公務に使用したものであって、それが違法又は不当であるということはできない」と結論付けて、原告の請求を理由が無いとして棄却した。
(3)群馬県議会公用車使用基準によれば、議長公用車を含む群馬県議会公用車(専用車)の使用基準は「議長及び副議長が、議会を代表して各種団体等の会議、諸行事に出席するとき」と明記されており、一代議士の政治資金規正法違反の釈明会見に議会公用車を使用することは明らかに目的外使用である。
第5 群馬県の損失
(1)本件議長公用車の目的外使用に伴い被告が支出した65,148円は、公金で負担すべき理由がなく、群馬県の損失である。
第6 本件請求の要旨
1 違法・不当な公金支出
群馬県議会事務局総務課において管理している黒塗の議長用公用車(以下「黒塗レクサス」という。)は、平成27年10月20日の午後、渋川市内で開催された「小渕優子後援会幹部役員県議団合同会議」に岩井均議長を出席させるため、議会事務局職員の運転で使用された。このことについて、市民オンブズマン群馬が、公開質問状で「どのような立場で参加したか」「政党活動をした理由や目的は」などを群馬県議会事務局に書面で尋ね、平成27年10月30日までの回答を求めたが、未だに回答がないのは遺憾である。
その後、この件で調査したところ、平成27年10月20日午後の岩井均議長のスケジュールが次のとおりであったことが判明した。
10月20日 曜日:火
時間/行事内容/場所/議長・副議長・局長/役割/摘要 調整日
正9:30迎 副9:30迎
09:30 庁議/5階特別会議室
10:00 第2回群馬の未来創生安中地域懇談会
安中市役所201会議室 議長○ ●〆10/16 終了11:30
10:00 靖国神社秋季例大祭(第三日祭) 靖国神社
議長欠 〆10/6 H23~26欠
11:00 局議 議会101会議室 局長○
13:30 ミラノ国際博覧会レク(近ツリ■■氏) 議長室 議長○
15:00 小渕議員後援会会合 渋川ホワイトパーク 議長○
15:00 一之宮貫前神社弐年遷宮奉賛会設立発起人会 富岡市社会教育館 議長欠 副議長欠 ●〆10/10
(秘書課運転手対応)
そもそも、群馬県議会事務局が保有している公用車(事実証明書1参照)の使用については群馬県議会事務局が「群馬県議会公用車使用基準」(以下「使用基準」という。)を定めて厳格に運用されているはずである。(事実証明書2参照)
平成22年3月3日に定めたとされるこの使用基準によれば、「群馬県議会において管理する公用車に係る議員の使用については、地方自治法及び会議規則、委員会条例に基づく議会活動に際し使用するものとし、具体的な基準は次のとおりとする」と規定し、「議長及び副議長用公用車」は専用車に区分されており、この専用車の使用基準には「議長及び副議長が、議会を代表して各種団体等の会議、諸行事に出席するとき」と明示されてある。
この使用基準に照らせば、平成27年10月20日の15時から渋川市内にある渋川ホワイトパークで開催された「小渕優子後援会幹部役員県議団合同会議」と称する一代議士の後援会である政治団体の会合に、群馬県議会を代表して岩井均議長を、黒塗レクサスを使って出席させたことは、明らかに不適切である。
なぜなら、群馬県議会を代表して出席する場合の機会として、特定の政治団体の会合というのはおよそ有り得ないことだからである。もしも有り得るとした場合は、同議長が、自ら所属する自由民主党群馬県支部連合会関係の県議団団長、あるいは広報委員長、若しくは筆頭政務調査会副会長、ないし政務調査会副会長、さもなければ組織副委員長の肩書や立場で参加するはずである。
しかも、岩井均県議は、渋川市内での小渕議員後援会会合のあと、前橋市大手町の県政会館に移動して、小渕議員の記者会見にも司会役として参加している。そこへの移動も目的地まで完全に黒塗レクサスだったのかどうかは、未確認であるが、いずれにしても、渋川市内から前橋市内へ向けての移動に黒塗レクサスが使われていたことは、請求人も渋川市内の会場で目撃している。
以上の経緯から、平成27年10月20日(火)13時30分から議長室において近畿日本ツーリストの担当者によるミラノ国際博覧会のための渡航に係るレクチャーを受けた後、14時過ぎに前橋市大手町の議会庁舎を黒塗レクサスで出発し、15時からの小渕議員後援会会合に参加し、16時45分に渋川市内の会場を発って、18時頃に前橋市内の県庁に戻るまでの黒塗レクサス使用は、公務とは認められず、明らかに使用基準に反している。
よって、この期間にムダに費消された黒塗レクサスのリース料、車検整備費用、ガソリン代などの支出、及び公務以外の目的でこの黒塗レクサスを運転するために公務を離れた議会事務局職員の人件費の支出を容認した群馬県の所為は、地方自治法2条14項が事務処理にあたって最小の経費で最大の効果を挙げるべきことを求め、地方財政法4条1項が地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえてこれを支出してはならない、と定めていることに反するものである。以下、理由を具体的に述べる。
2 理由
(1)群馬県議会公用車使用基準に違反していること
事実証明書2に示した平成22年3月3日制定の群馬県議会公用車使用基準によると、「群馬県議会において管理する公用車に係る議員の使用については、地方自治法及び会議規則、委員会条例に基づく議会活動に際し使用するものとし、具体的な基準は次のとおり」とされている。
すなわち、黒塗レクサスは、「専用車」に区分され、使用基準として「議長が、議会を代表して各種団体等の会議、諸行事に出席するとき」と定められている。平成27年10月20日の午後、渋川市内で開催された「小渕優子後援会幹部役員県議団合同会議」に岩井均議長を出席させるため、議会事務局職員の運転で黒塗レクサスが使用されたことは、使用基準に照らして、明らかに目的外使用である。
(2)リース代、ガソリン代及び運転手の人件費を支出していること
目的外使用であるから、事実証明書3によれば黒塗レクサスリース代(4年間で8,981,380円)のうち年換算額2,245,345円、1年の平均公用車使用日数を250日とした場合の1日当たりリース代換算額8,981.38円、1日8時間使用とした場合の時間あたりリース代換算額1,122円×4時間=4,488円、その他、黒塗レクサスの燃料代として当日の午後の県庁~渋川の会場~県政会館の経路の移動に要した燃料代600円(レギュラーガソリン約5リットル相当)及び潤滑油等消耗代60円(燃料費の10%相当を想定)、および運転手の職場離脱時間(14時から18時までの4時間を想定)に相当する人件費(時間当たり15,000円を想定)15,000円×4時間=60,000円が費消された計算となる。したがって、これらの支出合計4,488+600+60+60,000=65,148円が経費としてかかったことになる。
3 結論
以上の点から見て黒塗レクサスを使って、議長を特定の政治団体の会合に送迎したことは使用基準に違背しており、これに関する支出を行ったことは、地方自治法が138条の2で普通公共団体の執行機関に対してその事務を誠実に管理・執行すべき義務を課していること、同法2条14項が事務処理にあたって最小の経費で最大の効果を挙げるべきことを求め、地方財政法4条1項が地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえてこれを支出してはならない、と定めていることに鑑みれば、支出権限者である議会事務局のしかるべき責任者において黒塗レクサスの目的外使用に伴うリース料、燃料代、消耗代、運転手の人件費の各支出は違法・不当な財務上の支出であるから、被告はこれらの支出による損害を回収する措置をとる義務がある。
証 拠 方 法
甲第1号証 群馬県職員措置請求書
甲第2号証 別紙1「群馬県議会事務局公用車」
甲第3号証 別紙2「群馬県議会公用車使用基準」
甲第4号証 別紙3「備品記録(公用車 議長)」
甲第5号証 住民監査請求の補正について(通知)
甲第6号証 群馬県監査委員への補正書(議長公用車不正使用について)
甲第7号証 住民監査陳述 追加証拠「議長公用車」写真綴り
甲第8号証 監査結果通知
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証拠説明書
PDF ⇒20160725pdf.pdf
icpiogpj160725.pdf
甲第1号証
PDF ⇒ bpziccpiogpj160411.pdf
甲第2号証
PDF ⇒bqpqncp.pdf
甲第3号証
PDF ⇒brqqncpgp.pdf
甲第4号証
PDF ⇒bsrilycpz.pdf
甲第5号証
PDF ⇒btpvmij.pdf
btqvqp.pdf
btrvqq1.pdf
甲第6号証
PDF ⇒bu20160506qnicpsgpj.pdf
甲第7号証
PDF ⇒bvp201605191zqicpj.pdf
bvq201605192zqicpj.pdf
bvr201605193zqicpj.pdf
甲第8号証
PDF ⇒bw20160624mijcpiogp.pdf
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■今回の争点は、議会事務局が制定した「群馬県議会公用車使用基準」として「議長及び副議長が、議会を代表して各種団体等の会議、諸行事に出席するとき」と明記されていることについて、一代議士であるオブチ「姫」の後援会における「姫」の政治資金規正法違反の釈明会見のための集会に、同じ政党所属の群馬県議会議長を公用車をつかって送迎することが、目的外使用にあたるかどうか、という、非常にシンプルなものです。
市民オンブズマン群馬では、これまでの、大澤知事の知事公舎を使っての、愛人連れ込み宿泊「妾宅化」不適切使用問題で、大澤知事を提訴して、最高裁まで争った経緯がありますが、このときは群馬県公舎管理規則の規定の解釈が争点となりました。当時の訴状の内容は次のブログを参照ください。
○2012年6月3日:知事公舎をラブホテル代わりにした群馬県大澤知事に利用料等返還を求め住民訴訟を提起(その2)↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/777.html
当時、大澤知事が20年来の愛人をほとんど毎週末知事公舎に連れ込んで不倫行為を働いていたことが週刊誌にスッパ抜かれたことから、当会では、知事公舎の使用ルールを定めた「群馬県公舎管理規則」を盾に、住民訴訟を提起しました。
このとき、「群馬県公舎管理規則」の次の条項を争点としました。
●第2条(定義)「この規則において「公舎」とは、県が公務の円滑な運営を図るため、県に勤務職員の居住に供する目的をもって設置した施設を言う」
●第4条(居住資格)「公舎を使用することができる者は、県に常時勤務する職員(知事が特に認めた場合は、この限りではない。)で公務の円滑な運営を図るため居住の必要がある者に限る」
●規則第8条(遵守事項)「使用者は、公舎を常に善良な管理者としての注意をもって使用するとともに、次の各号に掲げる行為をしてはならない。ただし、第一号及び第二号に掲げる行為で知事又は地域機関等の長の許可を受けたものは、この限りではない。 一 増築し、改築し、もしくは模様替えをし、又は工作物を設置すること。 二 職員と生計を一にする者以外の者(使用人を除く)を同居させること。 三 転貸し、又は目的外に使用すること」
大澤知事は、ほとんど毎週末、愛人とともに知事公舎を使って「政務」ならぬ「性務」のために使用していたのですが、「職員と生計を一にする者以外の者(使用人を除く)を同居させること」について、前橋地裁も東京高裁も、そして最高裁も「職員と生計を一にする者以外の者として、愛人であっても、宿泊と伴う滞在は、同居とはみなされない」という画期的な判断を示しました。
したがって、この大澤知事による知事公舎妾宅化事件の裁判の結果、公務員の場合、愛人やガールフレンドと宿泊をともなう時間をシェアする場合、ラブホテルや妾宅を使うことなく、公舎施設をどうどうと使えることが法的にも認められたことになり、公務員の皆さんの福利厚生にとって、当会の努力で多大な福音となった事例となりました。
■今回の住民訴訟では、議長公用車を、自ら所属する政党に絡んだ政治活動に自由に使ってもよいのかどうか、裁判所の判断が注目されることになります。
当会の今回の法的対応により、結果的に群馬県議会の与党関係者に福音となるのか、あるいは法の鉄槌が、安易な公用車使用を容認する県庁公務員に対して打ち下ろされるのか、法廷の場ではっきりと決着がつけられるのではないか、と考えられます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】