命消える時
ぞうになりたい
ぞうは生ききって死す
群れから離れ
それまで一度も行ったことのないぞうの墓場へ
自力で歩いて行く
先輩たちの骨の上に
体を横たえ
ひとつ大息をして感謝する
命消える時まで
生きていたことに
そしてここまでたどりつけたことに
命絶える時
ぞうになりたい
今を感じて歩いていきたい
生を感謝できる場所まで
先輩たちはみんな焼かれて
石の墓に埋められ
身動きができなくなっているから
そこではなく
山の中の
藪の中の
草の根の
絨毯で
リスが遊び
小鳥がついばみ
雨のかかった
苔もあって
シダもあって
せせらぎは聞こえても
川ではなく
木漏れ日はかすか
僅かな時間
そよ風が吹いて
小花なくても
種はあって
小鳥やりすが運ぶ傍らの
小さな空き地に
この生ききったやせ細った体だけ
地のぬくもりが感じられる
そんな小さな場所
すぐ
苔が蔽い
かけ蒲団ができたら
わたしはわたしらしい笑顔のまま
旅立てる
生ききって
象になって
歩いていきたい
夕べは
もう死にたいという青年が電話をかけてきた
生ききって象を目指す私は
しばし
言葉に詰まる
彼は700km離れたところで
日々闘っている
生きる苦しさは
彼にとって
30歳の彼にとって
もう
象?
そうは云わせない
ぞうになりたい
ぞうは生ききって死す
群れから離れ
それまで一度も行ったことのないぞうの墓場へ
自力で歩いて行く
先輩たちの骨の上に
体を横たえ
ひとつ大息をして感謝する
命消える時まで
生きていたことに
そしてここまでたどりつけたことに
命絶える時
ぞうになりたい
今を感じて歩いていきたい
生を感謝できる場所まで
先輩たちはみんな焼かれて
石の墓に埋められ
身動きができなくなっているから
そこではなく
山の中の
藪の中の
草の根の
絨毯で
リスが遊び
小鳥がついばみ
雨のかかった
苔もあって
シダもあって
せせらぎは聞こえても
川ではなく
木漏れ日はかすか
僅かな時間
そよ風が吹いて
小花なくても
種はあって
小鳥やりすが運ぶ傍らの
小さな空き地に
この生ききったやせ細った体だけ
地のぬくもりが感じられる
そんな小さな場所
すぐ
苔が蔽い
かけ蒲団ができたら
わたしはわたしらしい笑顔のまま
旅立てる
生ききって
象になって
歩いていきたい
夕べは
もう死にたいという青年が電話をかけてきた
生ききって象を目指す私は
しばし
言葉に詰まる
彼は700km離れたところで
日々闘っている
生きる苦しさは
彼にとって
30歳の彼にとって
もう
象?
そうは云わせない