私は「障害者」じゃない? 1型糖尿病、制度に谷間 「働くバリアー 障害とともに」
2019年6月13日 (木)配信共同通信社
履歴書の「健康状態」の欄に、仕方なく「良好」とうそを書いた。1型糖尿病を患う東京都の西田えみ子(にしだ・えみこ)さん(48)は約30年前、仕事が見つからず追い込まれていた。あれから法整備が進み、雇用を巡る環境は変わったものの、障害者手帳を持っていない西田さんはルール上、「障害者」とみなされない。「制度の谷間」によって、働く機会を得にくいままだ。
1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)のβ細胞が自己免疫に壊され、血糖値が下がらなくなる病気。遺伝や生活習慣が影響する2型糖尿病とは違うもので、毎日注射などでインスリンを補う必要がある。西田さんは体がだるくて疲れやすく、手足のしびれなど合併症の症状に苦しむが、法律では膵臓の疾患は「身体障害」に含まれない。
発症したのは、新潟県新発田市に住んでいた5歳ごろ。高校を中退し、17歳で東京へ出た。「安定した職に就いて治療費を稼ごう」と、正社員を目指して数十社に履歴書を送ったが、全て書類選考で落とされた。
「健康でないと受け入れてもらえない」と考え、持病を隠して印刷会社に入社。だがトイレでこっそり注射を打ったり、周りに合わせて糖質が多い食事を取ったりしていたら半年で倒れてしまった。退職後はアルバイトを転々としてきた。
転機は2002年ごろ、患者団体を通じて障害者団体「DPI日本会議」を知ったことだ。障害福祉サービスを使い地域で暮らす障害者を見て「自分も介助があればできることが増える」と感じた。「今度は周囲に持病のことを理解してもらった上で、配慮を受けながら働きたい」
しかし、障害者雇用促進法が思わぬ障壁となった。同法での「障害者」の定義は、身体や知的、精神障害または「その他の心身の機能の障害」があり、働く上で制限がある人となっている。一方、雇用率の算定は障害者手帳を持っている人が対象で、西田さんは含まれない。
現在は体調に波があり、急きょ休むこともあるものの、1日7時間で週2日、DPI日本会議の相談員として働く。いずれは民間企業で短時間勤務をしたいが、雇用率の達成を目指して採用活動する企業は多く、「自分は就職に不利」と嘆く。
京都文教大の二本柳覚(にほんやなぎ・あきら)講師(社会福祉学)は「目標設定は重要だが、事業主は雇用率さえクリアすればよいわけではない。表面的な情報だけではなく、能力や適性を見て障害者を雇うべきだ」と指摘している。
2019年6月13日 (木)配信共同通信社
履歴書の「健康状態」の欄に、仕方なく「良好」とうそを書いた。1型糖尿病を患う東京都の西田えみ子(にしだ・えみこ)さん(48)は約30年前、仕事が見つからず追い込まれていた。あれから法整備が進み、雇用を巡る環境は変わったものの、障害者手帳を持っていない西田さんはルール上、「障害者」とみなされない。「制度の谷間」によって、働く機会を得にくいままだ。
1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)のβ細胞が自己免疫に壊され、血糖値が下がらなくなる病気。遺伝や生活習慣が影響する2型糖尿病とは違うもので、毎日注射などでインスリンを補う必要がある。西田さんは体がだるくて疲れやすく、手足のしびれなど合併症の症状に苦しむが、法律では膵臓の疾患は「身体障害」に含まれない。
発症したのは、新潟県新発田市に住んでいた5歳ごろ。高校を中退し、17歳で東京へ出た。「安定した職に就いて治療費を稼ごう」と、正社員を目指して数十社に履歴書を送ったが、全て書類選考で落とされた。
「健康でないと受け入れてもらえない」と考え、持病を隠して印刷会社に入社。だがトイレでこっそり注射を打ったり、周りに合わせて糖質が多い食事を取ったりしていたら半年で倒れてしまった。退職後はアルバイトを転々としてきた。
転機は2002年ごろ、患者団体を通じて障害者団体「DPI日本会議」を知ったことだ。障害福祉サービスを使い地域で暮らす障害者を見て「自分も介助があればできることが増える」と感じた。「今度は周囲に持病のことを理解してもらった上で、配慮を受けながら働きたい」
しかし、障害者雇用促進法が思わぬ障壁となった。同法での「障害者」の定義は、身体や知的、精神障害または「その他の心身の機能の障害」があり、働く上で制限がある人となっている。一方、雇用率の算定は障害者手帳を持っている人が対象で、西田さんは含まれない。
現在は体調に波があり、急きょ休むこともあるものの、1日7時間で週2日、DPI日本会議の相談員として働く。いずれは民間企業で短時間勤務をしたいが、雇用率の達成を目指して採用活動する企業は多く、「自分は就職に不利」と嘆く。
京都文教大の二本柳覚(にほんやなぎ・あきら)講師(社会福祉学)は「目標設定は重要だが、事業主は雇用率さえクリアすればよいわけではない。表面的な情報だけではなく、能力や適性を見て障害者を雇うべきだ」と指摘している。
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