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医療少年院は今:/上 「非行」「障害」、二重のレッテル 社会復帰は狭き道 受け入れ先探し難航

2015年02月20日 00時48分26秒 | 

医療少年院は今:/上 「非行」「障害」、二重のレッテル 社会復帰は狭き道 受け入れ先探し難航

行政・政治 2015年2月18日(水)配信毎日新聞社


 面会室の片隅に、色鮮やかな千羽鶴が飾られていた。知的障害や発達障害の非行少年約90人が収容される大分県中津市の中津少年学院。かつて在院していた少年の母が一羽ずつ思いを込めて作った。

 少年が窃盗未遂の非行内容で少年院に入ったのは4年前。16歳の時だった。1年後、出院して自宅に戻った時に千羽鶴を見つけた。「帰ってくるのを祈って、毎日折ってたんだよ」。母の言葉に心を打たれた少年は、千羽鶴を院に寄贈した。みんなにも待っている人がいると伝えたかった。「母と一緒に頑張っています」。添えられた手紙には、そう書かれていた。だが、実際には医療少年院を出た少年が親元に帰れないケースも少なくない。

 窃盗、薬物、性犯罪。少年たちが起こす事件はさまざまだ。人の命を奪ってしまった少年もいる。非行内容が深刻になればなるほど、親や兄弟姉妹も心に深い傷を負う。子供を引き取れないと言ってくる親もいるという。

 少年院の収容期間は長くても通常は1年程度。ただ、刑の満期になれば刑務所を出所しなければならない成人と違い、少年は帰る先がなければ出院時期を迎えても収容が延びてしまう。障害を抱えた医療少年院の入所者は、受け入れ場所がなかなか見つからない。「社会でさまざまな経験を積むべき時期を施設で過ごすことは、本人の将来にプラスにはならない」。関東医療少年院(東京都府中市)で、出院する少年の生活場所を決める「帰住調整」に携わる精神保健福祉士、粟屋友恵さん(53)は、そう指摘する。

 2年前に西日本の医療少年院に入った少年は、母の交際相手の男と一緒に傷害事件を起こした。母は刑務所に入った男を引き受けることを望み、少年の引き取りを拒絶した。そもそも男と一緒だと少年の更生に支障が出るおそれがある。後になって少年を受け入れると伝えてきたが、母には精神的に不安定な面もあり、少年を任せられる状態ではなかった。

 親が精神障害や深刻な薬物、アルコールの依存症を患っている場合、院側は親元に帰すべきではないと判断する。経済的に困窮し、適切な養育が期待できないケースも多い。西日本の少年も、出院時期が過ぎたのに帰る先が見つからない。

 「規則正しい生活と内服治療でこの1年間再発がない」「体調に配慮してくれる職場が望ましい」。昨年10月、京都医療少年院(京都府宇治市)の会議室で、法務教官や看護師、ハローワークの担当者が、在院少年の社会復帰に向けて会議を開いた。粟屋さんと同じ精神保健福祉士の姿もある。

 法務省は2009年以降、各地の医療少年院に、福祉の専門家である精神保健福祉士や社会福祉士を非常勤職員として配置し始めた。帰る家がない少年を受け入れてくれる病院や福祉施設との交渉を引き受けている。

 それでも、受け入れ先を探すのは容易ではない。ある少年院では出院後の通院先が見つかるまで5年以上かかった。「非行」と「障害」という負のレッテルを二重に貼られているためだ。京都医療少年院の精神保健福祉士、今井真美さん(51)は「それを剥がすのが私の仕事です」と強調した。

     ◇

 疾患や障害がある非行少年が暮らす医療少年院。立ち直りの支援に向けて国も動き始めた。さまざまな問題を抱える現場を訪ねた。(和田武士、伊藤一郎が担当します)

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