■群馬高専の電子情報工学科を舞台に発生した陰湿極まるアカデミックハラスメント(アカハラ)事件。この忌まわしい事件に関連する情報公開請求を発端として、群馬高専側が情報秘匿体質を存分に発揮したため、現在、当会が東京高裁で係争中であることはこれまでご報告のとおりです。この度、4月25日(水)午後1時20分に東京高裁8階809号法廷で、判決が言渡され、裁判長の声が、控訴人である機構訴訟代理人弁護士のいない法廷に響き渡りました。その後、16階の東京高裁第9民事部を訪れて、判決文を受領しました。
↑4月25日(水)午後1時40分ごろの東京高等・地方・簡易裁判所合同庁舎。新緑がすがすがしい。↑
なお、東京地裁での判決言渡し以降の本件の経緯は次のブログ記事を参照ください。
○2017年11月24日:【速報】アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示訴訟で東京地裁が原告一部勝訴判決!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2476.html
〇2018年1月21日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…東京高裁第9民事部から2月28日の弁論期日呼出状と控訴状が届く↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2536.html
〇2018年1月29日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示控訴審で機構=群馬高専が控訴理由書を提出!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2546.html
○2018年3月4日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示控訴審が2月28日に開かれ即日結審!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2578.html#readmore
〇2018年3月14日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示控訴審で2.28結審後にオンブズが最終書面陳述↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2590.html#readmore
■それでは、機構が控訴人となった控訴審及び当会が附帯控訴人となった附帯控訴審の判決文を以下に示します。
*****判決原文*****PDF ⇒ 20180425_tokyokosai_acaharra_jouhoukaiji_soshou_hanketsubun.pdf
<P1>
平成30年4月25日判決言渡し 同日判決原本交付裁判所書記官
平成29年(行コ)第376号,平成30年(行コ)第18号 法人文書不開示処分取消控訴,同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成28年(行ウ)第499
号)
口頭弁論終結日 平成30年2月28日
判 決
東京都八王子市東浅川町701番2
控訴人兼附帯被控訴人(以下単に「控訴人」という。)
独立行政法人国立高等専門学校機構
同代表者理事長 谷 口 功
同訴訟代理人弁護士 本 村 美 隆
同 藍 澤 幸 弘
前橋市文京町一丁目15-10
被控訴人兼附帯控訴人(以下単に「被控訴人」という。)
市民オンブズマン群馬
同代表者代表 小 川 賢
主 文
1 控訴人の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
(1) 控訴人が平成28年4月27日付けで被控訴人に対してした法人文書不開示決定のうち,別紙「開示相当部分」記載の各部分を不開示とした部分を取り消す。
(2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。
2 被控訴人の附帯控訴を棄却する。
3 訴訟費用(控訴費用,附帯控訴費用を含む。)は第1,2審を通じてこれを3分し,その2を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
<P2>
1 当事者の求めた裁判
1 控訴の趣旨
(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
(2) 前項の部分につき被控訴人の請求を棄却する。
2 附帯控訴の趣旨
(1) 原判決を次のとおり変更する。
(2) 控訴人が平成28年4月27日付けで被控訴人に対してした法人文書不開示決定を取り消す。
第2 事案の概要(以下,理由説示部分を含め,原則として原判決の略称をそのまま用いる。)
1 本件は,被控訴人が,控訴人に対し,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(法)に基づき,その保有する法人文書の開示を請求したところ,控訴人から法5条1号の不開示情報に該当するとしてその全部につき開示をしない旨の決定(本件不開示決定)を受けたことから,同決定が違法であると主張して,その取消しを求める事案である。
原審は,本件不開示決定のうち原判決別紙記載の各部分を不開示とした部分を取り消し,被控訴人のその余の請求を棄却した。控訴人は,上記の請求一部認容部分を不服として控訴した。被控訴人は,請求の一部棄却部分を不服として附帯控訴した。
2 関係法令の定め,前提事実(当事者間に争いのない事実に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実),争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1ないし3(原判決2頁3行目から12頁3行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決10頁25行目末尾の後に改行して以下のとおり加える。
「 控訴人の後記ウの主張は,時機に後れたものとして却下されるべきであ
<P3>
る。」
(2) 原判決11頁3行目冒頭に「ア」を,同頁10行目冒頭に「イ」を,同頁11行目の「部分は,」の後に「文書の作成者の氏名・肩書を含めて」を,同頁12行目末尾の後に改行して以下のとおりそれぞれ加える。
「ウ さらに,本件において,被控訴人は,本件文書1と推測される文書を甲14として,本件文書2と推測される文書を甲11及び12として,いずれも書証として提出し,同各書証を自身のホームページで公開している。同各書証は,個人名が黒塗りされているがその余の部分については何ら修正が施されておらず,被控訴人がホームページで公開したことにより第三者にもその内容が明らかになっている。そうすると,被控訴人が何らかの経緯で実際に本件文書1及び2を入手した上で,これらを上記のとおり書証として提出したり,ホームページで公開したとの被控訴人の主張が根拠のないものということはできない。
このような状況の下で,本件文書1について,作成者の氏名・肩書及び作成年月日の部分や,教職員,学生及びその保護者に係る所属・属性を除く部分が部分開示され,本件文書2について,作成年月日,標題及び宛先の部分が部分開示されるのであれば,部分開示された本件文書1と甲14を,部分開示された本件文書2と甲11及び12をそれぞれ突き合わせることにより同一性を判断することが可能となる。そして,これが同-であった場合には,本件文書1及び2の全体が個人名のみを伏して開示されたことと実質的に同一の結果となるものであり,個人識別情報に該当する又は公正かつ円滑な人事の確保に影響を及ぼすおそれがあるとして不開示とされた部分が開示される結果と等しくなる。
したがって,本件文書1の作成者の氏名・肩書及び作成年月日の部分並びに教職員,学生及びその保護者に係る所属・属性を除く部分や,本件文書2の作成年月日,標題及び宛先の部分は,いずれも不開示情報
<P4>
そのものに該当しないとしても,これらが開示されることにより実質的に不開示部分が開示された結果となるおそれがある以上,上記各部分は,不開示情報が記録されている部分と区分して開示することが容易に可能であるということはできないから,同各部分を部分開示することは不可能である。」
(3) 原判決11頁13行目冒頭に「エ」を加える。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,本件不開示決定のうち別紙「開示相当部分」記載の各部分を不開示とした部分を取り消すのが相当であると判断する(別紙「開示相当部分」の内容は,原判決別紙記載の内容から,同記載3の「作成者の氏名・肩書」を除いたものである。)。その理由は,以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1ないし6(原判決12頁5行目から20頁26行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決15頁20行目及び21行目の各「不開示情報」をいずれも「法5条1号本文の不開示情報」と改める。
(2) 原判決18頁7行目から8行目にかけての「作成者の氏名・肩書,」を削り,同頁9行目の「そうすると,これらが」を「また,本件高専の教員数が決して多いとはいえない中で(前記前提事実出),学内のハラスメント事実の調査担当者及びその取りまとめをして報告書の作成等をする者について,その役割の性質上,一定以上の役職にあるとともに中立の確保のため調査対象者との関係にも配慮して選任される必要があるから,候補者が必ずしも多くはないものと推認される。そうすると,行為者及び相手方のいずれにおいても通常秘匿にすることを欲する上記情報や,調査担当者(その取りまとめをして報告書の作成者となる者を含む。以下同じ。)の氏名・肩書が」と,同頁11行目の「萎縮し」を「萎縮したり,調査担当者として適任である者
<P5>
がこれを引き受けることを拒むことにより調査担当者の選任確保が困難となるなどして」とそれぞれ改め,同頁15行目の「作成者の氏名・肩書,」を削る。
(3) 原判決18頁21行目の「(1)」を「(1)ア」と改め,19頁11行目末尾の後に改行して以下のとおり加える。
「イ この点について,控訴人は,前記第2の3(5)(控訴人の主張)ウのとおり,本件文書1の上記部分(原判決別紙記載1(1)及び(2)の部分)を容易に区分して除くことができないとして(法6条1項),部分開示が不可能であると主張する(被控訴人は,同主張について時機に後れたものとして却下されるべきと主張するが,同主張により訴訟の完結を遅延させることとなると認められないので,被控訴人の同主張は失当である。)。
しかしながら,控訴人は,本件文書1について不開示情報と区分して部分開示が可能と解される余地がある箇所の内容を明確にするために乙5の1ないし3を提出しているが,原判決別紙記載1出及び(2)の部分は乙5の1ないし3により示された部分と一致するものと考えられる(前記ア)。そうすると,本件文書1の上記部分(原判決別紙記載1(1)及び(2)の部分)が部分開示された場合にこれと甲14を突き合わせることは,乙5の1ないし3と甲14を突き合わせることと同じことであるから,上記部分開示によって不開示とされた部分が開示される結果となる旨の控訴人の主張はそもそもその前提を欠くものというべきである。
したがって,控訴人の上記主張はその余の点を検討するまでもなく失当である。」
(4) 原判決19頁12行目の「(2)」を「(2)ア」と,同頁15行目の「本件文書3」から同頁16行目から17行目にかけての「標題」」までを「本件文書3のうち作成年月日及び標題」と,同頁18行目及び19行目から20行目
<P6>
にかけての各「別紙記載2及び3の部分」をいずれも「別紙記載2の部分並びに本件文書3のうち作成年月日及び標題」と,同頁22行目の「別紙記載3の部分」を「作成年月日及び標題」とそれぞれ改め、同行末尾の後に改行して以下のとおり加える。
「イ 本件文書2の部分開示について,控訴人は,前記第2の3(5)(控訴人の主張)ウのとおり,本件文書2の原判決別紙記載2の部分を容易に区分して除くことができないとして(法6条1項),部分開示が不可能であると主張する(被控訴人は,同主張について時機に後れたものとして却下されるべきと主張するが,同主張により訴訟の完結を遅延させることとなると認められないので,被控訴人の同主張は失当である。)。
しかしながら,本件文書2からその作成年月日,標題及び宛先(原判決別紙記載2の部分)をその他の部分と区分して除くことが容易であることは同各項目の性質上明らかというべきであり(前記ア),このことは,原判決別紙記載2の部分が開示された本件文書2と甲11及び12とが突き合わされることにより,甲11及び12が本件文書2に該当するものであるか否かが判断される可能性があるとしても,同可能性のあることが法6条1項の「容易に区分して除くことができる」かの判断を左右するものではない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」
(5) 原判決19頁23行目冒頭に「ウ」を加え,20頁8行目の「別紙記載3の部分」を「別紙「開示相当部分」記載3の部分」と改める。
2 被控訴人の当審における主張(附帯控訴理由)は,いずれも原審における主張を繰り返すか,独自の見解を述べるものにすぎず,それらの主張が採用できないものであることは,前記1において認定・説示したとおりである。
3 結語
以上によれば,被控訴人の請求は,本件不開示決定のうち別紙「開示相当部
<P7>
分」記載の各部分を不開示とした部分を取り消す限度で理由があるところ,これと異なり,原判決別紙記載の各部分を不開示とした部分を取り消す限度で請求を認めた原判決は一部失当であり,控訴は理由があり,附帯控訴は理由がない。そこで,原判決を上記のとおり変更し,附帯控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第9民事部
裁判長裁判官 齊木敏文
裁判官 石井 浩
裁判官 小田正二
<P8>
(別紙)
開示相当部分
1(1) 群馬工業高等専門学校長が同校の学生の保護者宛てに配布した平成27年4月1日付けの書面2通及び同年6月2日付けの書面1通のうち,作成者の氏名・肩書及び作成年月日の部分
(2) 前記(1)の各書面のうち,群馬工業高等専門学校の教職員,学生及びその保護者に係る所属・属性(学科・学年を含む。)を記述した部分を除く部分(前記(1)の部分を除く。)
2(1) 群馬工業高等専門学校の内部者が同校校長ら宛てに提出した平成26年12月24日付けの「ハラスメントに関する申立書」1通のうち,作成年月日,標題及び宛先の部分
(2) 同校の内部者複数名が連名で同校校長ら宛てに提出した平成27年2月25日付けの「人権・被害救済の申し立て」1通のうち,作成年月日,標題及び宛先の部分
3 前記2によるハラスメントの申告を受けて,群馬工業高等専門学校が事実関係を調査の上作成した調査の経緯及びその結果に関する書面1通のうち,作成年月日及び標題の部分
<P9>
これは正本である。
平成30年4月25日
東京高等裁判所第9民事部
裁判所書記官 橋 和 哉
**********
■原審の判決で審判が下った機構=群馬高専が秘匿したアカハラ事件関連情報の「開示相当部分」のうち、今回の控訴審の結果、次の一か所だけ、原審より後退したものの、それ以外は、原審と同じ結果となりました。
<開示相当部分>
3項の最後の部分である
「・・・書面1通のうち、作成者の氏名・肩書、作成年月日及び表題の部分」
↓↓
「・・・書面1通のうち、作成年月日及び表題の部分」
このように、当会の主張が「原審で審理は尽くした」として全面棄却され、ごく一部とはいえ、東京高裁が機構=群馬高専側の主張を受け入れてしまったことについては遺憾ですが、さすがに機構=群馬高専側の「オンブズマンがブログに公表しているから不開示」などという意味不明な主張に耳を傾けなかったのは、常識の府であることを示したと言うことができます。
いずれにしても、機構=群馬高専側が控訴に踏み切ったこの5カ月間、結果的に決着が引き延ばされたことになるわけで、よもや機構=群馬高専側が、さらに東京高裁の判決を不服として上告することはないと思いますが、1日でも隠ぺい体質を維持したい群馬高専の体質を鑑みると、決して予断は許されません。
が、常識的に考えれば、これで本来、「終了のゴング」ということになるわけで、当会として、群馬高専に対して次のコメントを伝えたいと思っています。
(1) 高裁における判決が出たが、1箇所些細な点が修正された以外は原判決と同じであった。これで決着と考えてよいか?そして、これまで3年近く待たされたアカハラ事件に関する情報はいつ開示してもらえるのか?
(2) 西尾前校長が行った全面不開示決定は、今回の控訴審でも「間違いであった」ことが示された形だが、山崎現校長の見解をインタビューさせていただけるか?
(3) また、先日答申が出た「校報等」の情報についても、速やかに開示していただけるか?「校報」については、「処分やり直し」となるわけだから、最初未作成のため不存在とされていた分についても開示願えるか?
(4) なお、裁判所や上級庁から下された判決や答申による「秘匿してきた」情報の開示の際には、この件で意味不明な主張を行って無駄に引き伸ばしを行った当該責任者のかたから、謝罪と再発防止の言葉をいただけるのか?
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
↑4月25日(水)午後1時40分ごろの東京高等・地方・簡易裁判所合同庁舎。新緑がすがすがしい。↑
なお、東京地裁での判決言渡し以降の本件の経緯は次のブログ記事を参照ください。
○2017年11月24日:【速報】アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示訴訟で東京地裁が原告一部勝訴判決!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2476.html
〇2018年1月21日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…東京高裁第9民事部から2月28日の弁論期日呼出状と控訴状が届く↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2536.html
〇2018年1月29日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示控訴審で機構=群馬高専が控訴理由書を提出!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2546.html
○2018年3月4日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示控訴審が2月28日に開かれ即日結審!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2578.html#readmore
〇2018年3月14日:アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示控訴審で2.28結審後にオンブズが最終書面陳述↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2590.html#readmore
■それでは、機構が控訴人となった控訴審及び当会が附帯控訴人となった附帯控訴審の判決文を以下に示します。
*****判決原文*****PDF ⇒ 20180425_tokyokosai_acaharra_jouhoukaiji_soshou_hanketsubun.pdf
<P1>
平成30年4月25日判決言渡し 同日判決原本交付裁判所書記官
平成29年(行コ)第376号,平成30年(行コ)第18号 法人文書不開示処分取消控訴,同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成28年(行ウ)第499
号)
口頭弁論終結日 平成30年2月28日
判 決
東京都八王子市東浅川町701番2
控訴人兼附帯被控訴人(以下単に「控訴人」という。)
独立行政法人国立高等専門学校機構
同代表者理事長 谷 口 功
同訴訟代理人弁護士 本 村 美 隆
同 藍 澤 幸 弘
前橋市文京町一丁目15-10
被控訴人兼附帯控訴人(以下単に「被控訴人」という。)
市民オンブズマン群馬
同代表者代表 小 川 賢
主 文
1 控訴人の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
(1) 控訴人が平成28年4月27日付けで被控訴人に対してした法人文書不開示決定のうち,別紙「開示相当部分」記載の各部分を不開示とした部分を取り消す。
(2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。
2 被控訴人の附帯控訴を棄却する。
3 訴訟費用(控訴費用,附帯控訴費用を含む。)は第1,2審を通じてこれを3分し,その2を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
<P2>
1 当事者の求めた裁判
1 控訴の趣旨
(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
(2) 前項の部分につき被控訴人の請求を棄却する。
2 附帯控訴の趣旨
(1) 原判決を次のとおり変更する。
(2) 控訴人が平成28年4月27日付けで被控訴人に対してした法人文書不開示決定を取り消す。
第2 事案の概要(以下,理由説示部分を含め,原則として原判決の略称をそのまま用いる。)
1 本件は,被控訴人が,控訴人に対し,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(法)に基づき,その保有する法人文書の開示を請求したところ,控訴人から法5条1号の不開示情報に該当するとしてその全部につき開示をしない旨の決定(本件不開示決定)を受けたことから,同決定が違法であると主張して,その取消しを求める事案である。
原審は,本件不開示決定のうち原判決別紙記載の各部分を不開示とした部分を取り消し,被控訴人のその余の請求を棄却した。控訴人は,上記の請求一部認容部分を不服として控訴した。被控訴人は,請求の一部棄却部分を不服として附帯控訴した。
2 関係法令の定め,前提事実(当事者間に争いのない事実に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実),争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1ないし3(原判決2頁3行目から12頁3行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決10頁25行目末尾の後に改行して以下のとおり加える。
「 控訴人の後記ウの主張は,時機に後れたものとして却下されるべきであ
<P3>
る。」
(2) 原判決11頁3行目冒頭に「ア」を,同頁10行目冒頭に「イ」を,同頁11行目の「部分は,」の後に「文書の作成者の氏名・肩書を含めて」を,同頁12行目末尾の後に改行して以下のとおりそれぞれ加える。
「ウ さらに,本件において,被控訴人は,本件文書1と推測される文書を甲14として,本件文書2と推測される文書を甲11及び12として,いずれも書証として提出し,同各書証を自身のホームページで公開している。同各書証は,個人名が黒塗りされているがその余の部分については何ら修正が施されておらず,被控訴人がホームページで公開したことにより第三者にもその内容が明らかになっている。そうすると,被控訴人が何らかの経緯で実際に本件文書1及び2を入手した上で,これらを上記のとおり書証として提出したり,ホームページで公開したとの被控訴人の主張が根拠のないものということはできない。
このような状況の下で,本件文書1について,作成者の氏名・肩書及び作成年月日の部分や,教職員,学生及びその保護者に係る所属・属性を除く部分が部分開示され,本件文書2について,作成年月日,標題及び宛先の部分が部分開示されるのであれば,部分開示された本件文書1と甲14を,部分開示された本件文書2と甲11及び12をそれぞれ突き合わせることにより同一性を判断することが可能となる。そして,これが同-であった場合には,本件文書1及び2の全体が個人名のみを伏して開示されたことと実質的に同一の結果となるものであり,個人識別情報に該当する又は公正かつ円滑な人事の確保に影響を及ぼすおそれがあるとして不開示とされた部分が開示される結果と等しくなる。
したがって,本件文書1の作成者の氏名・肩書及び作成年月日の部分並びに教職員,学生及びその保護者に係る所属・属性を除く部分や,本件文書2の作成年月日,標題及び宛先の部分は,いずれも不開示情報
<P4>
そのものに該当しないとしても,これらが開示されることにより実質的に不開示部分が開示された結果となるおそれがある以上,上記各部分は,不開示情報が記録されている部分と区分して開示することが容易に可能であるということはできないから,同各部分を部分開示することは不可能である。」
(3) 原判決11頁13行目冒頭に「エ」を加える。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,本件不開示決定のうち別紙「開示相当部分」記載の各部分を不開示とした部分を取り消すのが相当であると判断する(別紙「開示相当部分」の内容は,原判決別紙記載の内容から,同記載3の「作成者の氏名・肩書」を除いたものである。)。その理由は,以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1ないし6(原判決12頁5行目から20頁26行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決15頁20行目及び21行目の各「不開示情報」をいずれも「法5条1号本文の不開示情報」と改める。
(2) 原判決18頁7行目から8行目にかけての「作成者の氏名・肩書,」を削り,同頁9行目の「そうすると,これらが」を「また,本件高専の教員数が決して多いとはいえない中で(前記前提事実出),学内のハラスメント事実の調査担当者及びその取りまとめをして報告書の作成等をする者について,その役割の性質上,一定以上の役職にあるとともに中立の確保のため調査対象者との関係にも配慮して選任される必要があるから,候補者が必ずしも多くはないものと推認される。そうすると,行為者及び相手方のいずれにおいても通常秘匿にすることを欲する上記情報や,調査担当者(その取りまとめをして報告書の作成者となる者を含む。以下同じ。)の氏名・肩書が」と,同頁11行目の「萎縮し」を「萎縮したり,調査担当者として適任である者
<P5>
がこれを引き受けることを拒むことにより調査担当者の選任確保が困難となるなどして」とそれぞれ改め,同頁15行目の「作成者の氏名・肩書,」を削る。
(3) 原判決18頁21行目の「(1)」を「(1)ア」と改め,19頁11行目末尾の後に改行して以下のとおり加える。
「イ この点について,控訴人は,前記第2の3(5)(控訴人の主張)ウのとおり,本件文書1の上記部分(原判決別紙記載1(1)及び(2)の部分)を容易に区分して除くことができないとして(法6条1項),部分開示が不可能であると主張する(被控訴人は,同主張について時機に後れたものとして却下されるべきと主張するが,同主張により訴訟の完結を遅延させることとなると認められないので,被控訴人の同主張は失当である。)。
しかしながら,控訴人は,本件文書1について不開示情報と区分して部分開示が可能と解される余地がある箇所の内容を明確にするために乙5の1ないし3を提出しているが,原判決別紙記載1出及び(2)の部分は乙5の1ないし3により示された部分と一致するものと考えられる(前記ア)。そうすると,本件文書1の上記部分(原判決別紙記載1(1)及び(2)の部分)が部分開示された場合にこれと甲14を突き合わせることは,乙5の1ないし3と甲14を突き合わせることと同じことであるから,上記部分開示によって不開示とされた部分が開示される結果となる旨の控訴人の主張はそもそもその前提を欠くものというべきである。
したがって,控訴人の上記主張はその余の点を検討するまでもなく失当である。」
(4) 原判決19頁12行目の「(2)」を「(2)ア」と,同頁15行目の「本件文書3」から同頁16行目から17行目にかけての「標題」」までを「本件文書3のうち作成年月日及び標題」と,同頁18行目及び19行目から20行目
<P6>
にかけての各「別紙記載2及び3の部分」をいずれも「別紙記載2の部分並びに本件文書3のうち作成年月日及び標題」と,同頁22行目の「別紙記載3の部分」を「作成年月日及び標題」とそれぞれ改め、同行末尾の後に改行して以下のとおり加える。
「イ 本件文書2の部分開示について,控訴人は,前記第2の3(5)(控訴人の主張)ウのとおり,本件文書2の原判決別紙記載2の部分を容易に区分して除くことができないとして(法6条1項),部分開示が不可能であると主張する(被控訴人は,同主張について時機に後れたものとして却下されるべきと主張するが,同主張により訴訟の完結を遅延させることとなると認められないので,被控訴人の同主張は失当である。)。
しかしながら,本件文書2からその作成年月日,標題及び宛先(原判決別紙記載2の部分)をその他の部分と区分して除くことが容易であることは同各項目の性質上明らかというべきであり(前記ア),このことは,原判決別紙記載2の部分が開示された本件文書2と甲11及び12とが突き合わされることにより,甲11及び12が本件文書2に該当するものであるか否かが判断される可能性があるとしても,同可能性のあることが法6条1項の「容易に区分して除くことができる」かの判断を左右するものではない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」
(5) 原判決19頁23行目冒頭に「ウ」を加え,20頁8行目の「別紙記載3の部分」を「別紙「開示相当部分」記載3の部分」と改める。
2 被控訴人の当審における主張(附帯控訴理由)は,いずれも原審における主張を繰り返すか,独自の見解を述べるものにすぎず,それらの主張が採用できないものであることは,前記1において認定・説示したとおりである。
3 結語
以上によれば,被控訴人の請求は,本件不開示決定のうち別紙「開示相当部
<P7>
分」記載の各部分を不開示とした部分を取り消す限度で理由があるところ,これと異なり,原判決別紙記載の各部分を不開示とした部分を取り消す限度で請求を認めた原判決は一部失当であり,控訴は理由があり,附帯控訴は理由がない。そこで,原判決を上記のとおり変更し,附帯控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第9民事部
裁判長裁判官 齊木敏文
裁判官 石井 浩
裁判官 小田正二
<P8>
(別紙)
開示相当部分
1(1) 群馬工業高等専門学校長が同校の学生の保護者宛てに配布した平成27年4月1日付けの書面2通及び同年6月2日付けの書面1通のうち,作成者の氏名・肩書及び作成年月日の部分
(2) 前記(1)の各書面のうち,群馬工業高等専門学校の教職員,学生及びその保護者に係る所属・属性(学科・学年を含む。)を記述した部分を除く部分(前記(1)の部分を除く。)
2(1) 群馬工業高等専門学校の内部者が同校校長ら宛てに提出した平成26年12月24日付けの「ハラスメントに関する申立書」1通のうち,作成年月日,標題及び宛先の部分
(2) 同校の内部者複数名が連名で同校校長ら宛てに提出した平成27年2月25日付けの「人権・被害救済の申し立て」1通のうち,作成年月日,標題及び宛先の部分
3 前記2によるハラスメントの申告を受けて,群馬工業高等専門学校が事実関係を調査の上作成した調査の経緯及びその結果に関する書面1通のうち,作成年月日及び標題の部分
<P9>
これは正本である。
平成30年4月25日
東京高等裁判所第9民事部
裁判所書記官 橋 和 哉
**********
■原審の判決で審判が下った機構=群馬高専が秘匿したアカハラ事件関連情報の「開示相当部分」のうち、今回の控訴審の結果、次の一か所だけ、原審より後退したものの、それ以外は、原審と同じ結果となりました。
<開示相当部分>
3項の最後の部分である
「・・・書面1通のうち、作成者の氏名・肩書、作成年月日及び表題の部分」
↓↓
「・・・書面1通のうち、作成年月日及び表題の部分」
このように、当会の主張が「原審で審理は尽くした」として全面棄却され、ごく一部とはいえ、東京高裁が機構=群馬高専側の主張を受け入れてしまったことについては遺憾ですが、さすがに機構=群馬高専側の「オンブズマンがブログに公表しているから不開示」などという意味不明な主張に耳を傾けなかったのは、常識の府であることを示したと言うことができます。
いずれにしても、機構=群馬高専側が控訴に踏み切ったこの5カ月間、結果的に決着が引き延ばされたことになるわけで、よもや機構=群馬高専側が、さらに東京高裁の判決を不服として上告することはないと思いますが、1日でも隠ぺい体質を維持したい群馬高専の体質を鑑みると、決して予断は許されません。
が、常識的に考えれば、これで本来、「終了のゴング」ということになるわけで、当会として、群馬高専に対して次のコメントを伝えたいと思っています。
(1) 高裁における判決が出たが、1箇所些細な点が修正された以外は原判決と同じであった。これで決着と考えてよいか?そして、これまで3年近く待たされたアカハラ事件に関する情報はいつ開示してもらえるのか?
(2) 西尾前校長が行った全面不開示決定は、今回の控訴審でも「間違いであった」ことが示された形だが、山崎現校長の見解をインタビューさせていただけるか?
(3) また、先日答申が出た「校報等」の情報についても、速やかに開示していただけるか?「校報」については、「処分やり直し」となるわけだから、最初未作成のため不存在とされていた分についても開示願えるか?
(4) なお、裁判所や上級庁から下された判決や答申による「秘匿してきた」情報の開示の際には、この件で意味不明な主張を行って無駄に引き伸ばしを行った当該責任者のかたから、謝罪と再発防止の言葉をいただけるのか?
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】